第7回 特別編 座談会 焼酎割り飲料は東京のローカル文化だ!〈後編〉

9.分野調整法のはなし

Q)今お話が出た分野調整法に基づいて、大手の参入を監視しているのも全国清涼飲料工業会ですか?

久)監視ではなくて、先ほど神作社長がおっしゃられたように、ラムネやシャンメリー、ミキサードリンクなどについては、中小企業の分野のお仕事なので、大手の方に、ぜひ協調していただきたいとお願いしています。

神)分野調整法というのはお願いのレベル、ご理解をいただいているものです。

阿)今は規制緩和の時代ですから、規制する部分は、大上段にふりかざしたくない。こちらは立場が弱いですから。

Q)清涼飲料で調整法の対象となるのはラムネ、シャンメリー、ミキサードリンク、ポリエチレン容器入りのジュース(90~110mlのペンシルタイプの容器に入ったもので、昭和29年ごろに発売、1970年前後には15円程度で人気商品だった)、びん詰めのミルクコーヒー、クリームソーダの6種類ですが、今まで、問題になったものは何ですか?

阿)今、現実に東京で製造しているのは、サワーとラムネとシャンメリーだけです。

神)現実問題として、それしか残っていないから、大手さんも勘弁してくれています。それでも時折、ラベルに「ラムネ」と書きたい、というケースが出てくるのです。

久)大手清涼飲料メーカーの夏物は、だいたい前年の秋口ぐらいに、来年こんな新製品を出したいという議論をはじめます。そして、ちょっと引っかかるような部分、たとえば、ペットボトルや缶でラムネと名前をつけたいけどいい? というお問い合わせがあるので、丁寧にご説明するわけです。

神)大手の人も、一般の方々もあまり理解しておられないのは、ラムネという名称が、炭酸飲料の中身、内容物の味を指すという感覚を持っていらっしゃる。そうじゃないんです。あくまでビー玉で栓をしたビンをラムネというのですが、大手の若い社員の人たちはわかりませんから、商品にラムネと名前をつけてしまい、ラムネという味はないということを組合が説明して、今までのところ、なんとか止まっているのです。
(脚注:大手食品問屋の「国分」が昭和52年3月に缶入りラムネ「K&Kラムネ」を発売、この年だけで100万ケースを売り上げると、全国800余りのラムネ業者が製造販売中止を求めたのを受け、特許庁はラムネを「ガラス玉で密栓することを特徴とする清涼飲料の一種」と定義し、中小業者が勝利した)

久)そうですね。おかげさまで、ご理解いただいています。

神)最近でも生協さんで出している品物に、「ラムネ味」と書いてありました。「ラムネ味」は存在しないので、私は不適切な表示じゃないかと思いますが、その都度、これはちがうのでやめてくれ、と言わないといけません。

久)強制力がないのは、調整法自体の問題です。グレーゾーン的な部分は、夏場に向けて、少し出てきますが、結局は、大手の方から見ると、多少やってみたとしても、そんなに売れるものでもないし、となるのです。

Q)市場規模がちがいすぎますか。

阿)まあラムネなんかは、駄菓子屋さんのものでしたから。

神)もともとが、駄菓子屋さんや縁日の商品です。

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