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児玉 憲宗の<<書評>>
P.I.P
【小学館文庫】
沢井鯨
定価 670円(税込)
2003/6
ISBN-4094055916
評価:A
著者の実体験に基づいたフィクションだという。どこまでが本当の出来事なのか。そんなことは問題ではない。真実だろうと、作り話だろうと、その圧倒的な迫力とおもしろさに変わりはないのだから。常識でははかれない壮絶で刺激的なストーリーが次から次へと繰り広げられ、気がつけば、この作品の虜になっている。「プリズナーin P.I.P.」!芸能人の名前を持ち出して、登場人物の容貌を説明する手法を意図的に繰り返したりするのには、興醒めするが、それを減点しても余りある痛快さだ。
無責任な発言とわかっていてあえて言うと、沢井鯨さんのこのデビュー作は、おそらく沢井さん自身の最高傑作であり続けるに違いない。それほどまでに沢井さんの力と情熱が結集された作品と言い切れる。
将棋の子
【講談社文庫】
大崎善生
定価 620円(税込)
2003/5
ISBN-4062737388
評価:A
将棋に限らず、勝負の世界では、圧倒的な実力に裏づけらた上で、強い運を持つ者だけが生き残ることができる。大崎善生さんは、その選ばれし勝利者ではなく、運命に翻弄され、あるいは自滅して、脱落する形で将棋界を追われた者たちに敢えてスポットライトを浴びせた。日本将棋連盟に身を置き、花を咲かす天才たちの夢、あるいは蕾のまま咲くことのない敗者の挫折、長い時間をかけて酸いも甘きも見届けてきた著者だからこそ、描けた感動のドラマの数々だ。
成田が、米谷が、加藤が、その他多くの主役たちの知られざるエピソードには例外なく鬼気迫るものがある。将棋はもちろん、将棋界と縁のないわたしも惹きつけられる作品だった。
作家・大崎善生の存在は、紛れもなく「将棋界の宝」といえるだろう。
菊葉荘の幽霊たち
【ハルキ文庫】
角田光代
定価 525円(税込)
2003/5
ISBN-4758430403
評価:A
空き部屋のないこの木造アパートにどうしても住みたい。そんな願いを適えるために、パンツ泥棒をしたり、幽霊に化けて徘徊したり、訪ねて来た愛人らしき女と騒動を起こしたり。どこまでお遊びでどこまで本気なのかわからない。たちの悪いストーカーもしくは、できの悪い探偵のようで滑稽でもある。それにしても、翻弄されたヤス子や蓼科からすればいい迷惑である。しかし考えてみると、すべても行動が、アパートから誰かを追い出す目的に起因しているとはいえ、自然に彼らの生活に入り込んで、時間を共有し、楽しんでいる。これもまた愉快で奇怪で滑稽なのである。
現代社会のどこかでこういった滑稽な人たちが滑稽なことを繰り広げている様は容易に想像できる。滑稽な時代になったものだ。
カカシの夏休み
【文春文庫】
重松清
定価 620円(税込)
2003/5
ISBN-4167669013
評価:AA
やっぱり重松清さんはいい。人間の機微、特に家族を描かせると絶品だ。
オトナにはオトナの事情があり、コドモにはコドモの世界があり、別々の世界でありながら、重なり合い、交じり合う。自分の気持ちと葛藤しながら確固たる自信も持てず、時には強情ではあるが、手も足も出ないカカシこそ現代人の象徴に違いない。
「カカシの夏休み」「ライオン先生」「未来」どれも甲乙つけがたい傑作である。いずれも、人の弱さを描きながらも、明日への希望を抱かせる作品だ。
今後、「好きな作家は?」の質問には、必ず重松清を加えることにしよう。
おれは非情勤
【集英社文庫】
東野圭吾
定価 500円(税込)
2003/5
ISBN-4087475751
評価:B
実はミステリ作家を目指しているので、非常勤講師の仕事には愛着も理念も持ち合わせていない。その非情ともいえるクールさも魅力の一つだったりする。行く先々の小学校でいろいろな事件に巻き込まれるが、わずかなヒントも見逃さず、推理力も冴えて、解決してしまうだから、やっぱりミステリ作家の方が向いているのかも。でも、本当は子ども好きだったりする。
講談社青い鳥文庫の「パスワード」シリーズに夢中だった中学一年生の娘は、「結構、おもしろいじゃん」との感想を残し、この本は今、娘のクラスでまわし読みされている。どうだ。「おもしろさ」は保証された快作といえるのではないか。
ノヴァーリスの引用
【集英社文庫】
奥泉光
定価 480円(税込)
2003/5
ISBN-4087475816
評価:B
なにせ十年も前に起きた事件である。深夜の大学図書館屋上からの墜落は、事故か自殺かそれとも他殺だったのか。恩師の葬儀で集まった四人の仲間たちが、再会をきっかけに事件を振り返る。十年の歳月は記憶をアヤフヤなものにし、意見の食い違いも多く、信ぴょう性に欠ける。その曖昧さの中で、唯一、明確な鍵として存在する石塚の卒業論文。事件の解明は思わぬ展開へと流れる。そして、流れるといえば、この小説自体も、探偵小説、幻想小説、怪奇小説とさまざまなスタイルに姿を変えていくのである。
