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SPEEDBOY!
舞城 王太郎(著)
【講談社】
定価1260円(税込)
2006年11月
ISBN-4062836033
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
評価:★★
「ルボボボボッ」と手足を振って加速し、「ンヴァァァァァァッ」といよいよ速さを増し、「バンバンバンバンバババババン!」と音速の壁を破って疾走する、鬣の生えた少年、「成雄」を描いた7篇のオムニバス。ジェット機と併走し、水の上を疾走し、走りの先に「白玉」が現れ、人々を「食べて」ゆく。この神話的イメージは何かのメタファーか?と思って読み進めるうちに、鬣のような毛を持つことから「犬! こら! 犬が! おまえなんぞ死んでしまえ!」と父に蔑まれ、「倒れた父親の背中を2回刺し」、殺してしまう。うーん、父親殺しと逃避の隠喩かなともおもったが、「世界に存在するのも優しい/嫌な他人ばかりじゃなく、優しい自分や嫌な自分、悪い自分が別々にいろいろあるのかも知れない」などとこじんまりした結論に納得したりする「成雄」。刹那的な「成雄」の感情といい、表層をスピード感を保って、ゲーム機のコントロールスティックを操るように「成雄」にシンクロするような身体感覚で読むのがこの作品の読み方かもしれないなと思った。
大げさな擬音、ニンテンドーのゲームパッケージのような装丁。ゲーム世代であるかないかで評価が分かれるのかもしれない作品である。読者を選ぶ作品だ。
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ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉
飛 浩隆(著)
【早川書房】
定価1680円(税込)
2006年10月
ISBN-4152087676
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
評価:★★★★★
精緻なプロット。過剰なまでに構築される仮想空間。立ち上がる哲学的命題。さらに、物語性があり読ませる。こんな、SFあったのか!というのが正直な感想。上質な哲学書を読むような知的冒険に溢れ、それでいて夢物語のようなファンタジーを味わえる。
<数値海岸>と呼ばれる、仮想のリゾート地。その電脳空間(イメージは『甲殻機動隊』ね)をめぐる5つの物語。仮想世界に住むAIの哀しみを描いた『夏の硝子体』。<数値海岸>開発の秘話を描く表題作。<数値海岸>がビジネスとして成り立ってゆく中で開発者の一人が500回もの死を自分に「上書き」して謎の死を遂げる様を描いた『クローゼット』。カジノになった鯨が大空を泳ぐ<数値海岸>のひとつの「区界」、ファンタジー溢れる「ズナームカ」とビジネスとしての<数値海岸>が終焉する様を交互に描く『魔術師』。植物が生い茂る「汎用樹の区界」を一人の少年の冒険譚として描く『蜘蛛の王』。豊富なイメージは、ソリッドかと思えばソフトへとめまぐるしく、全体を貫く「仮想」と「現実」の交換と侵犯が相俟って、頭がクラクラしながらも心地よい疲れを感じさせてくれます。全篇すべてこれツボ押されまくりの5編。『廃園の天使』シリーズ2弾ってことで、第3弾期待しています。
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ナイチンゲールの沈黙
海堂 尊 (著)
【宝島社】
定価1680円(税込)
2006年10月
ISBN-4796654755
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
評価:★★★
前作『チーム・バチスタの栄光』(未読です)が面白いと言われていたので、期待しながら読み始めた。そうそう、ありがちな人物設定は、因習的な大学病院を揶揄しているのね。うんうん、網膜芽腫の患者は斜に構えた美少年ね。「アヴェ・マリア」を歌う美しい看護師ね。少しとぼけたDr.ね。あっ、待ってましたプルースト片手にたたずむ薄幸の白血病の美少女。知能明晰な警視正とエキセントリックで道化のような厚労省技官。すべてのステレオタイプは事件の特異性を際立たせるためでしょう?と思っていたが。がーん。嘘! こんなに凡庸なの。嘘や! 何かどんでん返しあるんでしょ?と思っているうちにラストまでいってしまった。勤務医の著者ならではのディテールの精緻さ、場面設定の巧みさ。それ故、残念です。『チーム・バチスタ』読んでからまた読み返します。それまでは期待感で評価は保留です。
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竜巻ガール
垣谷 美雨(著)
【双葉社】
定価1680円(税込)
2006年10月
ISBN-4575235628
