『レッド・ボイス』

レッド・ボイス
  • T.ジェファーソン・パーカー(著)
  • 早川書房
  • 税込2,100円
  • 2008年7月
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  7. レッド・ボイス
佐々木克雄

評価:星3つ

 これぞ「アメリカのミステリ」ってな本ですね。刑事の男が、相棒の女性(←これ、お約束)と難事件を解決していくって筋書き。お下劣ギリギリのトークも定番と言えば定番でしょう。有力者による集団不正って点ではサンディエゴ市も日本も変わりないけど、大きく違うのは主人公ロビーが特異な能力を持っているところでしょうか。
 しかしながら、この「相手の声が形になって見える」てな能力が、殺人事件の解明に大きく役立っているようには思えないのが不思議。ロビーは足を使って汚職を解明、真犯人を突き止めようとするワケで、読み進める程に点と線が(やや恣意的な感じもあるが)繋がっていく。正直に言いますと、ちょっと腰砕けの印象あり。(読む人によって違うとは思いますが)
 まあ、流れるストーリーを単純に楽しんでいければ、それはそれでいいのではないかと思った次第です。お盆の帰省時、新幹線車中で読むにはピッタリの本でした。

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下久保玉美

評価:星3つ

 ある事件でホテルの6階から落ちたことで人の感情が視覚的に見えるようになった刑事が直面する1人の捜査官の殺人事件。
 人の心の中がわかると楽なのになあと思うことはあります。『家族八景』の七瀬みたいなテレパシー能力とか。でも、きっと人の心が見えたら見えたらで嫌なことも多くなって、いつかこんな能力いらないと思うんだろうなあ、とも思うのです。七瀬もいろいろ悩んだり苦労したりしてたし。本書の主人公である刑事は人がウソをついたり、怒っていたり、悲しんでいたりと言葉の上では出てこない感情が図形となって視覚的に見えるという稀有な能力な持ち主であり、その能力を武器に捜査では多くの情報を得ることができます。しかし、本書のよいところはその能力だけで必ずしも全てが解決するわけではないところ。能力の方がどうしても目立ちますがやはり描かれるのはそこから得た情報からどうやって次のステップに進むかというところ。その過程が一番楽しめると思いますよ。

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増住雄大

評価:星3つ

「共感覚」……あることに対して、本来の感覚に別の感覚が伴う現象。
 本作の主人公ロビーは共感覚を持つ殺人課の刑事。ロビーの共感覚とは、話し手の言葉の奥の感情が色つきの図形となって見える能力。つまりは人間嘘発見器のようなもの。
 なんて聞いた時点で9割の人は「超能力者が超能力バンバン使って事件を解決に導くミステリ小説か」などと思うと思うが実は違う。捜査はあくまで地味に地道に行われている。
 繰り返されるのは主人公の内省。何についてどう考えるか、どう思ったか。これが詳しく、また、緻密なので読み応えが生まれる。するすると読んでしまう。
 超能力に頼りきりというわけじゃないところが良かった。

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松井ゆかり

評価:星3つ

 この帯に書かれている「わたしは、人間嘘発見器だ!」って謳い文句、誇大広告とは言わないまでも、ポイントを外し気味じゃないですかね。「嘘発見器」という言葉そのものももちろんですが、それ以上に「!」が醸し出す強気なニュアンスが。
 本文の方はとても真面目で堅実な印象。主人公ロビーは“共感覚”(ひとつの感覚が他の領域の感覚をも同時に引き起こす現象。彼の場合は他人と話すときに相手の声が色つきの形となって見える。そしてその色つきの形はそれぞれ異なる感情を示している)の持ち主である。が、解説でも触れられているように、共感覚が事件解決の決め手となっているわけではなく、あくまでもロビーや仕事のパートナーであるマッケンジーらの地道な捜査によって、謎が少しずつ解き明かされていく。このミステリー部分だけで十分おもしろく読める作品になっているのだから、無理に新機軸(さらに言えば、消化不良の感が残るロビーと妻ジーナの離婚騒動についても)を持ち込まなくても…という気がしないではない。ただ、ロビーものはシリーズ化されると予想するので(しないかな?1作で終わるにはもったいないキャラと設定だと思うが)、さらなる期待は次作にということで。

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望月香子

評価:星2つ

 共感覚(字や音に色が見える、ものを食べたときに形を感じることなどを、そう呼ぶそう)を持つサンディエゴ市警の刑事ロビー・ブラウンローが、謎の死の真相を追うという物語。刑事ロビーの持つ共感覚とは、相手の言葉に込められた感情が色と形で見える、つまり、相手の嘘を見抜ける能力を持っていること。  
 刑事さんにそんな能力を持たれたら、犯罪者はたまったもんではないんじゃないか、すぐに捕まってしまうんじゃないか。と、非常にてきぱきしたヒーローものなのかな、と思ったけれど、そうじゃないのがこの物語の魅力に思えました。
 事件の真相が明らかになるに従い、様々な人間模様が見えてきます。未来を照らす温かい場面には、ほっとします。

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