8月2日(金)
夜、飲み会がある池袋へ。ちょっと時間があったので、久しぶりにお客としてリブロ池袋店の新刊台を眺める。営業中とはまったく違った視線で本屋さんを見つめられるのは、やはり幸せ以外の何物でもないことに気づく。
そういえば、昔、バイト代が出ると、わざわざこのリブロにやって来て、本を山のように買っていたのだ。あの頃がもしかしたら本好きとしては一番幸せだったかもなんてことを考えずにいられない。好きなことを仕事にする切なさや難しさというものがあって、結局裏側が覗けてしまうと、夢や希望というか、勝手な思いこみは遠く何処かへ消えてしまうもの。だからこそ僕は最後の砦としてサッカーだけは仕事にしたくないと考えている。
文庫の新刊がドカドカ積まれていたので、来週読む本としてパラパラと手に取る。顧問目黒が本の雑誌で書いていた『開拓者たち』上・下 クーパー著(岩波文庫)、先日本人にお会いした石田衣良氏の『池袋ウェストゲートパーク』(文春文庫)、定期購読者の方から教えていただいた『日韓サッカー文化論』ノ・ジュンユ著(講談社現代新書)、『大育児』清水ちなみ著(扶桑社)。
それらを抱えてレジに並ぶ。金曜の夕刻ということもあってレジは列を作っていた。僕の隣に並んでいる人の持っている本をふっと眺めると、なんとそれは『お母さんは「赤毛のアン」が大好き』吉野朔実著であった!
数日前の当日記で、自社本を買われる瞬間に遭遇したことがないと嘆いたばかりだったのに、いきなりこんなところで…。思わず、推定20代の女性に感謝感激し、抱きつきそうになってしまったが、そんなことをしたら本を投げ出して逃げられるだろう考え直し、じっと堪える。
レジの列はなかなか進まない。もし、この女性の携帯電話が鳴り、急な用事が出来てしまったらどうするんだ。あるいは突然気が変わり、手に持っている『お母さんは~』を棚に戻してしまうかもしれない。多大な不安が胸を圧迫する。頼む、頼む、早くレジよ、進んでくれ。
僕にとっては、数十分にも感じる気の遠くなる時間であったが、実際には数分後、何の問題もなく、その女性は『お母さんは~』を購入していった。思わず「ありがとうございます」と小さな声で呟いてしまった。その女性はまったく気づかなかったが、レジの係の人は不思議そうに僕を見つめていた。
リブロ池袋店で午後7時19分、『お母さんは~』お買い上げ下さった方。
ほんとにどうもありがとうございました。