『はじめてのおつかい』筒井頼子さく 林明子え

●今回の書評担当者●旭屋書店池袋店 礒部ゆきえ

  • はじめてのおつかい(こどものとも傑作集)
  • 『はじめてのおつかい(こどものとも傑作集)』
    筒井 頼子,林 明子
    福音館書店
    990円(税込)
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 どうしよう。
 なんだか妙なことになってしまった。
 まさか自分がWEBで、不特定多数の方に本を薦めることになるとは。
 しかも、調子に乗って引き受けてしまった。
 引き受けたからには、真面目に取り組まねば。

 そして考えた結果、背伸びせず、気負わず、のんびりやっていこう、と決めました。
 ひとまず、"横丁カフェ"の店主になったつもりで、ここではゆったり気分を味わったり、楽しい気持ちになってもらえるといいな、と思っています。
 どうぞ、よろしくお願いします。

 そんな、店主、礒部がはじめて紹介する本。
『はじめてのおつかい』です。
 一冊目、めちゃくちゃ悩みました。
 背伸びせぇへんと決めたはずやのに、もう見栄を張りはじめて、「ツウっぽい本紹介したほうがかっこえぇんちゃうかな」とか思ったりして。

 そんなアホなことを考えながら、ふと自分の部屋の本棚を見てみました。
 私は親しい人へなにかにつけて気に入った本を渡してしまう性分で、棚に残らないことがほとんどなのですが、その中でずっと本棚に残り続けている本。
 これは大学生になって実家を出る時も、迷わず段ボールに詰めた一冊です。
 嫁入り道具のひとつにする、と心に決めていた一冊でもあります。(実際に、お嫁にくるとき持ってきました)

 私が幼稚園に通っていた頃、園から帰ると、いつも靴を脱がずに玄関で母にこの絵本の読み聞かせをせがんだのだそうです。
 こども時分になぜそんなにハマったのかは覚えていないのですが、書店員になってから知った、この絵本に詰まった素敵なストーリーをここで少し紹介させてください。

 みいちゃんはお姉ちゃんになったばかりの、5歳のおんなのこ。
 冷蔵庫の牛乳がなくなったので、おつかいをたのまれます。
 それは、みいちゃんにとっての"はじめてのおつかい"。

 おとなにとっては何ともないお店までの道が、みいちゃんにとっては大冒険。
 ぴゅるーんと駆けていく自転車をよけたり、なかなか現れないお店の人を大きな声で呼ばなければいけなかったり。
 お姉ちゃんだからがんばらなくっちゃと勇気を振り絞っているみいちゃんに、思わず涙が溢れてきます。
 スカートを握りしめている手。心細さが絵からも伝わってきて、思わず本を抱きしめてしまいそうに。

 そして、この絵本の素敵なしかけ。
 道の途中に出てくる、まちの掲示板があります。
 そこには『ねこさがしています』や、『絵画教室しています』の貼り紙が。
 このねこちゃんはページのどこかに隠れているし、絵画教室の先生もあそこに。(この先生の名前にも注目...!)
 あれれ、お店の名前、これはまさか...?
 それから、『ねこさがしています』の貼り紙に書かれた電話番号は、刊行当時の福音館書店の電話番号なのだとか。
 当時はお客様から電話がかかってくることもあったそうです。

 ほかにも、ひみつが隠れています。
 ぜひ、見つけてみてください。

 林明子さんの絵本は大好きで、母にたくさん買ってもらったのですが、これは私の思い出も詰まった大切な一冊です。
 みなさんにも、大切にしてもらえる一冊となりますように。

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旭屋書店池袋店 礒部ゆきえ
旭屋書店池袋店 礒部ゆきえ
1983年大阪生まれ。4年前に関東へ嫁いできました。今は池袋で働いています。慣れない東京、恋しい大阪。なんでスーパーにたこ焼きソースが置いてないねん。と泣きながら、今日も山手線で出勤します。