8月29日(木)
毎朝、会社に辿り着く寸前のファミリーマートで買い物をする。購入するのは、缶コーヒーだったり、パックの麦茶であたっり、飲むヨーグルトであったりと、その日の気分次第で、最重要なのはひとときの清涼感を楽しむことだ。冷え切った店内をぐるりと一周すれば、1時間30分かかる通勤で流れた汗がさっとひく。
今日は、缶コーヒーを買おうと思いながら自動ドアの前に立った。顔見知りの店員さんが「あっ、お早うございます」と声をかけてくれる。コンビニでマニュアル的会話でない言葉をかけられると、ちょっと焦る。こちらもそれに「お早うございます」と返答するのだが、それもまた恥ずかしい。
冷蔵ケースへ向かう途中、おまけ付きお菓子売場の前を通った。そういえば、サッカー系ネットで選手のフィギア付きラムネが話題になっていたっけと、つい立ち止まってしまった。本屋さんで本を探すように、コンビニの棚を左から右、そして上から下へ眼を向けていく。
おお!『J LEAGUE PLAYER COLLECTION 蒼き鼓動編』(バンダイ)これではないか。パッケージの説明を読むと柳澤や中山や中村俊輔など全14選手があるらしく、そしてなんとその中に我らが浦和レッズの大将・福田正博が含まれているのだ。これはレッズバカとして、絶対に欲しいアイテム。
しかしそのとき『チョコエッグ』の苦しみを思い出した。自宅で飼っていた駄猫小鉄に似ている日本猫が欲しくて34個を費やし、その後、今度は朱鷺が欲しくなり18個を費やし、そこで、友人から「いい加減にしろ」と怒られ、あえなく断念したのだった。
あの開封するときの期待感と食いたくもないチョコをかみ砕きカプセルを取り出すときの不安感。そしてパカリと開け覗き込んだときの絶望感。いい年こいた大人が、あんなことをまた繰り返してはいけないと、心の中の白い杉江は叫び声を挙げていた。
しかし、福田だ。レッズ誕生以来、多くの哀しみと少しばかりの喜びを共にしているMR.REDS。そのフィギアといったらもう宝物間違いなし。どうしても欲しい…。
棚には6個の『J LEAGUE PLAYER COLLECTION』が並んでいた。これを一気に買う方が可能性が高いことは知っている。どうするか…大人なら「大人買い」か。しばし、悩みつつ、自宅の本棚に置いてある06年ドイツW杯遠征用貯金箱のことを思い出す。禁煙(節煙)も昼飯の節約もすべてそのために行っているのだ。
こうなったら幸運を祈るしかないと、僕は手前にある1個を手に取り、缶コーヒーとともにレジに指し出した。『チョコエッグ』を散々購入していた僕を知っている店員さんが、「今度はこれですか?」と笑うので、「ええ、福田が出るように祈ってください」と答え、会社に向かった。
静かに席に付き、黙って開封する。頼む!福田が出てくれ。最悪でも中山か、鈴木隆行にしてくれ。柳澤と俊輔だけは勘弁してくれ…。祈りつつ、中味の袋を取り出す。
一瞬、赤が見えた。赤はレッズかアントラーズで、その赤もアントラーズのくすんだ小豆色の赤ではないのがわかった。レッズの代名詞、映える赤!!!
まさに福田の1発ツモ!! 思わず叫び、社内を小躍りしながら1周してしまった。哀しみは一人で背負い込み、喜びは分かち合うもの。うれしい、うれしい、こんなうれしいことはない。
席に戻り、ニヤついている僕に、空き箱を眺めていた浜田が一言。
「杉江さん、これ対象年齢8歳以上って書いてありますよ…。」