WEB本の雑誌

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10月30日(木)

 日記と称してあるからには毎日原稿をアップしたい。しかし、どうしても時間がとれず、なかなか原稿が書けない。

 かつては帰宅後、夜遅くにじっくり時間をかけて書いていたのだが、今は家に帰ると2歳半の娘が待ち受けている。間違いなく今のうちしか父親である僕を相手にしてないだろうから、こちらも本気で遊ぶ。

「おかあさんといっしょファミリーコンサートごっこ」や「お店屋さんごっこ」をして遊ぶのだが、本気だから接客8大用語なんていうのも教えている。で、10時過ぎに寝かしつけているとついこちらも一緒に眠ってしまうから、原稿を書く時間がまったくなくなってしまった。

 仕事も少しやり方を変えた。
 いや、初心の気持ちをどこかに忘れていて、先日とある書店さんで怒られてしまったので、入社当時のやり方に戻した。

 効率も部数も何もかも無視して、とにかく多くの書店さんに顔を出すようにした。初めて訪問するお店も多い。緊張感と不安から神経が擦り切れ酒量が少し増えた。しかし新たな書店員さんとの出会いは大きな充実感と満足感をも生んでいる。

 また、ただいま営業している12月初旬発売予定の『書店風雲録』田口久美子著は、僕自身が読みたくて執筆依頼をした企画であり、だからこそ、この本の営業に全精力を注ぎ込んでいる。内容に自信があり、自分の好きな本、また著者を尊敬している。こういう本の営業ができることの幸せを噛みしめている。

 そんな家庭と仕事の間でハマリハマって読んでいるのは『三国志』北方謙三著(ハルキ文庫)。本日は12巻の途中であり、あとは1卷のみ。無教養の僕にはどんな決着がつくのかまったく想像もつかず、興奮と緊張のなかページをめくっている。

 このなかには人生のすべてが描かれているような気がするけれど、人生の意味なんて僕にはわからないから、この言い方はインチキだろう。とにかく面白い!

 それから我が浦和レッズは11月3日にナビスコカップ決勝戦を迎える。

 ドキドキはしているが、昨年ほど浮ついた気持ちはない。メンバーや数字を見れば昨年以上に優勝の可能性は高いと思うけれど、アントラーズの勝負強さは忘れてはならない。とにかくこればっかりは勝負ごとなので、サッカーの神様を信じるしかないだろう。

 もちろん当日は命がけで応援はするが、果たしてどういう結果になるのだろうか。11月4日は代休申請を出している。勝てば大騒ぎで仕事にならないだろう。負けた場合は…。いやサポがそんなことを考えてはいけないのだ。

10月21日(火)

 高校1年のとき、教科書を買うために母親からもらったお金を使い込んでしまった。それがいくらだったのか、何に使ったのかは忘れてしまったけれど、教科書販売の日までに補てんすることが出来ず、結局手に入れられないまま1年間を過ごすことになった。

 どっちにしても授業中はほとんど寝ているばかりで、先生がそういう僕を指すことはなかったし、試験は隣の席の女の子に頼み込んで赤点ギリギリ分だけカンニングさせてもらって、どうにか進級することができた。バカな人間はこういうことが可能だとわかると翌年も翌々年も同じことをしてしまう。だから高校3年間、教科書を持つことなく過ごした。

 そのときはそれで良かったのかもしれないけれど、さすがに社会に出て、しかも人と会う営業という仕事をしているとあまりの無教養はキツイ。先日もとある書店員さんと昼食をとっていたら松尾芭蕉の俳句の話になり「どの句が好き?」なんて聞かれて、思わず沈黙し、頭を下げた。どの句どころか、知っている句が1つか2つしかなく、それも後から考えたら交通標語だったりしたのだ。

 いつもいつも勉強して来なかったことを後悔しているのだが、ひとつだけ無教養だからこそ人一倍楽しめることもある。それは時代小説や歴史小説を読むときで、ただいま僕『三国志』北方謙三著(角川春樹事務所)に思いきりはまっているのだが、タイトルが三国だから三国になるのだろうと予想はつくものの、この山のように出てくる登場人物のなかで誰が三国の主になるのかもわかっていない。

 呂布なんていうとびきり強い将軍が出てきたから、コイツが絶対一国の主になるだろうと感情移入しながら読んでいたら三巻であっけなく死んでしまいビックリ。他にもこれはと思うものが毒矢で殺されたり、吐血して死んでしまったり、いやはや一頁一頁めくるのが気がきじゃないのだ。

 ここまで書いて、念のため発行人改めトーマスも改めアバレンジャーになった浜本に原稿を見せたところ、この原稿はアップしちゃダメだとボツ宣告。

 もうこんなに書いたんですよ、と言い寄ると、オマエの無教養は知っていたがここまで酷いとは知らなかった、とにかく杉江自身のためを考えて言っているんだから…なんて真剣な表情だった。

 いまさら書き直すほど時間はないし、まあ、いいや。アップしちまえ。ちなみにこの『三国志』。昨年『火怨』を読んで興奮した人(僕と目黒ですが)は絶対ハマる本です!

