『にっぽん祭り日』森井禎紹

●今回の書評担当者●ブックス・ルーエ 花本武

  • にっぽん 祭り日‐受け継がれる故郷の祭り―森井禎紹写真集
  • 『にっぽん 祭り日‐受け継がれる故郷の祭り―森井禎紹写真集』
    森井 禎紹
    日本写真企画
    3,240円(税込)
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 今回紹介したいのは、森井禎紹さんの写真集「にっぽん祭り日」です。日本全国津々浦々の伝統的な祭りの場面場面が、鮮烈に切り取られていて、非常に見応えがあります。ページをめくりすすめて、1月から12月まで様々な祭りを巡って楽しめるような体裁になってます。
 ちょっと趣向を変えて祭り大好き人間の○才ブックス○村さんと私のこの本を肴にしたおしゃべりにお付き合いください。手元に本があるとより楽しめるよう、意識的にページ数を発言してます。

「この中に○村さんの参加したことある祭りがあるといいなあ」
「行ってない祭りを妄想するっていうのもいいとおもいますよ、ネタとして」
「どれも良い表情を捉えてますね」
「楽しそうですよね。祭りって近所とか周辺の人達との結束を強めるんじゃないかな」
「それはあります」
「P8、これは幼いなりに男女の親愛な何かが芽生えてるようにみえます」
「文化祭でくっついたカップルは長続きしませんが、こういう伝統行事の場合、もしかしたら別なのかもしれませんね」
「文化祭では、青春様という気まぐれな神が降りるんでしょうね」
「しかしこの本ものすごい時間かけたとおもいますよ」
「P10、この半裸の男たちが縄を登っていく様は、興奮しますね」
「でもこういう祭りって結局運動のできる男が勝っちゃいませんか?」
「強い男が強い子孫を残せるってことでしょうね」
「365日どっかしらで祭りをやってますよ、日本は。今この瞬間も」
「そう考えるとウキウキしますね」
「どんなに憂鬱なときでもどこかで祭りは行われてる」
「それって心強いね」
「P20、このはしっこ男根でしょうかねえ?」
「でしょうねえ」
「あんまり露骨に全面に出さないのがこの写真集のバランス感覚なんでしょう。たくさんの奇祭を収録しているわけで、男根な場面って無数にあったとおもうんですよ。それをこじんまりと収めてるのは、この写真集の間口を広めているし、間違ってない選択だとおもいます」
「ポロリもあったでしょう」
「そりゃねえ」
「P24、火を祝祭的に扱うのって日本独自なのかな?」
「火の演出効果は古今東西どこでも高いんじゃないですかね」
「P50、これいいですね。みなさん生足で。この方ガッキーに似てない?」
「そうすね」
「P82、ねぶただ、行きたいけど、お盆前で広告なんかが前倒しになる時期で会社が忙しいんですよね」
「そうなんですか」
「やー夏の祭りはいいですね、この若者たちの楽しそうなこと」
「毎日が縁日だったらいいのにな」
「ほんとそうですね」
「P118、おお、唐津くんち!これはぼく地元ですよ。近松門左衛門が愛した町、唐津」「へ~あの門左衛門がねえ」
「伝説になった唐津くんちがあって、天皇陛下が亡くなられたときって日本中の祭りが自粛だったんですけど、唐津くんちだけはやりました」
「テレビ東京みたいなもんですね」
 
 ○村さんは岡本太郎のように、自分の中にそれぞれの祭りを持て、とも言いました。何が楽しいかは自分で決めるものだと。この写真集を撮りあげた森井さんには、十二分に共感できる言葉なんじゃないかな、とおもいました。


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ブックス・ルーエ 花本武
ブックス・ルーエ 花本武
東京の片隅、武蔵野市は吉祥寺にてどっこい営業中のブックス・ルーエ勤務。通勤手段は自転車。担当は文庫・新書と芸術書です。1977年生まれ。ふたご座。血液型はOです。ルーエはドイツ語で「憩い」という意味でして、かつては本屋ではなく、喫茶店を営んでました。その前は蕎麦屋でした。自分もかつては書店員ではなく、印刷工場で働いていて、その前はチラシを配ったり、何もしなかったりでした。天啓と いうのは存外さりげないもので、自宅の本棚を整理していて、これが仕事だったらいいなあ、という漠然とした想いからこの仕事に就きました。もうツブシがきかないですし、なにしろ売りたい本、応援したい作家に事欠かないわけでして、この業界とは一蓮托生です。