作家の読書道 第224回:伊与原新さん

2019年に『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞した伊与原新さん。地球惑星科学を専攻して研究者になった伊与原さんが読んできた本とは、ある日小説を書きはじめたきっかけとは。エンタメから分かりやすい理系の本まで、幅広い読書遍歴を語ってくださいました。

その1「図書館、移動図書館、近所の文庫」 (1/7)

  • かもとりごんべえ (いもとようこの日本むかしばなし)
  • 『かもとりごんべえ (いもとようこの日本むかしばなし)』
    ようこ, いもと
    金の星社
    1,540円(税込)
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  • きゅうきゅうしゃのぴぽくん (のりものストーリー(4))
  • 『きゅうきゅうしゃのぴぽくん (のりものストーリー(4))』
    砂田 弘
    偕成社
    1,320円(税込)
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  • ([る]1-1)奇巌城 怪盗ルパン全集シリーズ(1) (ポプラ文庫クラシック)
  • 『([る]1-1)奇巌城 怪盗ルパン全集シリーズ(1) (ポプラ文庫クラシック)』
    モーリス ルブラン,南 洋一郎,Maurice Leblanc,モンキー・パンチ
    ポプラ社
    638円(税込)
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  • ([る]1-3)8・1・3の謎 怪盗ルパン全集シリーズ(3) (ポプラ文庫クラシック)
  • 『([る]1-3)8・1・3の謎 怪盗ルパン全集シリーズ(3) (ポプラ文庫クラシック)』
    モーリス ルブラン,南 洋一郎,Maurice Leblanc,池上 永一
    ポプラ社
    638円(税込)
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  • 江戸川乱歩・少年探偵シリーズ(5) 青銅の魔人(ポプラ文庫クラシック)
  • 『江戸川乱歩・少年探偵シリーズ(5) 青銅の魔人(ポプラ文庫クラシック)』
    江戸川乱歩
    ポプラ社
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――まず、いちばん古い読書の記憶を教えてください。

伊与原:幼い頃で強烈に憶えているのは『かもとりごんべえ』ですね。有名な昔話の絵本です。もう一冊は『きゅうきゅうしゃのぴぽくん』。『かもとりごんべえ』は鴨撃ちの猟師さんの話で、寝ている鴨たちをいっぺんに捕まえようと全部の足に紐をつけたら、鴨が一斉に飛び立って空に連れ去られていく話です。『きゅうきゅうしゃのぴぽくん』は、救急車が主人公の話ですけれど、仲良くしていた男の子が事故に遭う展開で。どちらも途中でちょっと不穏な空気が漂う話でした。それを読んだのが幼稚園くらいの時でしょうね。

――本が好きな子どもでしたか。

伊与原:好きでした。小学校の図書室だけじゃなくて、車に本を積んでやってくる移動図書館とか、近所の普通の民家の2階にある「すばる文庫」に母に連れて行かれていました。たぶんボランティアの方が運営していたんでしょうけれど、小さな部屋いっぱいに本があって、そこで借りたものを雑多に読んでいました。父も本が好きでしたし、母もずっと短歌をやっていて文学や文芸が好きだったので、子どもにもたくさん本を読ませたんだと思います。

――大阪のご出身ですよね。どのあたりですか。

伊与原:吹田市です。万博公園の近くですね。

――ご兄弟はいらっしゃいますか。なにか読書で影響を与え合ったりとかは。

伊与原:兄と弟がいます。兄は1つ上、弟も2つ下で歳が近いので、同じようなものを読んでいたと思います。でも、僕がいちばん読んでいたかもしれません。かといって、何を借りていたのかあまり思い出せなくて...。『奇巌城』や『813の謎』といった怪盗ルパンのシリーズはよく読みましたね。あとは怪人二十面相、「少年探偵団」のシリーズ。表紙のイラストをいまだによく憶えています。

――あの、おどろおどろしい感じの。

伊与原:ええ、そうです。『青銅の魔人』とか『透明怪人』とか。それを好んでいたことはよく憶えています。
 小学生時代に一番好きだった本は、「3本足」シリーズ。ジョン・クリストファーという人のジュブナイルSFで、調べてみたら早川書房から2004年に『トリポッド』シリーズとしてもう一回刊行されていました。このシリーズがめちゃくちゃ面白かったですね。3本足というのはエイリアンなんです。「宇宙戦争」みたいな感じで、3本足のロボットみたいなものに地球が支配されている。人類は14歳になったらその3本足にキャップをかぶせられて洗脳され、言うことを聞くようにされるんですね。で、人類の中にごく一部、「これをかぶってはいけない」「俺たちはこいつらに支配されている」と気づいた人たちがいて、白い山脈というところでレジスタンス活動している......という小説です。僕が読んだのは全3巻でしたが、早川書房から出ているのは4巻あります。