10月20日(月)

 本日で入社7年目に突入。
 
 本の雑誌社の営業は3年が限界といわれ、歴代営業マンもほぼ3年で辞めてきたことを考えるとこれは偉業なのではないか。少しくらい認めてくれても良いんじゃないかと思うが、誰も祝ってくれないし、それどころか気づいてもくれない。

 本の雑誌の営業を一言で表すなら「孤独」である。部下も同僚も先輩もいない。営業会議はいつも「自問自答」で、そのおかげで僕のようなアホな人間でも「考える癖」がついた。しかしその考えた結果はあまり役に立たない。なぜなら誰も数字を追っていないからだ。

 その数字の追わなさが『本の雑誌』のひとつの良さである。それはわかっているけれど、営業マンの一番強い習性である「数字を追う」ことを簡単に放棄することはできないし、そもそもここは会社であり、数字を追わない限り会社は成り立たないのだ。しかしこういう考えは、なかなか伝わらることがない。

 それでも歴代営業マンの平均勤続年数をダブルスコアで越えてなお居続けるのは、キレイ事でもなんでもなく、書店員さんのおかげである。訪問した際の対応はもちろん、本気で棚と売上と格闘している姿を見ているととても励まされる。

 この6年間でわかったこと。僕は「本」そのものよりも書店員さんが好きだということ。そんな好きな人達と仕事が出来る限り、どんなに社内で孤独を感じても、この仕事を続けようと思っている。

10月14日(火)

 日曜日にやったサッカーの筋肉痛が一日おいて出てしまい、思ったように足が動かない。おかげで、朝出社したとき会社の階段蹴躓き、派手にすっころんでしまった。ああ、哀しい30代と嘆いていたら、走る助っ人・及川くんも足を引きずりながら出社してくるではないか。実は僕、彼の走りにいち早く目をつけ、我がサッカーチームに引きずり込んでしまったのだ。だから日曜日は一緒にプレーをしていた。

「もしかしてサッカーの筋肉痛?」
 及川君に問いただすと、とても悔しそうな表情を浮かべ
「そうなんです…」と答える。

 なんだ! 毎日鍛えている23歳の若者でも、一日遅れて筋肉痛が出るのか。
 ほっと胸を撫で下ろしながら営業に向かおうとすると、及川君が一言ポツリと漏らした。

「でも1試合の運動量が、僕と杉江さんじゃまったく違いますからね」 

10月10日(金)

 とある書店の店長さんと話をしていたら、杖をついたお年寄りがカウンターにやってきた。そのお年寄りはお店の常連さんらしく店長さんに気さくに話しかけ、また別の店員さんを名前で呼んで欲しい本のリストを渡した。

 しばらくすると本を探してきた店員さんが戻り、在庫のあった本をカウンターに積んだ。それだけでも相当な量なのに、カウンターの奥からは別に大量な注文分が出て来るではないか。レジを通すと4万円近い金額だった。

 お年寄りが帰ったあと、店長さんに話を聞く。

「定年後に大学院に通い出したらしくて、そのとき資料探しを手伝ったのが縁なんだ。それ以来毎月10万円以上買っていってくれてさ。いやー、奥さんは大変みたいだけどね」

 店長さんはその初めの資料探しについては詳しく話してくれなったけれど、きっと商売を忘れて親身になって探してあげたのだろう。何せ今日もそのお年寄りに気づくと、誰よりも早く折りたたみの椅子を持ってきたのだ。

10月9日(木)

 かつて書店さんから出版社へ本を注文する方法は、短冊が主だった。本に挟み込まれているスリップのようなものに(スリップをそのまま使う場合も多い)、注文冊数を書き、番線を押して取次店さんへ渡していた。それを出版社は納品の際に回収し、次回の納品に出荷した。とても時間がかかる方法だけど、経費を考えると短冊に頼らざる得なかった。余程の急ぎのものだけを電話で発注していた。

