アコースティックの音の魅力に惹かれて開いたギターショップ①       【ゲスト:矢沢透さん】

アリスに入ったのは、谷村さんのアルペジオが美しかったから

半田(以下、半):先日はAGATHA(矢沢さんが経営されている串焼き店)にお邪魔いたしまして、いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。お料理もすごく美味しかったです。

矢沢(以下、矢):今日はお酒がないからどういう喋りになるか。

半:(笑) よろしくお願いします。矢沢さんを取材させていただきたいなと思ったのは、ここ、矢沢さんが創業したギターショップ・RiMSHOT(リムショット)に、以前から寄らせていただいていたこともありますし、アリスというバンドがすごく好きだからなんです。特にアリスのお三人の人となりが好きで、そこから紡ぎ出される音楽が好きなんです。

矢:あ、そうなの?

半:僕はリアルタイムではなく後追いでアリスを聴いていたんですが、復活後の2013年の大阪サンケイホールには行かせていただきました。あと、ラジオは聴いてまして。

矢:ヤンタン? 聴いてたの?

半:あれが僕好きで。そこでもほんと奇跡の三人だなというふうに勝手に感じてます。音楽ももちろんですが、トークのアンサンブルが最高だなと。

矢:役割分担が決まってるからね。

半:そうなんですよね。喋っててもハーモニーを感じて、1時間があっという間に感じるんですよね。結構な回数なさっているんですけど、毎度毎度すごく楽しみに聴いてました。そういうこともあるので、今回矢沢さんにお話を聞きたくて。

矢:そうでしたか。

半:ドラマーである矢沢さんが何故ギターショップを始められたのかは他でも語られているかと思うんですが、そこからまずちょっと伺えますか。今日は、RiMSHOTの現在のオーナーである堀内孝太さん(堀内孝雄さんの息子さん)と、立ち上げメンバーでもある田安正典さんにも参加いただいてます。よろしくお願いします。

矢沢さんが創業したRimShotで。左から、半田、矢沢さん、堀内さん、田安さん。

堀内(以下、堀):お店紹介等ではRiMSHOTを始めた理由は「ギターショップで普通、ショーケースに入っていて弾けないようなギターも、いろんな人に弾いてもらえる身近なお店にしたいから」と伝えています。

矢:そうですね。ギターには一つ一つにいろんな歴史があるわけじゃない。でもそれ以上に、レコードなどで聴いていて、やっぱりアコースティックギターはいいなと思ったりするわけです。そもそもアリスに入ったきっかけが、谷村のアルペジオを初めて聴いた時に「なんて美しいんだろう」って思ったことだから。

半:ほお!

矢:どの辺まで詳しく話す? 話そうと思えばいくらでも話せるんですけど。

半:その辺りの初期の話がむしろ聞きたいです。矢沢さんの、アコースティックギターとの接点みたいなところからお願いします。

矢:じゃあ、ギターショップを開くまでをかいつまんで。谷村がいたロック・キャンディーズと僕が入ってたブラウン・ライス、それからジローズ、西岡たかしとかでワールドツアーをしたことがあって、バンクーバー、トロント、メキシコ、ロサンゼルス、ハワイと行ったの。

半:ブラウン・ライスは、別名で「ニュー・シングアウト」という名前もありましたよね?

矢:ブラウン・ライスは、ポール・マッカートニーから日本で唯一曲をもらったグループで、僕は後から加入したんだけど、元々「スタジオ101」に出てた「シングアウト」を改名したバンドでした。ある日、全く知らない人から家に電話がかかってきて「僕はずっと矢沢さんのドラムを聴いていていいなあと思っていました。ブラウン・ライスというバンドが海外に行くにはどうしてもドラムが弱いというので、僕が矢沢さんを薦めたんです。だから、オーディションに行ってください」って言うの。それでオーディションに受かって1週間ぐらい後にはワールドツアー。それで、いろんな事件がありまして、谷村と仲良くなったのはメキシコに着いた頃なんだけど、ハワイまで着いた時に初めてサシで谷村のギターを聴いたの。アルペジオっていうのを間近で初めて聴いて「うわっ、なんて美しいんだろう」と。

半:そうでしたか。それまで矢沢さんはギターミュージックはあまりお聴きになっていなかったんですか?

