『なんで人は青を作ったの?』谷口陽子、髙橋香里

●今回の書評担当者●精文館書店豊明店 近藤綾子

  • なんで人は青を作ったの?―青色の歴史を探る旅 (13歳からの考古学)
  • 『なんで人は青を作ったの?―青色の歴史を探る旅 (13歳からの考古学)』
    谷口 陽子,髙橋 香里,クレメンス・メッツラー
    新泉社
    2,420円(税込)
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今日の私のファッションチェック!

スカイブルー色のボタンダウンシャツの上に、瑠璃紺色のカーディガンをはおり、ネイビーブルー色のジーンズを履く。留紺色と白色のチェック柄の靴下に合わせるのは、鮮やかなシアン色のコンバースのシューズ。フレームがエナメルブルー色に近い眼鏡をかけ、外に出る際のウールのステンカラーコートは、濃紺色。そして、紺色と白色のボーダーのマフラーを首にくるっと巻く。
(参考資料:完全保存版『色の名前と言葉の辞典888』(東京書籍))

私は、青色が大好きなので、服に限らず、何でも青色系を選んでしまう。私が着ている服でさえ、上記のように様々な「青色」があるくらい、今は当たり前のように存在する「青色」。しかし、この「青色」を作り出すために、昔の人たちは大変苦労したことをご存じだろうか?。

そのことをとても楽しく分かりやすく知ることが出来るのが、13歳からの考古学シリーズ第五弾『なんで人は青を作ったの?』(新泉社)という児童書である。

中学1年生男子である蒼太郎と律。彼らは、化学者の森井老人が主宰する化学倶楽部で、人類がどのようにして「青色」を作り出したかを証明する再現実験に挑戦する。

この蒼太郎と律の実験を通して、昔の人々が様々な工夫や方法によって、いかに青色を作り出したかを知ることが出来る。これが実に面白い。酢と銅の化学反応で青緑を作り出したり、牛の血液を煮詰めてプルシアンブルーを作ったり...等々。これが、専門書だと、専門用語がならび、理解は難しくなり、面白さを感じないこともあるだろう。一方、本書は、児童書としては、難しい用語も出てくるが、蒼太郎と律の実験を通して「青色」を作る工程が詳しく描かれ、理解しやすく、製造の大変さも実感しやすい。牛の血を煮るなんて、想像できないけど、その工程も詳しいので、うわ~そんな感じなのか!と実際に体験している気がするくらい。同様に、ラピスラズリなどの鉱物を細かくする作業の大変さも、そして、石から顔料にする工程も、とても分かりやすく、楽しい。科学実験などが好きな子供はもちろん、児童書ではあるが、大人も大満足出来る内容である。そうそう、ラピスラズリのスカラベが有名だから、ラピスラズリは、エジプトにあるものだと思っていたけど、昔は、アフガニスタンでしか採掘されない貴重なものだったという。エジプトとアフガニスタンは、実に4000キロも離れている。どんなに遠くても、どうしても欲しかったことが分かる。ラピスラズリから作られるウルトラマリンブルー1グラムは、金1グラムと交換されたというから、びっくりである。

さらに、錬金術師も「青色」を作ろうとしていたとか、埴輪には、元々は青色が塗られていたとか...興味をそそられる内容満載。

また、この本の魅力で忘れてならないのが、装丁や挿絵。もちろん、青系の色で描かれているし、そのタッチが昔の書物の挿絵風。雰囲気があって、そそられる。

タイトルの『なんで人は青を作ったの?』の「なんで」は、「どのようにして」の意味であるのは間違いないが、もう一つ、意味があるとしたら、「どうして」という動機の意味であろう。自然界には、青色の顔料の素となるものがほとんど存在しない。しかし、自然界には、青い空、青い海や川が身近に存在しているのだ。人類は、ああ、この青色を、何が何でも欲しい!と思ったのだ。

この「青色」を巡る歴史体験は、知的好奇心をくすぐるとともに、はるか昔の人類に思いをはせることだろう。ああ、浪漫だわ。

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精文館書店豊明店 近藤綾子
精文館書店豊明店 近藤綾子
本に囲まれる仕事がしたくて書店勤務。野球好きの阪神ファン。将棋は指すことは出来ないが、観る将&読む将。高校生になった息子のために、ほぼ毎日お弁当を作り、モチベ維持のために、Xに投稿の日々。一日の終わりにビールが欠かせないビール党。現在、学童保育の仕事とダブルワークのため、趣味の書店巡りが出来ないのが悩みのタネ。