 ところが、ここに数年で書店さんの発注スタイルが完全に変わってしまった。それはネットによる発注だ。取次店のPOSはもちろん、大手出版社は独自の発注ホームページを設け、そちらで書店さんの注文を受け付けるようになった。電話での注文センターは昔からあったが、こちらはほとんど朝から晩まで繋がらず、また出版社の電話応対は悪いところも多く、書店員さんのストレスを生む原因のひとつでった。その点、ネットならば不快な思いをすることもなく、また24時間OKだから、多くの書店員さんが自宅に仕事を持ち帰り、自分のパソコンで発注をしてたりする。まあ、ネット注文にもまだまだ問題点もあるようなのだが、とにかく主体になりつつあるのは間違いない。

 で、である。
 本日訪問したとある書店さんで、こんなことを言われてしまったのだ。

「本の雑誌社もネットで受けないとダメよ。なんか家からのネット発注に慣れちゃうと注文しようかなって思っていてもネット受注のない出版社だと面倒になって、結局忘れちゃったりするのよ。だからねぇ…」

 お店を出たあと、何度も何度もこの会話を反芻した。
 確かにそうなんだろうと思う。僕自身、ネットで出来ることから優先的に生活しているし、その楽さに慣れると面倒なことは後回ししてしまい、そして結局忘れてしまうからだ。

 もし注文したい本が、週に何十冊も売れるようなものならば、書店さんも電話を使ってでも注文をしてくるだろう。しかし本の雑誌社も含め中小の出版社の本は、もっとジワジワ少しずつ売れていくものが多い。こういう本は、書店さん側から見れば、ある意味別の本でも補えるわけで、それでなくても毎日新刊が山のように届き置き場所に困っているのだから。いやはや怖い。怖すぎる。

 こちらにはそのようなシステムを作る経費もないし、いったいどうしたら良いんだ?
 うーん、参った。

10月8日(水)

 本日はナビスコカップ準決勝第2戦があり、今日2点差以上をつけて清水エスパルスを破れば、去年に引き続き決勝進出決定!!である。こんな日に仕事をしろ!なんていうのは、どだい無理な話で、それでも午前中は気持ちを抑えて仕事をしたが、午後には携帯の電源もオフにし、所在不明人になってしまう。まあ、バレバレなんだろうけど、仕事以上に大切なんだから仕方ない。

 駒場スタジアムに駆けつけると会社を休んで朝から戦闘モードに突入している取次店O社のKさんとS出版社のYさんが場所を取っていた。僕もかなり重症な真赤病の患者だと思うけれど、しっかり代休を取ってしまうこの二人は間違いなく末期患者だ。二人の今後の人生を心配しつつ、しばし試合開始を待つ。

 7時。運命のキックオフ。
 清水エスパルスがガチガチに守ってくるとかなり手強いと考えていたが、エスパルスのDFラインはそれほど深くない。「これならばと行ける!」と還暦を越えて真赤病に感染した母親に話すが、母親は僕のいうことなんて幼稚園以来一切信用していない。だからまったく無視で長年コーラスで鍛えた発声でレッズコールをくり返す。

 26分。ただいま僕の心を完全に支配している田中達也のゴールで先制。これで第1戦の0対1の敗北は帳消しになり、ここからがスタートだ。イケ!達也!

 その願いが通じたのか、前半のロスタイム。田中達也がこぼれ球をゴールし、2対0。もう僕は田中達也と結婚することを勝手に決めた。(達也よ離婚してくれ…)国立決勝はもうすぐそこ。あと45分を凌げば、あの緊張感と興奮をまた味わえるのだ。

 しかししかし、レッズの選手はそんな守りの姿勢に入らず、またトータルスコアで逆転された清水エスパルスは否が応でも攻め上がってきて、そのスペースを面白いようにレッズが攻撃しだす。

54分 エメのミドルシュート。3対0。(知らない人と抱き合っていた)
57分 達也・エメのJ最強FWコンビの連携でエメが決め、4対0。(完全なる酸欠状態に陥り、半分意識が飛び出す。)
62分 エメのハットトリック達成で、5対0。(失禁寸前!)
70分 FKを山瀬が決め6対0。(とても書けない状態。母親も半分気を失っていた)

 最終的にはトゥットにPKを決められ、6対1で終わったのだが、2試合のトータルのスコアは6対2の快勝!! 2年連続決勝進出が決まった。

 場内放送で決勝の相手が聞こえてくる。
「決勝戦の対戦相手は鹿島アントラーズに決まりました」

 おお、完全なるリベンジではないか。
 今年こそ優勝だ!!! かあちゃん死ぬなよ!