矢:ほとんどリズムアンドブルースとか。シカゴ、BST(ブラッド・スウェット&ティアーズ?)とか、ロック系ばっかりだった。

半:ギターといえば、どちらかというとエレキの音だった。

矢:そう。アコースティックギターも聴いていたと思うけど、そんな間近で聴いたことがなくて「うわっ、美しい」と思って。それがアリスに入ろうと思ったきっかけですよ、とりあえず。

半:そうでしたか。

矢:それで、アコースティックでやるのもいいかもしれないと思ったんです。そうしたら谷村が「堀内っていうのが大阪にいて。一緒に組んだらいいグループができる」って言うから「じゃあどういう音楽やる?」という話になって。「サンタナとかリッチー・ヘブンスとかみたいな音楽」って言うから、それ、やろうやろうってまあやることになったんですよ。

半:ニューロックですよね。

矢:そう、それでいざ組みました。あ、組む前に谷村と堀内の2人だけでデビューしてたんです。それで「キンちゃん、ついにシングルが出たよ、聴いて」って言うから、大宮でドラムの仕事をやっているお休み時間にレコード屋さんに行って。あの頃レコード屋さんはかけてくれたんですよね。

半:試聴というか。

矢:そう、それで、お店にあったから「すいません。これかけてください」ってお願いして、当然サンタナみたいな音楽が聞こえてくるって思ってたら、「走っておいで恋人よ」って一応やっぱりアルペジオなんだけど......。

半:フォーク然としてますよね。

矢:あれ、女の子が歌ってる?みたいな感じで、もうすっごくがっかりした。何これ?って話(笑)。

半:それまで、堀内さんと谷村さんの二人のアリスの具体的な音源は一切聞いてなかったんですね。

矢:聞いてなかったですね。ロック・キャンディーズはストロークで、「春は静かに通り過ぎてゆく」とかも。

半:ダイナミックな感じでやってましたよね。

矢:そう、最低限、それだろうと。

半:ところが......。

矢:がっかりして、あんまりアリスに興味なくなっちゃって、自分は自分なりにやってたんだけど、約束したし、だんだんと向こうから「もうすぐ呼ぶよ」という電話がかかってくるようになって、1972年の4月25、6日かな、ついに来てくれということになったの。それでコンガを買いに行って。ケースもないから、そのまま抱いて大阪に行きました。

半:はいはいはい! その時が噂の上下トルコブルーの!

矢:あ、それそれ。

半:ですよね。ファッションも谷村さんと堀内さんとちょっと違った。

矢:全然! 東京と大阪だからね。眩しい目をしてました。

半:眩しい目!

田安(以下、田):ロックスター(笑)。

矢:髪の毛を染めてて、トルコブルーの服で真っ白のコンガを2つ持って降り立ったから、多分ベーヤンが一番びっくりしたと思う。一度も会ってなかったし。

半:そうか。それで参加されて、アリスのレパートリーをやっていくわけじゃないですか。やっぱりニューロックとは全然違ったわけですよね。

矢:違うね。

半:お二人のギターによるフォークロックのようなものを、どのように捉えておられたんですか?

矢:最初は気に入らなかったけど、自分でもまあこれでやっていこうと思ってたから、どうやって自分のポジションというかアイデンティティを構築するかという自分の責務みたいなものが一番にあって。でもそれはある程度曲に寄るので、活躍できる曲がないとどうやってもダメなんですよね。だからずっと悩み悩み、いつやめよう、いつやめようって思ってたんです。

半:そうなんですか!