随所に見られる、蒼く、気取った文章も、思い直せば、実は高いセンスのもとに思考を重ね、真剣に誠実に選ばれた結果の表現と思えなくもない。 十年後、石塚の論文を読んだ主人公のこの感想と同様の印象を、まさにわたしが本書に抱いたのは単なる偶然だろうか。
実は、この小説をあと20ページほどで読み終わるところで眠ってしまった。そして、夢の中で、続きを読み、完結を迎えた。目覚めた後、夢だったことに気づき、あらためて読破した。結末は、似ても似つかぬものだったが、まるで夢の中を彷徨うようなラストだった。
悪意銀行
【光文社文庫】
都筑道夫
定価 840円(税込)
2003/5
ISBN-4334734898
評価:B
先月読んだ都築作品は、ショートショートの安楽椅子ミステリだったが、今回は、冒険活劇風の長編小説。都築さんの引き出しの多さにはつくづく感服する。
今回も、設定やストーリーをシンプルにし、読みやすいのは変わらない魅力だが、味な雑学やパロディを散りばめたり、落語や映画の要素を組み込むなどの試みは相変わらずのサービス精神の旺盛ぶりだし、「これぞ、エンタテインメント」といった感の仕上がりになっている。
都築さんは、自身の作品を「ラクゴシック」と表しているが、まったくもってその通り。書き出しは、まるで落語のまくらのようで、瞬く間に惹き込まれていた。
半身
【創元推理文庫】
サラ・ウォーターズ
定価 1,113円(税込)
2003/5
ISBN-4488254020
評価:C
正直言って、何度挫折しかかったことか。歴史背景、舞台設定やストーリー展開が複雑すぎてなかなかのめり込めない。投げ出しかけた本を再三手にとらせたのは、帯に書かれてある「読者を作品世界に連れ去る技量において圧倒的」という評である。何としてでも連れ去られたかった。
陰鬱な牢獄に閉じ込められた霊媒の次第に明かされる過去や一見何不自由なく裕福に育った慰問の貴婦人の実はぎくしゃくした家庭や良い関係を取り繕うために決して心を許さない看守や囚人など、いろいろなプロットが絡み合う中で、作品全体に独特の空気が感じられる。二年間を行ったり来たりする日記には、混乱させられたが、次第にその効果をまざまざと発揮した。
かくして、わたしは妙な雰囲気に包まれたまま読了を迎えたのだが、読む者としての力量不足ゆえ、作品の意図するものを堪能できたのかどうかは、文字どおり「半身」半疑のままなのである。
いい人になる方法
【新潮文庫】
ニック・ホーンビィ
定価 780円(税込)
2003/6
ISBN-4102202145
評価:B
主人公ケイティは、自分が「いい人」であることを心の拠り所にしている。自分がいかに「いい人」かということを論理的にし、満足しようとしているが、どう考えても、ケイティの職業が医者であること以外にその理由は見つからない。
ケイティが自分が犯した浮気を白状し、離婚話を持ちかけたことをきっかけに、「悪い人」であるはずの夫、デイヴィッドが、文句なしのいい人へと変わっていく。夫がいい人になればなるほど、ケイティは自分のいい人ぶりがいかに嘘っぱちだったのかが浮き彫りにされる。浮き彫りになるにつれ、混乱し、ケイティは次第に壊れていく。実は、デイヴィッドのいい人ぶりだって相当あやしい。さらに困ったことには、皮肉なことに家族がいい人になり、いいことになればなるほど家庭が崩壊していくのだ。
この物語のテーマは「いい人って何だ?」ということなのだが、その答えは読者に委ねられる。ケイティの職業は医者であるから、こう結論づけている。「刺されたナイフは抜いてしまうと出血してしまうから、そのままにしておくのが最良の方法」。いい人になるために積極的なアクションをおこすなんでとんでもない。
不在の鳥は霧の彼方へ飛ぶ
【ハヤカワ文庫SF】
パトリック・オリアリー
定価 987円(税込)
2003/5
ISBN-4150114447
評価:B
まったく正反対の性格をした兄弟による、それぞれの冒険を描いた物語。そう、これは紛れもなく「冒険小説」なのだ。「それぞれの」と言ったが、「ひとつの」冒険ともいえる。いずれにしても二人の不思議な旅が交互に繰り広げられる。まるで蜂鳥の羽ばたきのようにせわしなく。もちろん、このせわしなさも作品がもつ持ち味のひとつだ。
マイクとダニエルも相当変わり者だが、二人がまともに見えるほど、常軌を逸した破天荒なキャラクターが息継ぐ間もなく登場し、物語をひっかきまわす。二人が、早くゴールにたどりつきたいと願うこの長い旅をキャラクターたちは、やすやすとはゲームオーバーにしてくれないのである。そして、ドタバタSFコメディと信じて疑わなかった長いゲームのシリアスな結末にいい意味で裏切られる。
この作品のテーマは「死」である。自分の死に翻弄される兄弟の姿に、「死」は「生きること」よりも大変だと思い知らされたのである。