『積ん読の本』石井千湖

●今回の書評担当者●精文館書店豊明店 近藤綾子

  • 積ん読の本
  • 『積ん読の本』
    石井千湖
    主婦と生活社
    1,694円(税込)
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  • 図書館を建てる、図書館で暮らす:本のための家づくり
  • 『図書館を建てる、図書館で暮らす:本のための家づくり』
    橋本 麻里,山本 貴光
    新潮社
    3,630円(税込)
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皆さ~ん、積ん読してますか?!
私は、バリバリ積ん読してま~す!

年末といえば、大掃除!家中の掃除はもちろん、今年こそは、本の整理整頓をして、積ん読本も減らさなきゃ!と意気込んでいた。しかし、そんな矢先に、体調を崩してしまい、「ああ、これでは、掃除も本の整理も出来ないわ...」と仕方なく断念...(都合のいい言い訳)とにかく、積ん読の山は、そのままで、年を越したのであった(これを書いているのは年末だけど、未来予想してみた)。そんな私でさえ、積ん読本に対して、どこか後ろめたい気持ちはあった。しかし、積ん読は、全然悪くない!良いのだ!と思わせてくれる素敵な本を発見。その名を『積ん読の本』!そのまんま!

著者である石井千湖さんが、作家、評論家、文筆家、国語辞典編纂者等々の12人の方々に積ん読について取材した本である。

ところで、積ん読を意味する言葉って、他国にはあるのだろうか?本書によると、どうもないらしい。この本に登場する管啓次郎さんによると、英語もフランス語もスペイン語にもなく、「TSUNDOKU」が世界中で使われているとか。積ん読するのが日本人だけとは思えないから納得。スキヤキ、フジヤマ、サムライと同じくらい「ツンドク」も世界共通語となる日が近いかも。

ぎっしり本が詰まった本棚と平積みされて本の山の写真が魅力的な表紙の本書。中も皆さんの凄い本棚や本の写真の数々に、興奮しまくる。角田光代さんの整然と本が並んだ本棚にうっとりしちゃったし、付箋だらけの本や、平積みの本の山々、飯間浩明さんの自炊術の凄さに圧倒され(自炊の意味は本書で)、とにかく、本の写真がたくさん。タイトルが読めない写真に、思わず、ピンチアウトで拡大しそうになったり...(もちろん、拡大なんて出来ない)どうして、本棚を見ると、こんなに興奮するのかしら。

とにかく、この魅力的な本棚の持ち主の皆さんが、積ん読は悪くない、良いのだ!と言ってくれているのである。

「積ん読は、毎日ご飯を食べることと同じく自然なこと」「本は読めないものだから、積ん読は恐れなくていい」「積ん読でも、本を買うこと自体が出版社や著者への目に見える貢献」等々。それぞれ、誰が言っていることなのかは、本書で確認して欲しい。なかでも、書店「Title」の辻山良雄さんが「読んだ本しか家にないということは、自分がわかっている世界しかないこと。そんなのつまらない。読んでない本があると、世界は外に広がっている」と仰っているんですが、とても最高な言葉ですよね!

私の積ん読が始まったのは、自分で働くようになってから。特に、書店で働くようになってからだと思う。かつて、悩んだ末に、購入しなかった本があって、やはり、買おうと思った時には、買えなくなっていた。人との出会いと同じように、本も一期一会。その本に、何かインスピレーションを感じたら、迷わず、購入することにした。積ん読本は増えたけど、後悔はない。

と書いて締めた翌日、勤務先で、何か私を呼んでいる本がある!と思ったら、本書に登場する山本貴光さんの新刊『図書館を建てる、図書館で暮らす』(新潮社)だった。文芸棚に一冊差してあっただけなのに、呼ばれるんですよね。不思議。カバーがつるつるで写真が美しく、高級感が漂うこの素敵な本は、膨大な本を収めるための家「森の図書館」作りの本。設計図などの図面もあるし、もちろん、本棚の写真も多数。わくわくが止まらない。

今年も、本との一期一会を大事にして、積ん読本ライフも充実させるぞ!

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精文館書店豊明店 近藤綾子
精文館書店豊明店 近藤綾子
本に囲まれる仕事がしたくて書店勤務。野球好きの阪神ファン。将棋は指すことは出来ないが、観る将&読む将。高校生になった息子のために、ほぼ毎日お弁当を作り、モチベ維持のために、Xに投稿の日々。一日の終わりにビールが欠かせないビール党。現在、学童保育の仕事とダブルワークのため、趣味の書店巡りが出来ないのが悩みのタネ。