矢:本当に。でもやめても東京に帰るお金もない。もう関西にいたし。1970年当時、僕は10万円以上もらってたんですよ。

半:給料みたいな形で。

矢:ええ。それが谷村に呼ばれて初めてもらった給料が6000円だったんです。

半:お、それは。

矢:当時東京で家賃3万円だったから、まあ帰るって発想がまずなかったですね。

半:帰れないですね......。

矢:それで悶々といろいろやってました。

「愛の光」で見つけた自分のアイデンティティ

矢:「愛の光」って知ってるかな?

半:もちろん、もちろん。

矢:あれが初めて出てきた時に、「これだ!」と思ったの。

半:最初、どういう形でお披露目されたんですか?

矢:広島郵便貯金ホールだったかの楽屋で。いつも曲ができたら生で弾いて披露し合うわけですけど、普通に谷村が「陽溜りを~」ってやってるのを聴いて「あ、これ絶対、こういうイントロをつけて仕掛けもいろいろやって、サンタナみたいにしたら、絶対自分も生きる」と思った。それで、その日にアレンジを全部やりましたね。それから曲のアレンジをやることになって自分も叩けるようになりました。

半:あのイントロのチェンバロのフレーズは確かにラテンですものね。矢沢さんはアレンジされる時、譜面は書かれるんですか?

矢:ほとんど書かないですね。

半:そうですか。「愛の光」が、それまでのアリスのレパートリーとちょっと違って聞こえたのは、どの辺がポイントだったんですかね?

矢:それまでは多分、ストロークで激しくやる曲がなかったんです。「走っておいで恋人よ」「好きじゃないってさ」「さよなら昨日までの悲しい思い出」。

半:確かに。

矢:みんなシャッフルと、どちらかといったら柔らかかった。そこからだんだんと、まあまあいい感じになってきたんけど煮詰まって、3枚目は他の人に書いてもらった曲になりました。

半:1973年発売の都倉俊一さん作曲の「青春時代」ですね。

矢:あれでみんな一応勉強したんでしょう、おそらくね。そこから曲がだんだん変わっていった。

半:僕はリアルタイムじゃなくてアリスを聴いて、あの曲って谷村さんでも作りそうな曲じゃないかと思ったんですよ。わざわざ外注して、谷村さんでも作れそうな曲をなんで書いてもらったんだろうという疑問があったら、先日AGATHAで矢沢さんに、あの曲は自分たちのオリジナルの中で、当時最高位を記録したので、その要素を谷村さんがその後の作品に取り入れた、と伺って納得したんです。

矢:そう、だから、あれからあの手の曲がすごく多いんです。

半:多いんですよ。「帰らざる日々」「それぞれの秋」とかね。

矢:「22歳」だってひょっとしたらそうだよね。

半:あれは確かに近い。詩の世界も近いものがありますよね。

矢:だからああいうことをやって正解だったんだね。

チンペイさんとベーヤンのギターセッティング

半:青木望さんがアレンジされていましたが、アリスのレコーディングでは、「ALICE Ⅰ」からギターに関してはお二人が弾かれているんですか? 当時、割とスタジオミュージシャンでやって本人たちが弾いていることにしているケースが、よくあったじゃないですか。

堀:初期は石川鷹彦さんも入っていないので。基本は2人とも弾いてるはずです。

矢:鷹彦さんは入ってないね。「冬の稲妻」からだもん。  

堀:言ってもアコースティックなので、2人ともそんな難しいことはしてないから。

半:ストロークをオーバーダブしているような感じなんですかね。

堀:堀内は多分ずっと弾いてるはずです。ただ、チンペイさん(谷村さん)はギターで参加すると、詞を直したりするのに参加できなくなっちゃうから。

矢:レコーディングではあまりギターを弾いてるイメージないな。

堀:チンペイさんにとっては、ギターは作曲の道具みたいな雰囲気が強いですね。

半:そうですか。チンペイさんのギターは他に弾ける人はいないギターだと思ってて。音もそうなんですけど、ギターの構え方が結構独特で、真横じゃないですか。あれはどういうものからあのスタイルになったんでしょうか。

矢:田端義夫じゃない?

