『撮ってはいけない家』矢樹純
●今回の書評担当者●精文館書店豊明店 近藤綾子
つい先日まで、暑い暑いと言っていたはずなのに、突然、寒くなったと思ったら、もう、12月。今年も終わるではないか!こわっ!
毎日、テキトーに生きている私でさえ、年末になると、一年間を振り返る。何の本が面白かったっけ?と。だって、本屋大賞の投票が始まるから。毎年、読んでない本がノミネートされて、慌てふためいているので、せめて積読している本を読んでおかねば...と思うのだ。しかし、いつも投票は、締切りギリギリ。来年こそ、このズボラな性格を直したい。
さて、今年は、まず、新人作家さんの本が面白いものが多くて嬉しかった。そして、何といっても、ホラーブーム。『リング』などが流行った以来くらいのブームかな~と思っているが、どうでしょう?また、今年のホラーの特色は、モキュメンタリーと言われるものが大人気。モキュメンタリーとは、映像などで、フィクションをドキュメンタリーのように表現する方法だが、これが書籍になると、装丁自体がノンフィクションと見間違うものもある。そのため、勤務先では、スタッフがノンフィクションの棚に並べてしまい、見つけた私は悲鳴をあげたことも...(ホラーなみの恐怖!)
とにかく、一年中、売り場のメイン販売台で、こんなにホラーものを販売するとは、正直、思わなかった。現在も、雨穴さんの書籍と背筋さんの書籍を中心に大展開中で、今も大人気である。
その背筋さんのコメントが載った帯が巻かれているのは、矢樹純さん『撮ってはいけない家』(講談社)。
映像制作会社のディレクターの杉田は、モキュメンタリーホラーを撮ることになった。「家にまつわる呪い」のロケのため山梨の旧家で撮影を進める中、不可解な出来事が次々と起きる。怪談好きのAD・阿南は、今回の企画と現実の不可解な出来事との共通点に気付く。そんな中、現場で子供の失踪事件が起こる。
ほらほら、ここでもモキュメンタリーが登場!本書では、このモキュメンタリーの撮影中に様々な不可解な出来事が起こる。まず、撮影場所が奥深い集落の蔵がある旧家。旧家と蔵というだけで何かありそうなのに、実際に、恐ろしい因習がある旧家なのだ。この因習がかなりのインパクトがあるのだ。おまけに、過去に、おぞましい事件に関わったこともあるかもしれない...ときたもんだ。不可解な出来事や謎が、怖い上に、次から次へと起こるから、怖くても、休む暇なく読むしかない。こんな感じで、全体的に、ホラー要素が強いけど、ミステリー要素もあり。あの謎が、ここに結びつくのか!とすっきり(多分)。ラストは、ホラー的に、いい感じなので、ぜひ、本書で楽しんで欲しい。
そうそう、読み終わったら、ぜひ、カバーを外してみてね。そこに現れるのは...
モキュメンタリー。なぜ、こんなに、ブームになったのか?世の中の風潮と関連があるのか。私自身もモキュメンタリーが好きだから、とても気になる。調べてみようかと思ったが、私には、目の前に積み上げられた積読本を読まねばならないという使命があるため、断念。
あっ!積読本といえば、いい本があった!という訳で、次回は、積読本についての本を取り上げる予定。
- 『禁忌の子』山口未桜 (2024年11月14日更新)
- 『市川崑と『犬神家の一族』』春日太一 (2024年10月10日更新)
- 『フェイク・マッスル』日野瑛太郎 (2024年9月12日更新)
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- 精文館書店豊明店 近藤綾子
- 本に囲まれる仕事がしたくて書店勤務。野球好きの阪神ファン。将棋は指すことは出来ないが、観る将&読む将。高校生になった息子のために、ほぼ毎日お弁当を作り、モチベ維持のために、Xに投稿の日々。一日の終わりにビールが欠かせないビール党。現在、学童保育の仕事とダブルワークのため、趣味の書店巡りが出来ないのが悩みのタネ。