2月24日(木)
中野A書店さんを訪問すると文芸書の担当者さんが見あたらなかったので、他の書店員さんに所在を確認する。すると休みだと告げられるが、その後「あっ」と声をあげられ、いきなり「マー君、知ってる?」と聞かれるではないか。
マー君? マー君? 椎名誠がマー君?
?だらけの頭を抱え、その書店員さんを見つめ返すと、「ごめん、ごめん。Hさん、Hさん」と今度はとある名字を言い出した。
おお、Hのマー君といえば、僕の中学時代の同級生だ。えっ? どうして?!
「あのね、マー君といとこなんですよ、僕。それで今年のお正月に会って、本屋で働いているって言ったらマー君が『本の雑誌』知ってる? 知ってるって答えたら『じゃあ杉江っていうのは?』って聞かれてね。担当が違うからあったことないけど、お店には来ているはずだよって答えたら、もし会うことがあったら宜しくって言われていたんだよね。そうそう伯母さんにもよろしくってお願いされていたんだ」
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Hと出会ったのは中学校1年のときだった。その頃、僕は嫌な奴だった。Hにも嫌な想いをさせた。だから彼は今でも酒に酔うと「オレ、ツグに虐められたからね」なんて暗い顔をする。こういうことは時間が解決するわけじゃないのだなと深く反省し、「悪かった」と謝るがそれで解決するわけでもない。取り返せない過ちってことだろう。
それでも中学校を卒業後も、Hとはかなり仲良く遊び、毎晩僕の部屋で麻雀やらテレビゲームをしていたっけ。そんな付き合いは、僕が結婚して家を出て行くまで続いたが、今はほとんど会うことがない。
会うことがない…その理由は、たぶん忙しいとかそういうことでなく、僕のなかで過去の負い目があり、そしてずーっと心のどこかで僕はHに嫌われていると感じていたのだ。だから何だか会いづらくなって疎遠になってしまっていたのだろう。
最後にHに会ったのは去年の今頃、昔の仲間と飲んだ時だ。数年ぶりの再会だった。
そういえばそのときHが遅れて到着する前に、中学校時代に裏番長だったKに「ツグ、Hは良い奴だよ、だからそんなに嫌うな」なんて怒られたんだ。「オレは嫌ってないよ」って反論したけど、Kには僕の心の中にあるHに対しての距離感が見えていたのだろう。
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そのHが、わざわざいとこに僕のことをよろしくって言ってくれなんて…。