半:(笑)。やはりリッチー・ヘブンスの影響かなあ。

田:みんな昔は浮かしてやってましたね。

矢:それであの人、直角でそのまんま弾くからよく弦は切れるんだけど、音はでかいんですよ。

チンペイさんの弾き方を再現する矢沢さん

堀:モニターで聴いているとガチャガチャしか言ってないですけど。

一同:(笑)

矢:大昔はそうでもないでしょ。ギブソンのダヴを使っている時は。

堀:まだそこまでのピックアップとかマイクとかない時ですからね。

矢:でもあれだったから迫力があったのかも。

堀:そうですよ。

田:ギターはここで調整していたんですよ。ものすごく弦高が低くて。

半:初期のダヴってブリッジがチューン・オー・マチック(Tune-o-matic)じゃないですか。あれが結構弦高がベタベタに低くセッティングされていたみたいな記事が残ってました。

田:ピックアップもつけているので、あれ自体は実際取っ払って、固定した後ノーマルサドルをつけてます。

堀内さん、谷村さんのギターメンテナンスも務める田安さん

半:堀内さんのギターの弦高はどうだったんですか? チンペイさんに比べて。

堀:結構高めのセッティングですね。

半:70年代ぐらいまでのマーチンって基本の弦高設定が今より高いんですよね。6弦が3ミリぐらい。

田:高いですね。3ミリぐらいが当たり前ですね。昔はそれでミディアムゲージとかを張って、硬いピックを使って弾いてる方が多かったと思います。

堀:パーカッション的なチンペイさんのギターと絡んで矢沢さんのパーカッションがあって。和音を作ってるのは堀内で。他のバンドと全然リズムが違いますからね。

矢:他にいなかったもんね。

堀:チンペイさんって結構他の人と違うことをやるのが好きじゃないですか。見た目もそうだし。めちゃくちゃ意識してるんですよ。僕が10代の時から2人で楽屋で話していても、その時の最先端の若者のブームとかめっちゃ聞いてくるんですよ。

半:そうなんですね。

堀:俺以上に知ってるなこれはと思って。だから当時フォークって言ったら四畳半というイメージとかと全然違いますもんね、アリスは。絶対人と違うことをやろうってめちゃくちゃ意識してたはずですよ。

半:確かに。違うことをやっていたのに、職業作家をつけた時にちょっと四畳半の匂いがしましたよね。なかにし礼さんが作詞の「二十歳の頃」とか。

矢:えー、でも綺麗な四畳半だけどね。ワンルームっていう感じで。

半:ああ、綺麗な(笑)。なかにし礼さんだから、シャンソンみたいな感じですよね。

矢:そう、「青春時代」もすごく綺麗でいい曲ですよ。

半:ノーブルでね、いい曲です。

矢:「神田川」とは全然違う。

半:73年ですから「神田川」と同じ年の発売ですね。前に実はベースがいたんだっていう話を伺いましたけど、アリスのギター2本とリズムというのは、結果として他にない取り合わせになりましたね。

矢:4人だったらまたもっとすごかったかもしれないし。今となってはわからないけどね。

半田が好きなアリスのLPは「3人だけの後楽園 VERY LAST DAY」

半:僕が一番好きなアリスのライブLPは解散時の後楽園球場のスタジアムライブなんです(「3人だけの後楽園 VERY LAST DAY」)。ドラマがあるのも好きな要素なんですけど、本当に純然たる3人のライブというのも好きで。武道館のライブ盤(「栄光への脱出〜武道館ライブ」)はすごく音がいいんです。かっこよくて。でもハマるのはやっぱ3人の後楽園。

