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9月8日(日) 炎のサッカー日誌 2002.08

 2ndステージホーム開幕戦。敵は北の大地にしっかり根付きつつある、幸せの黄色い軍団ベガルタ仙台。東北道一直線でやって来ることができる彼らは、本日もバスを十数台連ねて、埼玉スタジアムへ参上した。これくらい相手チームのサポーターがやってくると、こちらも燃える。ニュースではアルビレックス新潟の動員も増えているという。Jの熱狂は東高西低なんだろうかとチラリと考える。
 
 いつもどおり開門数時間前から自由席の列並びに参加する。埼玉スタジアムのキャパなら別に並ばなくてもそれなりの場所が確保できるというのに、なぜか並んでいる自分がいる。大いなる謎。

 この列並び、非常に無駄なくキチキチにシートを敷かされるので、前後左右の会話の声が聞こえてしまう。その多くが本日の試合の予想だったり、選手の評判だったりするのだが、本日僕の後ろに並んだ、40代後半から50代前半と思われるおじさんが、ひっきりなしに鳴る携帯の話は、それとはまったく違うものだった。聞こえてくる単語は「労働債権」やら「口座差し押さえ」やら「売り掛け金」やら「再就職」やら。どうもつい最近、勤めていた会社が倒産してしまったようなのだ。

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「どう? 新しい職場は? うん、そうそう。始めは慣れないから疲れるでしょう。うんうん。居心地は良いんだ。なら大丈夫だね。オレ? こっちはまだゴミ捨てっていうか残務整理があるから、会社に出ているよ。うん、まだ何にも。来週はとりあえず、職安に行くよ。うん。○○さんも頑張って。うん、じゃあね」

 部下か、誰かを励ましつつ、電話を切った。するとまたすぐ携帯電話が鳴った。

「はい。うん、来週のことね。……。いや、そこじゃ多分いくらの解雇手当が出るか決まらないと思うよ。売掛金を精算して、それで残ったお金がハッキリしてそれからだから。まあ、こっちが優先で、その後取引先の支払いって感じだけど、どっちにしても大した額じゃ…。うん。まあ、会議には出席するかなあ。まだわからないけど。じゃあ、会えれば来週」

 列がジワジワと動き出し、開門は間近。それでもおじさんの携帯はまた鳴り、律儀にそれを取る。

「あっ、どうもどうも。元○○会社の△△です。ハハハ。お世話になりました。……。ええ、まだ残務整理があるんで、次は……。今日ですか? 埼玉スタジアムに並んでいて、いつもの奴です。こればっかりはこんなときでも……。ハハハ、今日、勝って、ここんところのうさを晴らしますよ。気分転換です。ハイ、ありがとうございます。また。」

   ★   ★   ★

 余程このおじさんは人望があったのだろう。親身な電話応対からそのことが痛いほど伝わってくる。多分、本人は再就職が決まっていないのだろうが、部下の再就職先を電話で探しているようであった。

 列は進み、開門と同時に並んでいた人々は、三々五々それぞれ想いの場所へ席取りに向かう。僕もおじさんの後ろ姿を見つめながらも、逆の方向へ走っていった。

 多分もう顔を会わせることはないだろう。しかしあのおじさんも僕も、駒場スタジアムやここ埼玉スタジアムに通い、同じ言葉を張り上げる。
「う、ら~わ、レッズ!」

 この声援には、観客それぞれの想いが詰まっているのだ。勝つことだけでなく、それ以外の多くのことが…。
 そして選手は、それを背負えてこそ、初めてプロのスポーツ選手になるのだ。

「う、ら~わ、レッズ!」