――学校の作文の授業などは好きでしたか。

伊与原:読書感想文的なものは、わりと褒められる子どもであったとは思いますね。大人が喜びそうなことを書く子どもでした。

――伊与原さんは大学院で地球惑星物理学を専攻されていますが、その頃から理系の事柄に興味はありましたか。

伊与原:地質学とまではいかないけれど、やはり恐竜とかは好きでしたね。中生代とか白亜紀とか、そういう名称に妙に惹かれるタイプの子どもでした。ただ、科学的なことはおもに『ドラえもん』から興味を刺激されていましたね。『ドラえもん』のなかに、ミニチュアの地球を作る話があるんですよ。塵みたいなもがだんだん集まってきて火の玉になって地球になって、そこに生命が誕生するというのを特殊な顕微鏡で観察できる。すごく好きなエピソードでした。

――外で遊ぶのが好きな子どもでしたか、家で何かするのが好きでしたか。

伊与原:どちらかということはなくて、外でも遊んでいましたし、漫画家になりたかったので家の中で漫画も描いていました。漫画は、藤子不二雄命でしたね(笑)。たぶん、自分で描いていた漫画もそういう感じのものだったと思います。

――藤子不二雄作品ではやはり『ドラえもん』が好きですか。

伊与原:そうですね。『キテレツ大百科』なんかも、コミックスは実は全3巻しかないんですけれどアニメになるずっと前に読んでいましたし、『ウメ星デンカ』、『仙べえ』、『ドビンソン漂流記』といった、あまり人が知らないようなものも読んでいました。藤子不二雄先生にファンレターを送ったこともあって、ちゃんと返事がきて狂喜しましたね。もちろん印刷物だったんですけれど。
 でも一番のバイブルは、何と言っても『まんが道』ですね。藤子不二雄A先生が青春時代を描いた自伝的作品です。今自分も創作をする身になって、ああ、『まんが道』にもこんな場面があったな......と感慨にふけることがよくあります。

――アニメや映画などは好きでしたか。

伊与原:映画はあまり記憶になくて、最初にはっきり自分で観たいと言って観た映画は小学校5年か6年の時の「スター・ウォーズ ジェダイの復讐」でした。その前に「E.T.」を観ているかもしれませんが。「スター・ウォーズ」には大感激して、漫画家はやめて特撮映画を作る人になろうと思いました。ジョージ・ルーカスになりたいと思った。

  • ([え]2-8)透明怪人 江戸川乱歩・少年探偵8 (ポプラ文庫クラシック)
  • 『([え]2-8)透明怪人 江戸川乱歩・少年探偵8 (ポプラ文庫クラシック)』
    江戸川 乱歩,藤谷 治
    ポプラ社
    572円(税込)
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  • ドラえもん (1) (てんとう虫コミックス)
  • 『ドラえもん (1) (てんとう虫コミックス)』
    藤子・F・不二雄
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    499円(税込)
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  • キテレツ大百科 (1) (てんとう虫コロコロコミックス)
  • 『キテレツ大百科 (1) (てんとう虫コロコロコミックス)』
    藤子・F・ 不二雄
    小学館
    472円(税込)
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  • ウメ星デンカ (1) (てんとう虫コミックス)
  • 『ウメ星デンカ (1) (てんとう虫コミックス)』
    藤子・F・ 不二雄
    小学館
    472円(税込)
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  • 藤子・F・不二雄大全集 仙べえ
  • 『藤子・F・不二雄大全集 仙べえ』
    藤子・F・ 不二雄,藤子 不二雄A
    小学館
    1,540円(税込)
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  • ドビンソン漂流記 (藤子・F・不二雄大全集)
  • 『ドビンソン漂流記 (藤子・F・不二雄大全集)』
    藤子・F・ 不二雄
    小学館
    1,540円(税込)
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  • まんが道(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)
  • 『まんが道(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)』
    藤子不二雄(A)
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プロフィール

伊与原新(いよはら・しん)
1972年、大阪生れ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞。2019年、『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞。2020年に刊行した『八月の銀の雪』が第164回直木賞候補に。著書に『青ノ果テ 花巻農芸高校地学部の夏』『磁極反転の日』『ブルーネス』『コンタミ』などがある。