矢:あれはね、ハマりますよ。僕が聴いてもやっぱりいいもん。

半:あれLPにして1時間47分あって、頭から聴いてると、映画 1本見た気になるんです。途中、すごい明るいじゃないですか。本当にこの人たち解散するの?みたいに。「ベーヤン(堀内さん)、お尻四角いね」とか言ってたり(笑)。でも最後にやっぱり谷村さんがドラマを作っていく。終わりの「明日への賛歌」を聴いた時にまるで1本の映画を観たような感覚になるんですよね。

矢:僕たちはあの日、もう寒くて寒くて。

半:それは何度かMCでも言ってますよね。

矢:ほんと寒くて。コンガを叩けば痛いし鍵盤をやっても痛いし。その思い出がすごいある。

半:最後は3人だけにしようって言いだしたのは誰の発案なんですか?

矢:それ、誰だと思う? 細川健(当時、アリスが在籍していたヤングジャパングループの社長)じゃないかな。だって僕たちは後楽園球場のバックをいっぱいつけたライブ(1981年8月31日後楽園球場)が最後だと思ってたわけ。終わったら、その矢先にいきなり発表されたのよ。11月7日、3人だけの後楽園っていうのが。だからあれは多分彼が考えたんだと思う。

半:あれが本当の最後で良かったような気します。

矢:聴いても演奏もいい、すごく。

半:いいですよね。皆さん、本当に魂が。もちろん、いつも入ってるんですけど。

矢:いや、あれは入ってますよ、魂。思いっきり。うん。

半:結局のところ、途中いろいろとアレンジに凝った時期を経たけど、一番最初のアリスに戻ったというか。アリスとは何だったのかって考えた時、その後の再結成で2000年以降も続く未来があるので見え方は変わるんですけど、あそこで1回終止符を打ったアリスに、ものすごい潔さとかっこよさを感じます。

堀:3人だからできたことですよね、絶対。

半:やっぱり矢沢さんのピアノも大事ですよね。

堀:もちろんです。

矢:馬鹿にしたな!(笑)

半:違います! 

堀:ボーカリストとしても。

田:それは言っちゃいけないことです(笑)。

半:西宮のライブ盤(西宮市民会館大ホールで収録された「ALICE ファースト・ライヴ!」)の「白い夏」。

矢:え、それ知ってるの?

半:ライブ盤になってます。

矢:僕がなかなか弾かないやつでしょ。

半:そうです。長いMCの後に始めるやつです。

矢:違う、MCの前に何をやってたかわからないけど、みんなが沸いてるやつ。

半:そうです。あれ、なんかトラブルがあったんですか?

矢:いえ、僕は初めてなのに、実は打ち合わせもなしにやることになったから、どうしていいかわからなくて、マイクをこうするだとか、椅子をどうするとか。

半:あ、それこそあの時(1972年11月25日)、矢沢さんはギターを弾かれてますよね。

矢:そう、弾いてた。

半:だからあれは、矢沢さんのアコースティックギターの初音源ですよね。

矢:そうね。

半:あの時にはもうギターも弾けたんですね。

矢:一応、適当に弾けた。コードは凝ってるけどね。

半:そうですね。矢沢さんの曲はメンバーの誰よりもコード進行が難しい。

矢:そう言われるね。わざとやってるんじゃなくて必要なの、やっぱり。

半:そういう作曲なさる時は矢沢さんはギターですか?

矢:ギターですね。「あなたがいるだけで」とかああいうのだったらピアノで作るけど。

アリスファンはアリスが使ったモデルのギターしか欲しくない⁉

半:矢沢さんが初めてギターをお買いになったのはいくつですか?

矢:お買いになったの? 買ったことあったかな(笑)。もらったとか、誰か忘れていってずっとあるとかですね。

半:それはアリスになってからのことですか。

矢:アリス入るまではギターもピアノも弾けなくて。ずっとチンペイさんたちのを見てて、コードだけ教わって、それでフィンガリングとか適当にやってたら段々できてきちゃった。

半:それがギターのいいとこですよね。あと弾ける人がそばにいるとわからなかったらすぐ聞けばいいという。そうですか。それで、ブルース、ニューロック系のエレキサウンドから、アコースティックサウンドの魅力へ目覚めてきたわけですよね。いざギターショップを作ろうとなった時に、エレキギターはほとんどない、こういうアコースティックギター中心の店にしようと思ったのも、やはりアリスで培った音楽の影響ですか?

