WEB本の雑誌

8月17日(木)

 もはや熱帯雨林なみの暑さ、湿度の東京を『エンターテインメント作家ファイル108 国内編』の見本出しのため取次店さん廻り。ハンドタオルはあっという間にびっしょり。

 本の雑誌社の営業は、僕が入社するまで3年くらいで辞めていくというのが定説で、それは激務耐えられず血反吐を吐いて退職願いを出すか、「30歳過ぎての貧乏はつらい」と言い残して消えていくかという感じであったらしい。

 入社当時、前任者からその話を聞いて僕も3年で辞めようと考えていたのだが、気がついたら約10年が過ぎていた。元来のいい加減さが、荒波を乗り越えられた要因だろうが、本の雑誌史上最長勤務営業マンであり、それは言い換えれば本の雑誌史上最高齢営業マンにもなるわけだ。35歳だけど。

 で、本日のこの猛暑のなかを口を半開きにし、汗とヨダレと脳みそを垂れ流しながら考えていたのだが、この10年間仕事は基本的にまったく変わっていない。ということは今後も変わらないであろう。その場合、いつまで体力が持つのか?ということが心配なのである。

 正直言って30歳を過ぎてから毎日10件以上書店さんを廻るがきつくなった。それは肉体的な体力だけでなく、精神的な体力も落ちているからかもしれない。「もういいか」「ダメだダメだ」なんて、夕方の駅のホームで自問自答の繰り返しだし、たった数センチの段差に躓くことも増えてきた。

 だから体調管理には気をつけていて、酒を飲んでも誰よりも早く帰るのは、家が遠いのもあるのだが、翌日のことを考えて、だったりする。ここで潰れては明日が台無し。一人営業マンにとっての一日はとても大事なのである。もはや引退間際のアスリートと同じ気持ちで働いているのだ。

 今日の今日まで、一刻も早く本という形になって出てきておくれと願っていた『エンターテインメント作家ファイル 国内編』だが、いざ本当に出来上がってきたら、猛烈な不安に襲われる。

 この編集方針で良かったのか? 違う方法もあったのではないか? そもそもこの企画は僕の独りよがり、マスターベーションだったのではないか? 読者は受け入れてくれるか?

 いや僕自身は、本当に面白いと思うし、こんな本が本当に欲しかったと今この出来上がった本を手に持ち実感しているわけなんだけど、それは僕個人の感想であって、これは商品だから他の人がどう思うかが大事なのだ。

 今の今までは試合前の練習や準備であって、お店に並んでからがいざ本番だ。

 本なんて売れなきゃこりゃゴミなわけで、これは出版社の倉庫を見れば一目瞭然、邪魔以外の何ものではないし、果たして刷った分、あるいはそれ以上売れるだろうか? もし売れなかった場合、それは僕のセンスが悪かったとうことの証明であり、その場合、会社にいていいのか? なんて不安は広がる一方。

 御茶ノ水、飯田橋、市ヶ谷と取次店さんを廻り、フラフラになって会社に戻ると、そこには著者の北上次郎が待っていた。

「俺、もう2度読み直しちゃった」

 とりあえず著者は満足したようで、ホッと胸をなで下ろすが、やはり本当の勝負はこれからだ。

 『エンターティメント作家ファイル108 国内編』は23日取次店搬入です。
 よろしくお願いします。