10月25日(金) 炎の出張日誌 大阪篇
冗談だと思っていた人もいるかと思うが、本当に2泊目は宿泊費が出なかった。昨夜、Yさんのアパートに向かい、用意周到な僕は持参した寝袋にくるまりごろ寝。こんな出張したことありますか?
そのYさんのアパート、完全なる一人暮らしのオトコ部屋。何だか学生時代の友達の家に来ているような懐かしさを感じてしまい、ホテル以上にくつろいでしまった。一宿一飯の恩義、忘れずに東京で返すことを約束し、反対方向のホームでお別れ。
ここまで訪れた都市は、エネルギーが籠もっている名古屋。土地にエネルギーが宿る京都。そしてこれから向かうは人がエネルギーを放出する大阪。シティーボーイの僕に営業が出来るのか不安になり、昨年までこの地で敏腕営業マンとして活躍していた相棒とーるに相談を入れる。
「あのさ、今大阪でこれから営業に向かうんだけど、どうしたらいい?」
「とりあえず、この電話でやってみ?」
「初めまして、本の雑誌社の営業の杉江です……。」
「アカン!アカン! そんなよそよそしい言葉しゃべったらみんな心閉ざすでぇ。いきなりこれだよ『まいど!』。な! 大阪は勢いと親しみ易さが大事なんだよ」
「お前さぁ、『まいど!』って一度も会ってないんだよ」
「そんなもん関西の人は気にしないって。とにかく元気に『まいど!』 じゃ、忙しいから。」
ただでさえ人見知りで、気が弱く、都内の営業だっていつまで経ってもよそよそしいのに、いきなり初対面の人に『まいど!』なんて言えるもんか。余計な相談をしなければ良かったと深い後悔。
出勤ラッシュの梅田駅に辿り着き、地下街か地上かわからないところをウロウロしてK書店さんへ辿り着く。こちら日本でナンバー3に入る売上を誇る最強書店さん。予想通り。開店間もなくから激しい人の入りで、相変わらずハリーポッターの特設販売会場には人の山が出来ていた。『躊躇しない』をモットーにしていたが、さすがにこの混みようではとても声をかけられない。棚を確認し、次なるお店へ向かう。ああ、情けない。
関西を歩いて気づいたことがひとつ。京都にしても大阪にしてもやたらに会話に方位が出てくる不思議さ。例えばこの後、訪れたH書店さんで中場さんの『話はわっしょれ~』の案内をしていると「南の方が売れるんですよね」と言われ、「南って?」と呆然としてしまった。いやもちろん、キタとミナミは知っているんだけど、そのミナミじゃなくて、南下した方を指したらしいのだ。
それ以外でも道を聞けば、どこどこ交差点を北に行ってとか、東に入ってとかとにかく位置関係を示すのに東西南北の方位が出てくる。東京で道を聞いたとき「西へ行って…」なんて教えてくる人はほとんどいない。関西の人はいつも太陽の位置で自分の歩いている方向を確認しているのか何だか謎だ。
あともうひとつ感じたのは距離感の違い。関西で道を聞いて「とおい」と言われた道を歩くとそれが割と普通というか近い距離でビックリしてしまった。いやいや別に比較論なんて僕が書いても意味がないのだが、素朴な疑問は他にもいくつかあった。
余計な話は出張のスピード感とまったく違って、営業の方はとにかく先を急ぎ、駆け足で進む。
堂島のJ書店さんでは昨日の京都店以上にぶったまげ、店内をどこまで歩いてもJ書店らしい高い棚が続く。おぉ、池袋店が平たくなったようなお店じゃないかと興奮して彷徨い続け、もちろん「まいどっ!」なんて言えないから、ボソボソ「初めまして、本の雑誌社…」と担当のAさんやMさんに挨拶する。もちろん優しく対応して頂き一安心。相棒とーるのウソはあっけなく暴かれる。
その後、天満橋の同じくJ書店さんを訪問し、こちらではかつて別冊に登場願ったNさんとお話しし、なんと『本の雑誌』の読み方のポップまであって感動を覚える。
1、まずこの雑誌を読んでみる。
2、中で書かれている面白そうな本を読む。
3、この会社の単行本を読む。
なるほどなるほどその通りの読み方が、一番本の雑誌にとって嬉しい読み方だ。それ以外にも興味深いフェアが開催されていて、噂通りパワーあふれた店舗だった。
まだまだ、移動は続き、グググッと難波へ。フェアでお世話になったA書店Kさんを訪問し、一度当欄に書いた恥ずかしDMの店頭掲示に「洒落がキツイです」とツッコミをいれ、高島屋の地下H書店さんを覗き(担当者に会えず残念)、観光客がごった返す吉本の劇場前J書店さんに飛び込む。
正直に書くと、この辺りで僕のエネルギーは完全に切れていた。精神的にもフル営業を3日続けているので意識は飛んでいるし、ふくらはぎはパンパンを通り越してカチカチの状態だった。そしてついに、今までおやじ化を避けるため飲まずにいた『ユンケル』に手を出してしまった。一息で飲み干し、しばらく難波界隈を歩いて効き目を待つ。
ちなみに今日も昼飯は、どこにでもあるチェーンのうどん屋。せめて、食い道楽の街では何かうまいものを食おうと考えていたのに、相棒とーるのお薦めの店は、先日の火災により焼失してしまったとかで断念せざるえない。
最後の最後に本町のK書店さんを訪問したときには、すでに夕暮れどきで、多くのビジネスマンが家路を急ぎ、地下鉄の出入り口へ飲み込まれていった。
梅田でお土産として551蓬莱のブタマンを買って、新幹線の指定席の予約を取った。文字通り「怒濤」の出張が終わろうとしていた。
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僕、今回の出張でいろいろなことを考えた。
もちろん営業マンとして、出版人として。
それから人として。
そして多くの人に優しく迎え入れられたことに何度も涙しそうになった。
実は9年前と何ら進歩もなく、ものすごく不安を抱えて書店さんを訪問していた。
今回はあまりに駆け足過ぎて、ゆっくり棚を拝見することもできず、客層の把握や情報のやりとりも難しかった。でも、これから首都圏の枠を越えて、書店を訪問しないといけないと決意した。それは自社の売れ行きはもちろん、読者の不便さ、そして自分の成長のために。
お世話になった皆さんありがとうございました。