『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』内田洋子

●今回の書評担当者●山下書店世田谷店 漆原香織

  • モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語 (文春文庫 う 30-3)
  • 『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語 (文春文庫 う 30-3)』
    内田 洋子
    文藝春秋
    935円(税込)
  • 商品を購入する
    Amazon
    HonyaClub
    HMV&BOOKS
    honto

 Ciao!
 今月より皆様に本を紹介させていただく山下書店世田谷店の漆原香織と申します。
 産声を上げてからの年数はかなり経ってますが、書店員人生はまだまだひよっこです。どうぞよろしくお願いします。

 書店員になる前は、海外旅行の添乗員として長く働いておりました。年の仕事の9割くらいがイタリアだったので、気付いたらかなりイタリア好きになっていた私。
 そこで、栄えある第一冊目はこの本をご紹介したい!!
 というか、これしかない。
 内田洋子さんの『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(文春文庫)。

 自店舗に入荷してきた時、その表紙に一目惚れしたことを覚えている。『やだ、何これ。めっちゃかっこいい表紙。っていうか旅する本屋!? なにそれ。え、読みたい。っていうか、イタリアだし、本だし、めっちゃ売りたい』と、心の中は大騒ぎだった。

 さて気になる内容はというと、イタリア在住の内田さんが仕事の資料探しのために訪れたヴェネツィアの古書店の店主との出会いから始まる。痒い所に手が届く選書をする店主の先祖はトスカーナの山奥の村・モンテレッジォ出身の古本売りだったのだ。
 印刷所もない村の稼業が、なぜ古本売りになったのか......、を内田さんが追っていく。本好きにはたまらない内容であるとともに、数多のイタリアの美しい景色の写真。
 読んでいると、まるで内田さんと一緒にイタリア旅行をしているように感じる。

 そして、モンテレッジォの本売りたちの熱さがすごい!
 元々は石を売っていた行商人たちが、空の籠に本を入れて売りながら帰路についたのが始まりだそうだ。
 ちなみに、イタリアは1871年に統一されるまで、都市国家に分かれていた。モンテレッジォの行商人たちはその国境を越えて本を流通させ、〈読むということ〉を広めていった。
 各地を渡り、情報通なモンテレッジォの本売りたちは売れる本を見抜く力をどんどん付けていき、やがて続々と誕生した出版社から絶大な信頼を寄せられるようになっていく。

 あぁ、私も『本を届ける職人』になりたい!
 そして、コロナ前のように気軽に海外にいけるようになったら、ぜひモンテレッジォを訪れたい!!

 ここ『横丁カフェ』では、書店員がそれぞれ選んだ本を紹介させていただいている。気になる一冊ができたら、是非ともネットでその本を注文するより、書店に足を運んでみてほしい。あなたの気になる一冊が店頭にあったら、きっと他にも気になる本が店内にあるはず!

 書店員厳選の本の中からあなたに読んでもらうのを待っている本が宝探しのお宝のように見つかるかもしれません。

« 前のページ | 次のページ »

山下書店世田谷店 漆原香織
山下書店世田谷店 漆原香織
『推し活』という言葉が出来る◯十年前より、推し活人生を送っている人。趣味は読書と旅行(推し活は生き様なので趣味ではない)。旅行好きが高じてここ約10年ほど海外添乗員を生業にしていたが、コロナにより強制終了。山下書店世田谷店に拾っていただき本に埋もれる幸せな日々の現在に至る。文芸書とコミックを担当。