矢:そうですね。

堀:アリスがアコースティックだからアコースティック専門というのは当然の流れかと。

半:あとやっぱりアリスファンの方は十中八九アコギを欲しがりますよね。

堀:難しいのは、アリスファンはアリスの使ったギターしか欲しくないんです。

半:あ、そうか!

矢:モーリスをやっぱり。

田:そこから派生はあんまりしないんですよね。

矢:でも、あの時は、ファンはみんなお金がないからモーリスを使っていたけど、みんな年を取ってお金ができたから、チンペイさんが使っていたギブソンのサンバーストのダヴだとか、ベーヤンが使ったギブソンのギターを欲しがってちゃんと来てくれますね。

田:アリスが再結成した2000年ぐらいは、ヴィンテージギターも定着して、昔は買えなかったものが買えるようになった頃にちょうど重なったんです。

RiMSHOTは"濃縮された"ヴィンテージギターのラインナップ

矢:RiMSHOTも2000年から始めましたからね。

半:ずっと同じ場所ですか?

田:1年半ぐらいは、神保町の靖国通り沿いビルの3階にあったんです。

矢:あそこの内装は手持ち弁当でみんなで造ったんだけど、ここは大工さんにちゃんと造ってもらいました。

半:楽器が好きなのでいろんな楽器屋を巡りますけど、「いい楽器屋」って実は少ないんですよ。ここはすごくいい楽器屋です!

矢:ここで弾くと割といい音するでしょ。共鳴するらしくて。

堀:コンクリートに敷いているだけの硬い床と、壁はパインというフェンダーのアンプの箱とかに使ってる材を使っているんです。

矢:みんな、どれか試したくなるよね。

半:また状態がいいのを置いてあるじゃないですか。これも印象がいいですよね。

田:調整をこだわってやってます。

半:最初からヴィンテージものを置いていたんですか?

田:置いてましたね。アリス関係にまつわる、さっき言ったギブソンのダヴだとか。

半:堀内さんはいつこのお店に入られたんですか?

堀:僕は1983年生まれなので、アリスの矢沢透に高校生になるまで会ってなかったんです。1999年の再始動の頃に家に帰ってお客さんがいるなと思ったら矢沢さんがいらっしゃって。なんか大人の話をしてるなと思いながら「はじめまして」って言ったら、矢沢さんは制服を着てた僕に「はじめまして。ね、ところでタバコ持ってる?」って言ったんですよ。

一同:(笑)

矢:だから、あなたが持ってそうな顔してたんだよ。

堀:もう今でも忘れない。一言目がそれです。

半:かっこいいですね(笑)。堀内さんは、僕の1歳上ですね。僕84年生まれなんですよ。ほぼ同世代。

堀:そうですか。僕は全然アリスを知らなかったんです。「今度、再始動とともに2000年にギターショップをやるから、高校卒業したらうちでバイトしてね」って言われたんです。それで、卒業してすぐバイトさせてくれって言ったら「じゃあお父さんが『サンキュー!』だから時給は390円ね」とかって。そこから始まるんです。

半:390円! それは労働基準法的に......(笑)。堀内さんはその当時、ギターを弾いてたりしたんですか?

