[前月号へ] [次月号へ]

2018年10月 へそくり虎視眈々号 No.424

 スリップをご存じだろうか。そう、購入前の本に挟まっている細長い紙片である。表面が補充注文カード、裏面が売上カードになっている大変便利で本を売るのに欠かせない(はずの)この紙片が、なんといま絶滅の危機にあるという。この春、角川文庫が突如、スリップを廃止、他社にもそれに追従する動きがあるのである。この流れは本の世界に何を及ぼすのか!? というわけで本の雑誌10月号の特集は「スリップを救え!」。戸田書店掛川西郷店の高木久直店長による巻頭言「このままスリップを無くしていいのか?」から、出版業界勉強会「でるべんの会」とスリップレス化を進める一迅社への突撃取材、現場の様々な使い方ルポにスリップの歴史、書店員の本音対談にスリップ連想法、そして変わり種スリップまで、スリップのすべてに迫る特集だあ!

新刊めったくたガイドは、♪akiraがマクロイ『悪意の夜』の予想外の着地点に驚愕!すれば、江南亜美子は拷問執行人の家族の葛藤を描く『デュー・ブレーカー』に家族観がぐらぐら。大森望が円城塔の集大成『文字渦』に堂々の五つ星!なら、若林踏は緊密な私立探偵小説若竹七海『錆びた滑車』を謎解き小説としてもイチ押し! 大塚真祐子が『鏡のなかのアジア』に導かれてどこでもない土地にたどり着けば、仲野徹はツッコミを入れつつ読むオノマトペでじゃんけん気分。そして北上次郎は久保寺健彦七年ぶりの新作を超面白小説と絶賛! 小説はやっぱり面白い──そういう気持ちがひたひたと湧いてくるとおじさんが断言する異色の長編に、さあ、あなたもチャレンジしてみよう!

 今月は「図書カード三万円使い放題!」に中村航が登場! 多感な時期の東京の玄関口だった上野駅アトレの明正堂をじっくり一周。コミック、文芸、学術、実用、趣味と回って、大人買い。人生で初めて購入したサイン本も大公開だ! そして読み物作家ガイドは米澤穂信の10冊。アップデートされていく作品テーマを併走してきた編集者が解読するぞ。さらに絶好調「黒い昼食会」が文庫ガチ100を提言すれば、宮田珠己はロト7の山分けシステムに潜む罠にはまらない方法を伝授。沢野ひとしは中国から帰国して新連載「神保町物語」をスタートだ。さあ、今年のベストミステリー大本命もベストSF大本命も揃った本の雑誌10月号で読書の秋がスタート。小説はやっぱり面白い!とあなたも再確認しよう!

目次

本棚が見たい!

10月の書店 ときわ書房志津ステーションビル店/10月の本棚 鈴木毅
図書カード三万円使い放題!/楽しい大人買い 中村 航 
酔いどれ文学紀行/神戸と大正モダン 太田和彦 
新旧いろいろ面白本/見当もつかない死に方いろいろ 椎名 誠 
一私小説書きの日乗/堅忍の章(二) 西村賢太 

特集:スリップを救え!

このままスリップを無くしていいのか? 高木久直 
突撃取材/“でるべんの会”と一迅社に行く! 永江 朗  
スリップを制す者は棚を制す! 
スリップの歴史 空犬太郎 
書店員座談会/スリップはお客様の足跡なのだ! 
20世紀の書店員はスリップの夢を見るか? 矢部潤子 
スリップ連想法 久禮亮太 
変わり種スリップ大集合! 高頭佐和子 

着せ替えの手帖/謝罪スーツ一丁! 内澤旬子 
サバイバルな書物/アラスカの森で過ごすオッサンの魂の独白 服部文祥 
ユーカリの木の蔭で/お疲れさま 北村 薫 
黒い昼食会/文庫ガチ100がやりたい!

新刊めったくたガイド

マクロイ『悪意の夜』の予想外の着地点に驚愕! ♪akira
拷問執行人の家族の葛藤を描く『デュー・ブレーカー』 江南亜美子
円城塔の集大成『文字渦』に五つ星! 大森 望
緊密な私立探偵小説 若竹七海『錆びた滑車』 若林 踏
『鏡のなかのアジア』が導くどこでもない土地 大塚真祐子
ツッコミを入れつつ読むオノマトペが楽しい! 仲野 徹
久保寺健彦七年ぶりの超面白小説が出たぞ! 北上次郎

今年のミステリー大本命『カササギ殺人事件』に注目!  宇田川拓也
髙田郁『花だより』で懐かしい面々と再会だ! 内田 剛
BOOKS青いカバの棚差しの本 島田潤一郎
最新ヒューゴー賞受賞の〈五神教〉シリーズ、新刊登場 山岸真
お客様との距離に正解はある?『Heaven?』 岡部 愛
「ほん吉」の店頭で古本魂に火を点けろ! 小山力也
トロッコに乗る前に、図書館に行こう 鎌倉幸子
『ドゥーパ!』の秘密基地オジサンに憧れる! 原カントくん

私がロト7に当たるまで/山分けシステムに潜む罠 宮田珠己 
モーター文学のススメ/女性ドライバー脅威論 速水健朗 
マルジナリアでつかまえて/やがて消えゆくマルジナリア 山本貴光 
坪内祐三の読書日記/橋本忍といえばやっぱし『幻の湖』だろう 坪内祐三 
連続的SF話/何も言えない映画 鏡 明 
南の話/DFWIJ 青山 南 
そばですよ/入口から三軒め、健在。父が娘に伝えた「真っ黒なつゆ」。 平松洋子 
鬼花──鬼刑事・花篤好美/出前のうどんをこぼすなよ 中場利一 
世界196カ国の家庭料理 円城 塔 
残酷さと憤りを届ける『戦時の音楽』 徳永圭子 
窓と階段 秋葉直哉 
切手から見える消えた国の姿 風野春樹 
ホリイのゆるーく調査/長い名作文庫の各巻の部数を比べてみる 堀井憲一郎 
神保町物語/茗溪堂の山日記 沢野ひとし 
米澤穂信の10冊/アップデートされていく作品テーマ 桂島浩輔 

続・棒パン日常/作家と写真 穂村 弘 
三角窓口/小川一水氏は天進飯をどんどん食べなさい! 他
今月の男前/矢部潤子 

今月書いた人 
今月本の雑誌に遊びに来た人
掲載図書索引 
後記 

[前月号へ] [次月号へ]