10月7日(火)

 珍しく朝早くから編集部が揃っているなと思ったら、編集長の椎名がやってきた。なるほど今日は打ち合わせ日だったのか。こういうときに余計な口出しをすると大変なことになるのは、この6年間の「本の雑誌ライフ」で何度も苦渋を味わってきたので、一切口も顔も出さず、耳だけ立ててデスクワークに集中しているフリをする。おかげで僕は何も振られず、一安心。

 その打ち合わせが終わったのを見計らい、椎名に話しかける。八重洲ブックセンターの担当Kさんから先週末行ったサイン会の御礼を伝言されていたのだ。すると椎名は、あの独特な笑顔で喜びつつ、こんなことを話し出す。

「やっぱり東京だとサラリーマンが多くて、何だかうれしくてさあ。『椎名さんと同じ年です』なんて人が結構いて、その人達を見ていたら、本当に……」
 そこで椎名は一瞬口ごもる。何となく答えがわかったので、僕が変わりに言葉を繋いだ。
「おじさんなんですか?」
「そうなんだよ、自分の年を感じちゃったよ…」

 思わず吹き出してしまったが、椎名誠基準で年齢を当てはめていったら、ほとんどの人が年上に分類されるのではなかろうか。還暦間近で、毎朝筋トレするような人はそうそういないし、髪の毛も運良くフサフサ、顔だって真っ黒に日焼けしていて、フットワークも軽いし、気も若い。もし、その辺を数値化出来たとしたら、きっと本の雑誌社で一番若いのは椎名だろう。

 いやはや、いつまでも若い上司がいると大変だ。

10月6日(月)

 ただいま銀座はスクラップ&ビルドというか、書店さんの閉店・出店が続き、書店地図がかなり変化している地域。またお隣の東京駅に目を移すとこちらも地下街にY書店さんがオープンしており、今後は丸の内側にはM書店さんの大型出店などもあり、いやはや中央区は営業マンにとって目が話せない地域だ。

 その銀座を営業。

 激戦区だからというわけではないが、こちら銀座は実力のある書店員さんが揃っていて話をするだけでも非常に楽しい。本日は、Y書店のO店長さんから「売れる雑誌と売れない雑誌の違い」についてレクチャーしていただいたのだが、O店長さんの話すとおりに目の前で女性が買っていくのを見るなんていう現場に立ち会い、興奮してしまう。

 それ以外でも本読みのA書店Oさんからは新しい作家について教わり、K書店のYさんからは銀座の人の流れの変化を伺った。どれもこれも非常に興味深い話で、思わずお金を払いたくなってしまう。

 しかし本来僕が聞くより編集者が聞いた方がよい話で、たとえ今日みたいに書店さんでためになる話を聞き、それを会社に戻って編集部に話しても、うまく伝わらないのだ。思わず『踊る大捜査線』の青島刑事みたいに「事件は書店で起きているんです!」と叫びたくなってしまうが、そんなことを言っても発行人改めトーマス浜本に「万引きでも見つけたのか?」と言われるのがオチだろう。

10月3日(金)

 午後、出版業界の専門誌、新文化のIさんから『本屋大賞』の件で取材を受ける。

 営業マンというと「とにかく一方的に話す人」をイメージする人も多いかと思うけれど、実はデキる営業マンを観察してみると「話を聞く」のがうまい。それに気づいて以来というか、そもそも話下手でうまく人と話せず「うなずきトリオ」みたいな営業しかできないもんだから、書店員さんと顔を合わせたときは興味のあることや疑問に感じることを「聞く」ようにしている。そうすると自然にコミュニケーションが取れるようになり、逆に伝えたかったことが端的に伝わったりするのは不思議なもんだ。

 というわけで僕の一日は基本的に「聞く」ことに徹しているので、その逆に取材なんていう話しをなければならない場は非常にキツく、おまけに常に裏方でいたいと思っているので表に出るのもツライ。しかしとにかく我が身を捧げている『本屋大賞』のことなら、何でも引き受けるしかないのである。

 そんな不安や暗い気持ちを抱えていたのだが、記者のIさんが、「聞く」ことの上手い人で、知らないうちにベラベラしゃべりだしている自分がいるではないか。まさにプロってことか…。おまけに話も合って(合わせてくれたのかもしれないと今気づいたが…)あっという間の2時間。最後には再会の約束までして別れてしまった。

10月2日(木)

