『難問の多い料理店』結城真一郎
●今回の書評担当者●宮脇書店ゆめモール下関店 吉井めぐみ
かつては各飲食店がそれぞれ出前をしていたがそのサービスも少なくなっていた。コロナ禍を経て配達専門のサービスが増え、いろいろなお店の料理を気軽に家で食べられるようになった。
配達員は注文が入るとお店へ向かい、料理を受け取って依頼者へ届ける。でも、もし運ぶものが料理ではなく「謎」だったら──。
舞台は六本木の雑居ビルにあるゴーストレストラン。ここでは特定のメニューを組み合わせて注文すると、それが謎解きの依頼になる。依頼を運ぶのは配達員たち。その依頼を解くのは、超絶美青年のオーナーシェフだ。自分は現場へ行かず、配達員が持ち帰った情報だけで事件を解決していく、まさに安楽椅子探偵である。
物語は配達員の視点で進む連作短編集。それぞれの事件は私にとって本当に難問で、「えっ、そうなるの!?」と何度も驚かされた。最後まで結末はほとんど予想できず、気づけば夢中になって読んでいた。
タイトルには「難問」とあるけれど、読むのが難しいわけではない。デリバリーサービスという身近な題材だからイメージしやすいし、テンポもいいのでどんどん読み進められる。ミステリーが好きな人はもちろん、普段あまり読まない人でも楽しめると思う。
ただ、一つ思ったのは「私はこの配達の仕事はしたくないな」ということ。配達するたびに事件に巻き込まれそうで怖いじゃないですか。読み進めるうちに少しずつ不穏な雰囲気になっていくので、「次は何が起こるんだろう」とハラハラしっぱなしだった。このドキドキ感が、この作品のおもしろいところだと思う。
短編集なので一話ずつ気軽に読めるのもよかった。それぞれ違う謎なのに、読み終わるころにはちゃんと一つの物語としてつながっているのも見事だった。
文庫版には単行本未収録のスピンオフ短編も収録されている。本編とは少し違う視点から物語を楽しめるので、最後まで読んで「もう少し読みたい」と思った人にはうれしい一編だと思う。
読んだあと、街で見かける配達員さんを見て「もしかしたら、この人も難問を運んでいるのかも」と少し想像してしまった。そんなふうに、普段の景色が少し違って見える、おもしろいミステリーだった。
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- 宮脇書店ゆめモール下関店 吉井めぐみ
- 書店員13年目。気付けばミステリーばかり読んでいます。伏線を探すつもりが、だいたい作者にいいように騙される。それでもやめられないのがミステリーの魅力。横溝正史、綾辻行人、有栖川有栖、京極夏彦、町田そのこ、青山美智子、澤村伊智、芦花公園、もっともっと好きな作家さんたくさんです。推しは 谷山紀章 、GRANRODEO SnowMan 。

