2月27日(水)
どうして単行本編集の金子はあんなに物知りなんだろうか。僕が時代・歴史小説にハマルれば、その内容をほとんどすでに知っているし、そのなかの歴史的な事件について背景を含め説明してくれる。今度はファンタジーを読んでいると、またその本もすでに読んでいて、そこから派生するその他面白本を紹介してくれる。SFにもミステリーにも、そして文学にも非常に精通しているのだ。本人にそのことを話すと「スギエッチが無知なだけ…」とあっさり否定されてしまう。
いやいや、本の話ばかりでなく、金子は社会・経済問題もしっかり論じられる人間なのだ。数ヶ月前、スケジュールを記載している会社のホワイトボードの前に僕と浜本が座り、金子からアフガニスタンとタリバンについて詳細な講義を受けたことがあった。それはそれは非常にわかりやすい社内授業であった。
もっと驚かされるのは音楽・芸能・映画などの文化方面のことで、30歳過ぎの男なんて普通邦楽のトップチャートに並ぶバンドの名前すら読めなくなるのが当然だと考えていた。ところが僕より3つも年上の金子が助っ人の学生達とすんなり会話している。それも僕のように「えっ、それ何?」なんて質問は一切介さず、それどころか学生よりも詳しかったりするから恐ろしい。
今日も女子学生二人を前にして金子は「元ちとせ」について会話をしていた。「こぶし」や「民謡」なんて言葉が漏れ聞こえてくるので、僕は、てっきり「松鶴家千とせ」が改名をしてリバイバルで売れているのかと思って聞いていた。金子がちょうど持参していたCDを社内のラジカセにセットし、その歌が静かに流れ出したとき、余計な赤っ恥をかかずに済んだことに一安心。金子と女子学生はその後、映画やテレビやお笑い芸人の話で盛り上がっていた。いったいどうしてそんなに物知りなんだろうか。
金子のような人間が営業に出たらとても書店さんで人気が出るんじゃないかと思う。どんな会話でもついていけるし、またアドバイスも出来るはず。もちろん編集能力も抜群なのだが、これは是非営業へと発行人浜本に推薦したいところ。しかし、そうなると僕は単行本の編集なんて出来ないし、経理や事務も出来ず、働く場所がなくなってしまうのだ。保身のためこの提言はしていない。