 総武線、千葉方面を営業。

 ここ数回会えず残念無念で千葉を後にしていたK書店Kさんにお会いでき、最高のスタートをきる。ほんとにひとり営業マンにとって一度の不在の穴は大きい。なんてたって次の訪問が約1ヶ月先であり、そうなると2ヶ月ぶりに訪問なんてことになってしまう。アポを取れば良いんだろうけど、なかなかそれも出来ず、ほとんど運任せ。

 勢いにのって、千葉駅から県庁方面へ駆け足で向かい、柏のS書店Mさんから「絶対会った方が良い」と紹介されていたN書店Mさんを訪問。お薦めどおり、とびきり本好きな書店員さんで会話が弾む。しかし弾み過ぎて営業し忘れるあたりは完全なるダメ営業。いやはや。

 途中下車で営業しつつ、銀河通信(http://www2s.biglobe.ne.jp/~yasumama/)でお馴染みの安田ママさんのお店を訪問。安田ママさん、ただいま妊娠4ヶ月のはずなのだが、いつもどおり早足で棚差しされているのには、思わず感動してしまう。しかし、同時に心配もしてしまう。「気をつけてくださいよ」と声をかけると安田ママさんは笑いながら「ありがとうございます」なんて言ういれど、そうこうしているうちにお客さんから問い合わせが入り、早足で在庫のある場所へ向かってしまう。うーん、やっぱり安田ママさんを止めるなんて無理なことなんだ。

 その後は、ときわ書房の茶木さんを訪問。

 オリジナルフェア『現場の書店員が選ぶ夏の文庫100冊』がとんでもない好成績を納めたそうで、おまけに9月の売上が前年を越えたとか大満足な様子。いやはやこの不況下での売上アップなんて信じられずその秘訣を伺うが、返ってくる答えは当たり前のことばかり。

 それは接客であったり、店内の清掃であったり、あるいは品揃えであったり。茶木さん曰く「基本を徹底しているだけ」とのこと。確かに店内を徘徊すると平台はビシッと積まれているし、棚も背表紙がきっちり揃っていて、それは気持ちが良い。特に最近は人出不足で平台や棚が荒れている書店さんが増えているから、このキレイさは大きな武器になるのだろう。ではでは、営業の基本は何なんだろうか?

10月1日(水)

 ほぼ1ヶ月間更新が出来ずにいた。
 それは何も『本屋大賞』の手伝いを引き受け、信じられないくらい忙しくなったからという理由ではなく、この冗談のような連載が3年を過ぎ、4年目に突入し、少し考え直さなければいけないと思ったからだ。

 初めは本当に冗談だった。冗談というよりは、当ホームページの隙間を埋める連載でしかなかった。僕自身はいまだにそう考えているのだが、この3年の間に想像以上にアクセス数が増えていて、しかもその読者は、僕の会ったことがない人ばかりになっていた。

 それが一般読者であればまだ気楽なのだが、書いている内容が内容なだけに出版業界人に妙に読まれるようになってしまった。例えば、書店店頭や飲み会で出会った他社営業マンと名刺交換すると「ああ、炎の営業の…」と言われることがあるし、あるいは何かの会で出会った編集者にも同様の言葉をかけられることが増えた。

 それはある意味書き手として喜ばしいことなのかもしれないが、僕には相変わらず書き手としての意識が生まれずにいる。

 僕は営業マンだ。

 例え評価されることがあるなら、それは自社の売上が上がるってことしかないだろう。
 こんなところで虚名が売れたとしてもうれしくない。その辺のジレンマについて、この1ヶ月深く深く考えていた。また考えさせられるような出来事もあった。

 3年間は冗談や勢いで続けられる。
 しかし4年目を迎えるにあたっては、ある程度の覚悟か開き直りがないと続けられそうにない。

 社命はもちろん「書き続けろ!」だった。
 しかし今回はその社命だけではとても書き続ける意識は持てなかった。たぶんサラリーマンとしては失格だろう。

 それは例え隙間の連載だとしても、書くなら本気で、気持ちを入れて書かなければならないと考えているからだ。今までの3年間だって気持ちだけは入れて書いてきた自信がある。こんなクソみたいな文章であっても僕は本気で書いている。だからこそ4年目を迎えるにあたってひとつ考え直したかった。

 辞めるのは簡単だと思った。
 制作部門に連絡をいれ、HPから削除してしまえば済むことなのだから。
 その逆に続けていくことは非常に困難なことだ。長く続けば続くほどつらくなるだろう。

 ならば困難な方を選ぶのが、何も実力のない僕にとって必要なことなのではないか。
 虚名に負けないくらいの営業マンになる。

 それが4年目を迎えるあたっての覚悟である。

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