WEB本の雑誌

10月1日(火)

 本好きの皆さんもそうかもしれないが、特にこちら出版業界にいる人間は、テレビや雑誌で書店さんが映っていると、ついその微妙なワンシーンがどこのお店なのか考えてしまうもの。この制服は紀伊國屋書店、この什器はジュンク堂書店など、小さなヒントを頼りにお店の名前を当てるのが楽しみなのだ。

 今日、椎名編集長宛に送られてきた『編集会議』11月号(宣伝会議)の表紙を目にした瞬間も思わず見入ってしまった。それは恩田陸さんがどこかの書店さんに佇んでいる表紙だったからだ。

 郵便物の仕分けもそこそこに、じっとその背景になっている部分を見つめる。外文が非常に充実しているようだし、このモクモク雲型のポップと手書きの字。絶対どこかで見たことのある平台であると確信を持つ。しかし書店名がなかなか出てこない。うーん、こうなったら年がら年中書店さんを廻り歩いている営業の意地だ。「オレは絶対この書店さんを当てる。100万円賭ける!!」 高々と社内に宣言し、しばし黙考。

 頭のなかにある各書店さんの棚構成がグルグル駆け回る。表紙に写っている棚構成は、手前が外文で、その奥が早川文庫、そしてそのまた奥に文庫の棚が縦に並んでいて、レジカウンター。その配置を頭のなかに書き上がった瞬間、一休さんなみに閃く。ポク、ポク、ポク、チーン。

 何のことはない、ほんや横丁で連載をお願いしている阪急ブックファースト渋谷店の林さんの売場ではないか。そうだこれは間違いない。おお、それだったら、もう少し撮影の角度が変わっていれば、林さんがずーっと平積みしてくれている新元良一氏著『One author, One book. 』が写っていたはずだ。あー、くくく。

 まあ、それでも営業マンとしての意地は通せ、賭けには勝ったのだから「100万円くれ」と金に一番身近な経理の小林をせっつく。しかし至って冷静な小林は一言。「早く営業に出かけてください」 おい、戦後史上最強の台風が近づく中、営業に出ろっていうのか?と焦りつつ、台風以上に小林のカミナリの方が怖いので、あわてて外に飛び出してしまった。

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 電車に乗っている間はわりと小振りだった雨が、なぜか僕が新橋駅の降り立った瞬間、突然ドシャビシャの雨に変わってしまった。まあ、もう濡れるのは覚悟の上だとS書店さんへ向かう。
「こんにちは」と店長のNさんに声をかけると
「ひゃひゃひゃ、何しに来たの?」と笑われる。しかし、僕がNさんと話している間、他の出版社の営業が2人も訪れているではないか。おお、みんな闘っているんだ。

 N店長さんと話を終え、今度は担当のSさんとお話。

「大沢在昌の新刊『砂の狩人(上・下)』(幻冬舎)。あれが入荷して数日まったく売れなかったんですよ。ここは新橋だから大沢さんの人気があるはずなのにおかしいなって考えていたんです。それがね、ある日、動き出したの。あれ?何か大きい広告が出たのかなと思ったら、そうじゃなくてその日は25日のいわゆる給料日。うちはほとんど男性客なんですけど、男性のその我慢強さというか、いじらしさというか、そういうのが可愛いなあって。あと、給料日にきっとこの本を買うのを楽しみにしていたんですよね、なんか嬉しいですよね」

 同じ男性の僕も、実は昨日の給料日に本をまとめ買いしていた。ただただ、それまでお小遣いが支給されず金がないだけで、可愛いわけではないだろうが、欲しい本をじっと我慢し、この日にどっと買うのは僕の大きな楽しみ。

 ああ、そんなことより、僕は出版社の人間なんだから待たれるような本を作らなきゃいけないんだと考えつつ、台風から逃れるように直帰。もちろん自転車に乗って帰宅。