2月23日(水)
『千利休』清原なつの著の3刷目が出来上がってくるが、社内滞在時間10分、あっという間になくなってしまう。
「すげーなぁ」と驚いていると顧問・目黒が降りてきて「昔な『もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵』椎名誠著を出版した時、朝、製本所からトラックが着いたら、それを待ちかまえるように取次のトラックが来てな、在庫分みんな持っていかれたことがあったよ。あれにはビックリしたし、後にも先にもあれ1回きりだな、取次店が本を取りに来たのは…」と遠い目をして話される。どうも僕、この会社に入る時代を間違えたようだ。
直納しつつ書店さんの文庫売場をうろついていて、おや?と首を傾げたのは『ラッキーマン』 マイケル・J・フォックス著を見つけたときだ。えっ? これどこの出版社だったっけ? デザインの感じだとソニーマガジンズ? いや扶桑社?
なんて不思議に思いつつ手に取ると「SB文庫」の文字。「SB文庫」って? あわてて出版社を確認したらソフトバンクではないか。そりゃそうだ『ラッキーマン』はソフトバンクから出て、かなり売れたんだよね、あれ? でもソフトバンクって文庫出していたの? なんて再度平台を見ると隣に『不良品』宇梶剛士著や『100億稼ぐ仕事術』堀江貴文著なんてのも並んでいて、それが新文庫の創刊だったと気付く。
一昔前の文庫創刊なんていったら、いきなり20点くらい出して一気に平台と棚を奪い、当然広告もガンガン打って、書店さんの間からは「まったくもう棚がないわよ」なんて苦言が聞こえてきたのに、何だかもう創刊自体も日常的な出来事になっているようだし、しかも普通に単行本を出すような感じで出せるのか? なんてこの気分をうまく書けないんだけど、かなり驚いたのである。
もう少しで文庫は、そのいちばん後ろの方に書いてある「創刊の言葉」なんてすっかり忘れて、単なる単行本の簡易版というか、安くしたものになっていくのだろう。いやもう読者から見たらそういうものだろうし、先日書店さんと話していたとき「今は文庫と新書だけで総合書店ができるよね」なんて話題になったことがあったっけ。それは書店員さんの意識も変わってきたってことかもしれない。
うーん。単行本と文庫。この位置づけをそろそろ真面目に考え直さないとダメかもしれないな。本の雑誌社くらい小さな出版社でも変に古い本の在庫を持っているより、文庫にしてもう一度ライトを当てることが出来るのかも…。
でもでも管理も営業も大変そうだし、そうそう5年くらい前の会議で、「自社文庫を立ち上げましょう」って提案したとき、その頃まだ発行人だった目黒に「お前はアホか? その仕事、誰がやるんだ?」って笑われたんだよな。
うーんうーん。そういえば、兄貴がこんなことを言っていたっけ。
「オレもさ、新刊を読みたいんだよ。でもあんなデカイ本を置いておく場所が家にないんだよ。だからさ、同じ値段でも良いから、新刊を出す時に文庫サイズと単行本サイズと両方出してくれよ。そしたらオレは1500円でも文庫サイズで買うよ」