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>> 本やタウン
評価:★★★★★
しようもない自己保身。もの欲しげな他人への羨望。具にも付かない優しさに期待される返礼。そんなものにとりこ囲まれた人間関係に、まっとうな、実にまっとうな回答! まさに、今、必要とされる人生の指南書のような一冊です。
表題作『竜巻ガール』、父の再婚相手の女性の連れがなんと今時のガングロ娘。そのガングロを落とした時の姿は清楚な女子高生。一緒に暮らすことになった「僕」こと「哲夫」の見たガングロ娘「涼子」の真の姿とは。詐欺まがいのどうしようもない親父を捨てて出て行った母親が連れてきた親父の再婚相手がこれまた親父に輪をかけたような詐欺まがいの女性であったことに驚きながらも呆れる「俺」を描いた『疾風マザー』。結婚に出遅れた女が一緒にいった旅先で川に溺れる愛人を置き去りにし、その愛人の妻が自分より若く美人であったことに嫉妬を感じるが、勤め先の次期社長候補のイケ面に言い寄られて優越感と疑心の間を揺れ動く。そんな女の気持ちを描く『渦潮ウーマン』。中国の山村から来日した若いインストラクターの夫を持つ妻が、貧しい山村を背景に写った、夫と少女の写真を見つける。その少女を日本に呼びたいという夫に疑惑を感じながらもある答えを見つけるまでを描く『霧中ワイフ』。
本作がデビューとなる著者が4篇で描く人々の生き方は、ほろ苦いけれど今を生きる大人が失ってしまったまっとうな人生への処方箋なのだ。今後が楽しみな力量溢れる新人に脱帽!
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こいわらい
松宮 宏(著)
【マガジンハウス】
定価1575円(税込)
2006年10月
ISBN-4838717199
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
評価:★★★★
京都に住む美人女子大生、和邇メグルが、和邇家再興をかけて振るう、秘剣「こいわらい」。
両親を事故で失ったメグルは、自身も小脳を失うというとんでもないハンディを背負うが、そこから奇跡的にも回復。しかし、和邇家は破産、祖父も他界。西陣の名家の屋敷を離れ、5歳の弟「サンジ」を連れ知恩院の門前長屋に移り住む。そんなメグルを支えたのは、いつもそばにあった「長さ三十センチくらい」の「美しい棒」、祖父の残した秘剣「こいわらい」の巻物と「おまえにこの剣を伝える」と言う遺言だった。
それから、始まるメグルの現代京都での剣術活劇談。「京都宮内庁」という電気屋社長が明かす和邇家の秘密。謎の剣客、川又新三の使う怪しげな剣術、新三に弟子入りする同級生、五郎。京都のほんわかした雰囲気のなかで、ミニスカを履いたメグルが大活躍。柔らかな京都弁とちょっとぼけっとしたメグルのキャラクターがなんともいえない可笑しさを醸しだします。
奥儀「こいわらい」。脱力系必殺女人剣とでも名づけようか。
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雷の季節の終わりに
恒川 光太郎(著)
【角川書店】
定価1575円(税込)
2006年11月
ISBN-4048737414
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>> 本やタウン
評価:★★★★
民俗学的香りの幻惑的1篇。現か幻か、存在しないようで存在するような町、「穏」に住む「賢也」に雷の晩とりついた「風わいわい」。「穏」に隠蔽された「墓町」にさそわれ、「賢也」は現との回廊を通って現在の都会に行く。そこにいたのは「ムネキ」という「穏」の「鬼衆」だった。「悪い子は雷の季節に、鬼衆に連れて行かれる。」と言い伝えられる。雷の晩に失踪した姉と隠された「穏」の秘密を知った「賢也」は......。独特の言語感覚と幼少の頃の記憶を強く喚起する幻想世界。「ムネキ」がターミネイター張りの不死身さを見せつけるところはちょっと雰囲気そがれ興ざめだが、それを差し置いても「穏」に強い郷愁を感じさせるその筆力は生半可ではない。読んでる間「とうりゃんせ」のメロディが頭から離れなかった。
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ワーホリ任侠伝
ヴァシィ 章絵(著)
【講談社】
定価1470円(税込)
2006年10月
ISBN-4062136821
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
評価:★★★
一流商社でイカ輸入担当の「サカイ」の部下、イマドキOLの「ヒナノ」は六本木で掛け持ちするキャバクラで「リュウイチ」と知り合うが、やくざの跡目争いに巻き込まれた「リュウイチ」は「ヒナコ」の目の前で射殺されてしまう。傷心を胸にワーホリでニュージーランドへ旅立つが、何故か組長になってくれと依頼されて......自由闊達な「ヒナコ」、無口な用心棒「キシモトさん」、性を超える優しい「アキラ」。現代版、はちゃめちゃ任侠活劇。性の放蕩と消費の浪費の果てに見つけたものは? ブランド名の嵐、バブリーな登場人物にちょっと食傷するも、なかなのエンターテインメント作品だ。が、「第1回小説現代長編新人賞受賞」ってことで帯に書かれた、選考委員諸氏の推薦文ほどではないなってところが正直な感想。今後に期待。
