WEB本の雑誌

11月29日(金)

 小田急線の奥を営業。

 本厚木のY書店Yさんとお会いすると開口一番「最近面白い本ないですか?」と聞かれる。もちろん只今どっぷり浸かっている高橋克彦著『火怨』上・下(講談社文庫)から続く東北3部作<『炎立つ』全5巻(同文庫)と『天を衝く』上・下(講談社)>をオススメする。

 しかし、前回Yさんを訪問したとき、Yさんから薦められたのがJ・アーヴィングだったのを思い出す。外文好きに「誇り」と「熱き戦い」の時代小説なんて薦めていいもんだろうか?と考え直しつつも、話しているうちにドンドン興奮してしまい、アテルイだとか藤原経清だとか源義家だとか、とにかく止まらなくなってしまった。ああ、アホだ…。

 それでもYさんは外文好き編集者金子のように嫌悪感を表さず、「気になっていたんで、買ってみますね」と優しい一言を漏らす。思わずこちらが「えっ!」と驚いてしまったが、詳しく話を聞いて、当たり前のことに気づく。何も外文ファンだからといって、外文だけを読んでいるわけではないということ。金子は度量が狭いのさ。

 この日Yさんから
「わたし、泣きたいときに読む本があるんです。学生時代に手に取ってから、何度も何度も読み返しているんです」と紹介されたのが『侍』遠藤周作著(新潮文庫)であった。

 そういえば、いつだか渋谷の南口Y書店さんで、絶対泣くと薦められたのも遠藤周作氏の『わたしが・棄てた・女』(講談社文庫)であった。あれは確かに泣きまくって、人生について深く考えさせられる1冊だった。それ以外遠藤周作氏の本は読んだことがないのだが、もしかしてほとんど泣ける話なのだろうか。ちなみに『わたしが・棄てた・女』を読み終わったとき思ったのは、この著者の本、もっと若い頃に読んでおけば良かった…と後悔であった。薄汚れた心の30代には、あまりに言い訳ばかりしたくなる純粋な物語だったからだ。

 しかし、この日も素直に『侍』を買って、次なる書店さんへ向かった。
 出版営業という仕事に就いて一番の幸せは、このように書店員さんと本の話ができ、そして読む本の世界が広がっていくことだろう。