堀:もちろん。中学校ぐらいからギターを始めて、うちの親父のギターを借りたりしていました。

半:お父さんも相当コレクションをおもちですものね。

堀:そうですね、結構ありますね。

矢:ベーヤンって、自分からはあまり言わないんだけど、聞くと結構詳しいよね。

堀:僕からしたら全く浅はかな知識です。

一同:(笑)

堀:あ、でも彼なりのこだわりはめちゃくちゃありますから。

半:僕のイメージだとチンペイさんよりギターにお詳しく、プレイも凝ってるイメージです。

堀:詳しいというか大好きですね。だから家でずっと弾いてるんですよ。

矢:そうでしょ? チンペイさんはギブソンと12弦にしかほぼ興味がなくて、マーチンとかあまり弾かないじゃない。

半:確かにマーチンのイメージはないですね。

田:モーリスも持っていても、やっぱりちょっとギブソンに近いような感じですね。

矢:チンペイさんって手がすごくちっちゃいの。だからあのギブソンじゃないと。60年代のはネックが細いんですよね。

半:なるほど。では堀内さんは学生時代からバイトして、そこが始まりだったんですね。

2026年9月28日 RiMSHOT(リムショット)にて (②につづく)

【ゲストプロフィール】

矢沢透(やざわ・とおる)

1949年、神奈川県生まれ。ドラマー。「キンちゃん」の愛称で親しまれている。

中学2年でドラムを始め、1965年、ジャズトランペット奏者・中野彰氏のバンドボーイに採用され、翌年ジャズ・ドラマーとしてデビュー。1972年3月にシングル「走っておいで恋人よ」でデビューしていた谷村新司氏、堀内孝雄氏に同年5月5日合流して結成されたアリスは、「冬の稲妻」「チャンピオン」等、数多くのビッグヒット曲を世に送り出し、日本を代表するバンドとなる。

活動停止を挟みながらもメンバーを変えることなく2019~20年に全国ツアー「70歳の限りなき挑戦」を行い、2022年11月には活動50年を記念した「ALICE GREAT 50」を開催。23年10月、谷村氏の死去により、これが3人でのラストライブとなる。

アリス活動停止以降、六本木にて串焼き店「AGATHA」、神保町にてギターショップ「RiMSHOT」を経営(2025 年より堀内孝太氏がオーナー)し、実業家としても活躍。

現在は自身のバンド「SORISE(ソライズ)」の活動のほか、渋谷クロスFM「アリス矢沢透のなんでも応援団!」(第1・3・5、隔週木曜日19時~)にレギュラー出演中。

【ご協力いただいたお店]

RiMSHOT(リムショット)(https://www.rim-guitars.com/) ヴィンテージギター専門店

東京都千代田区神田神保町町1-32 Hisaya Bldg 1F/TEL 03-3518-2528/東京メトロ・都営地下鉄神保町駅A5番出口より徒歩3分

営業時間:平日:11:00~20:00、日・祝日:11:00~18:00(※ホームページをご確認ください。)

AGATHA 串焼き店

東京都港区六本木4-12-7 RBビル 6F/TEL 03-3470-2234/東京メトロ・都営地下鉄六本木駅7番出口より徒歩3分

営業時間:月~土:17:30~23:00(L.O. 料理22:00、ドリンク22:30 定休日 日・祝日

※営業時間は変更となる場合がございますので、ご来店前ご確認ください。

【近日開催のイベント】

■矢沢透

・11月21日(土)開演16:30~「17歳のソング・ブック ROUTE 16サーキット アメリカン・ロード・ソングの旅 DRUM TALK in FUSSA」(福生市民会館 つつじホール) 各プレイガイドで発売中

・12月18日 受付:18:00~ 食事:18:30~ ライヴショー:20:00~ 「堀内孝雄 with 矢沢 透 クリスマスディナーショー2026」(ウェスティン都ホテル京都)ウェスティン都ホテル京都オンラインショップ 

■半田健人

・11月14日(土)18:30~「だんだん好きになっていきましょう 」(中延・隣町珈琲)

・11月29日(日)12:00~、12月20日(日)12:00~「仮面ライダー555 ファイズリマインド」vol.30(お茶の水・ワテラスコモンホール)

・12月5日(土)18 :00~ 半田健人トークライブ「半田の会 vol.2」(梅田ラテラル 配信あり)

※詳細は半田健人公式X(@handakento)をご確認ください。