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東京公園
小路 幸也(著)
【新潮社】
定価1470円(税込)
2006年10月
ISBN-4104718025
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
評価:★★★
透明感溢れる、さわやかな一篇。写真家を目指す「ケイジ」がファインダー越しに写し取る美しい人妻「百合香さん」とこどもの「かりん」の何気ない風景。芽生える恋心、のようなもの。吉祥寺の古い一軒屋で同居する、アーティストの「ヒロ」、そこに転がり込んでくる映画好きの女性「富永」。「ケイジ」の感じる恋心のようなもの行方が、ゆっくりと展開していって、それは「百合香」の浮気を疑う夫へと投げ返されてゆく。ジム・ジャームッシュやベンダース。井の頭公園や砧公園。自分の学生時代とあわせて共感しながら読めました。そして、今も「ケイジ」のような若者たちが夢と小さな恋を胸に、都下の公園で語り合っているのだなーと、過ぎ去りし青春を回顧して、おっさんは少し切なくなったのでした。
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眼を開く―私立探偵アルバート・サムスン
マイクル・Z. リューイン(著)
【早川書房】
定価1365円(税込)
2006年10月
ISBN-4150017921
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
評価:★★★★★
ミステリに疎い。「眼を開く」って目撃者かしらん? はたまた覗きの類のサイコパスかな?って気持ちで読み始めた自分を反省! 心の「眼を開く」ってことだったのね。インディアナポリスの私立探偵アルバート・サムスンに探偵の免許が返ってくることから、ストーリーは始まる。母のポジーの食堂の2階に間借りしていたサムスンは早速、嬉々として探偵業を再開するが、最初の依頼は、免許を没収した(この辺は前作に書かれているのかな)旧友ジェリー・ミラー警部の身辺調査だった。かつて、旧友から受けた免許没収という「裏切り」と友情の間で悩むサムスン。というのもミラーが汚職にかかわっているのでないかという依頼だったからだ。このことを軸に、ポジーが関わる街の「自警団」、娘のサム、恋人のメアリーを絡めてサムスンの周りがにぎやかになってゆく。「自分ひとりの世界に閉じこもり、ほかのことには眼をむけず、何も気づかなかったのだろうか?」と自問するサムスンが、心の「眼を開」いた後に見える世界とは?「脅しという手段を使うことが許されることが、あってはならない。特に、弱者、貧しいもの、老いたものに対しては」。「わたしは、人々がかかえる問題について調査する。そしてそれを解決するのに手を貸す。私は人々を助ける......」そう語るサムスン。ユーモアとちょっとハードボイルドっぽい会話で進められる、まっとうな市民の生き方。このあたりが、シリーズの邦訳を待ち続けたファンをひきつけるのだろうなぁと納得。
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コレラの時代の愛
ガブリエル・ガルシア=マルケス(著)
【新潮社】
定価3150円(税込)
2006年10月
ISBN-4105090143
>> Amazon.co.jp
>> 本やタウン
評価:★★★★★
これほど美しい物語があろうか。ありきたりな物言いを許されるなら、この物語の前には言葉を失う。凡百の美辞麗句は必要ない。ただひたすら感じていたい。そう思わせる作品だ。マルケスの他の作品に違わず、ストーリーは一見、荒唐無稽で、時間だけがただ連綿と流れてゆく。
若かりし頃の愛の告白を、一度は受け入れられたそれを、再び、彼女の夫が亡くなった51年後の葬儀の日に口にするフレンティーノ・アリーサ。老齢になり過去の不実を悔やみながらも、その愛の誠実さに心打たれる、未亡人フェルミーナ・ダーサ。二人の半世紀にわたる物語。言葉にすると凡庸なそれは、ページをめくるうちに、壮大な、そして悠久の世界へと読者を誘う。そして不思議な物語空間は、読む人と作者の手を離れ、まるで作中の「父なるマグダレーナ川」に二人を乗せて走る蒸気船の様に幻惑の彼方へ走り去る。その物語が立ち上がる瞬間、頬をつたう至福の涙を感じて、「まだマルケスがいる!」そのことだけでも世界に感謝と喜びを感じる私がいた。
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