文春社内から"犯人当て"を生中継!?

文=大森望

 ミステリの秋本番ということで、怒濤の新刊ラッシュ。文藝春秋からは、待望の長編2作、乾くるみ『セカンド・ラブ』と麻耶雄嵩『隻眼の少女』が同時発売。それを記念して、「本格ミステリーの調べ」と題するイベントが9月28日午後、文春社内で開かれた。これだけならそう珍しくないが、イベントの模様はニコニコ動画の「ニコニコ生放送」でリアルタイム配信。中継がはじまるなり、「乾くるみって......男だったのか」と衝撃を受ける人も。麻耶雄嵩に対しては「(作中の銘探偵)メルカトルみたいな人かと思ってた」などなど、例によってニコ生らしいコメントが次々に画面を流れる。
 司会は単行本編集担当の荒俣勝利氏。それぞれが自作について質問に答える形式で進行した。『セカンド・ラブ』は、大ヒットした『イニシエーション・ラブ』の続編(姉妹編)だけに、著者としては、読者のハードルが上がりすぎてるんじゃないかと心配らしく、
「偉大な長嶋茂雄の息子の一茂のように見られて、がっかりされるかもしれないんですが、一茂には一茂の良さがあります。ひとりの野球選手として温かく見守ってやって下さい」(笑)
 ちなみに"愛の三部作"の完結編となる『トライアングル・ラブ』は来年刊行予定とか。
 一方、『隻眼の少女』は、1985年の事件を描く第一部と、2003年の事件を描く第二部の2パートで構成。どうしてその年にしたのかと問われて、麻耶雄嵩いわく、
「どっちも阪神タイガースが優勝した年なんです。だから、今年も優勝してくれるとちょうどいいんですけど......」と、期せずしてこちらも野球の話題に。
 トークのあとは、なぜか、京都大学推理小説研究会(綾辻行人、法月綸太郎、我孫子武丸、麻耶雄嵩、清涼院流水らが所属)伝統の犯人当てクイズ。麻耶雄嵩が学生時代につくった犯人当て(「シベリア急行西へ」/講談社文庫『メルカトルと美袋のための殺人』所収)の問題篇ダイジェスト版を〈オール讀物〉の担当編集者、石井一成氏(京大推理研OB)が読み上げ、客席の書店員(および乾くるみ)に真相を推理してもらうアトラクションが実施された。まさか文春社内から犯人当てがニコ生で中継される日が来ようとは......。
 同社編集部では、今後もニコ生を使ったイベント中継を積極的に実施してゆく予定とのこと。作家のトークを動画で見る機会が増えそうだ。

(大森望)

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