作家の読書道 第291回:砂村かいりさん
小説投稿サイト「カクヨム」の第5回カクヨムコンの恋愛部門で、『炭酸水と犬』『アパートたまゆら』が特別賞をダブル受賞。二作とも書籍化されてデビューをはたした砂村かいりさん。恋愛小説に限らず、現代社会を生きる人々の葛藤や再生を丁寧に描く著者は、どんな本を読み、影響を受けてきたのか。愛読書について、たくさんの書名を挙げてくださいました。ご堪能あれ。
その9「新作『飛距離の長い青春』」 (9/9)

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- 『へびつかい座の見えない夜』
- 砂村 かいり
- 東京創元社
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――短編集『コーヒーの囚人』と『へびつかい座の見えない夜』を経て今年刊行されたのが、長編『飛距離の長い青春』です。これは医学部受験を目指し、高校卒業後に予備校に通う3人の少年少女の物語です。きっかけはどこにあったのですか。
砂村:以前、仕事で現役医学生や医学部を目指す受験生と関わったことがありまして。親が開業医だから継がなくてはならない人や、10浪以上している人もいて、自分のまったく知らなかった世界に衝撃を受けました。宅浪の人は少なくて、たいていの人が予備校に通っている。高校生でも大学生でも社会人でもないという、揺らぎのありそうな立場の人たちにも青春があるだろうと思いました。幻冬舎の担当者さんとの最初の打ち合わせ時にその話をしたら、担当者さんの弟さんが現役のお医者さんだったんです。それで、弟さんからインタビューをスタートさせて、現役の大学生や医師、予備校にも取材をしていきました。なので、かなりリアルな話が書けたと思います。
――主人公となる3人は、家庭環境も医学部を目指す理由もさまざまです。それぞれの葛藤が描かれるなか、3人が育んでいく友情がもう、尊くて。また、合格したらめでたし、というわけではない展開にもぐっときました。
砂村:人生って本当になにがあるかわからないですよね。みんなと同じ成功をおさめなくてもいいし、思わぬ方向に進んだ人も、泥臭く手探りしていった先に安寧があるかもしれない。世間の評価軸と本人の充足感はまた違うんだということも、書きたかったことのひとつです。
――受験が終わったら、3人は離れ離れになる。でも関係が終わるわけでないんですよね。
砂村:ずっと一緒にいるのが友達というわけではないし、つかず離れずの関係だからこそ長続きする場合もある。彼らは予備校という特殊な場所で同じ目標を持って励んだ時間を共有したわけで、タイトルには3人で過ごした青春の飛行時間が続いていく、といった意味合いをこめました。
――今、一日のタイムテーブルはどのような感じですか。
砂村:「外出予定がなく、執筆やゲラ作業に集中できる日」のパターンでお答えしますね。朝、家族を送りだして家事をひととおり終わらせたあと、遅くとも10時には机に向かいます。昼休憩を挟んで、16時前後には夕食の準備を始めます。夜の家事がすべて終わったら、寝床で読書する至福の時間......だったのですが、最近はとても時間が足りず、また机の前に戻って日付が変わる頃まで仕事するようになりました。
もともとロングスリーパーだし、昼夜や公私のメリハリをしっかりつけるのをポリシーにしていたのですが、最近はそうも言っていられなくなりました。忙しいのはありがたいことです。もっと忙しくなるくらいでないと、家計も安定しないですし(泣)。
――今後のご予定などを教えてください。
砂村:いろいろありまして、年内にはもう刊行物はなさそうです。年明けにご期待ください! 世界情勢が(というか日本政府の動きが)不穏すぎて、いつまで本を出版できるのかという不安に押し潰されそうな日々ですが、どうにか希望を捨てずにやっていきます。反戦を叫びつつ。
(了)


