『一流のリーダーほど、しゃべらない』桜井一紀
●今回の書評担当者●田村書店吹田さんくす店 渡部彩翔
あなたの周りに、なぜか人を育てるのが上手な上司はいませんか。
ついつい話したくなる上司とは、どんな人でしょうか。
もし答えに詰まるなら、本書を手にとってみてください。
本書によると、日本の上司は『しゃべりすぎ』なのだそうです。
実際、日本は中国、香港、タイに次いで、上司が話している時間が長い国、第4位!
さらに、15か国中、日本の上司と部下の関係良好度は、なんと最下位だといいます。
しゃべりすぎる=相手の話を聞いていない、ということ。話を聞いてもらえない人の脳は、殴打を受けたのと同じ衝撃を受けるそうです。
おしゃべり好きな私は思い当たる節があり、頭が痛くなりました。
そもそも、日本では対話型のコミュニケーションが少ないそうです。だからこそ、上司が意識的に耳を傾けることが重要であり、同時に、それがいかに難しいことかも痛感しました。
さらに、上司が『答えを持ってしまっている』ことも問題です。
私も、年の離れた従妹に質問されたとき、相手が自分で考え、意見を大切にできるよう意識しています。それでも振り返ると、無意識に私の思う "正解"へ誘導していて、ハッとすることがあります。
説教や叱咤激励――。その前に、『このコミュニケーションの目的は?』『誰のため?』と問い続ける大切さを教えてくれます。
また、「いや、それは違うでしょ。」と言いたくなる場面で、部下の話を聞き続ける方法も具体的に書かれています。
これまでに聞く力や質問力に関する本をいくつか読んできましたが、理論中心で学びは多いものの、実践のイメージが湧かず、踏み出せませんでした。
しかし、本書では具体的なケースを通じて、上司たちの『やってみたらこう変わった』という実感が語られています。そのリアルな声にワクワクし、私も試してみたくなりました。
実際に読んですぐ実践できたことで、仕事に変化が生まれたときの感動はひとしおでした。
『本で読んだことを試したら、本当にうまくいった...!』
知識が実体験につながった瞬間の喜びは、今でも忘れられません。
2~3年に1度は読み返している、大切な一冊です。
本書を入門書として読むことで、これまで難しく感じていたコミュニケーション本も、もっと楽に理解できたかもしれません。
本書には、人の話を聞くための目から鱗の方法が、たっぷり詰まっています。
結局のところ、人の真意は聞いてみないと分からないもの。
つい距離を置いたり、腫物扱いしたりして面倒なことを避けたくなりますが、それは同時に自分の成長の機会を逃しているのかもしれません。
部下に意見がなかったのではなく、ただ聞いていなかっただけ。
本書の内容は、親子や夫婦、友人関係にも当てはまります。
「一流のリーダーほどしゃべらない」
まずは1日5分、「しゃべらない」を意識してみるだけで、部下の行動や成長が驚くほど変わるはず。
明日誰かと関わることが楽しみになる1冊です。
- 『フォンターネ 山小屋の生活』パオロ・コニエッティ (2025年2月20日更新)
- 『女ノマド、一人砂漠に生きる』常見藤代 (2025年1月16日更新)
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- 田村書店吹田さんくす店 渡部彩翔
- 田村書店吹田さんくす店に勤務して3年弱。主に実用書・学参の担当です。夫と読書をこよなく愛しています。結婚後、夫について渡米。英語漬けの2年を経て、日本の活字に飢えに飢えてこれまで以上に本が大好きになりました。小さい頃から、「ロッタちゃん」や「おおきな木」といった海外作家さんの本を読むのが好きです。今年の本屋大賞では『存在のすべてを』で泣きすぎて嗚咽しました。