【今週はこれを読め! エンタメ編】意外な組み合わせが楽しい!〜ブルボン小林『有名人の愛読書、読んでみました。』

文=高頭佐和子

  • 有名人の愛読書、読んでみました。 (単行本)
  • 『有名人の愛読書、読んでみました。 (単行本)』
    ブルボン小林
    中央公論新社
    1,870円(税込)
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 ブルボン小林氏のコラムの何が好きなのかをひとことでいうと、「目のつけどころ」なんだなと思う。すごく関心があるってわけではないけれどなんとなく気になるような問題を、ブルボンは掘り下げていく。このくらいなんでもないですよ、みたいな文体なんだけど、予想外の深さがあってハッとさせられるのである。

 今回のテーマは「有名人の愛読書」だ。まあ、興味をひかれるネタではある。人気者が薦めてくれると本が売れるしね。思いがけないタイトルや著者名が出てくると、良くも悪くもその人のイメージが変わったりもするし。だけど、そんなに熱心に考えるようなことじゃないのでは? 好きでもない有名人が何を読んでるかなんて、基本的にはどうでもよくないか......と思いつつ読み始めたのだが、意外な方向から読書欲を刺激されて驚いている。

 子供の頃からの愛読書をあげる有名人もいれば、マネージャーに勧められた本を読んでいる人もいる。読書家の有名人もいれば、「活字が苦手」という人も。元総理大臣の石破茂✖️江藤淳・著『一九四六年憲法 その拘束』、気がついたら美容のカリスマになっていたMEGUMI✖️林真理子・著『野心のすすめ』など、イメージや職業に合っている場合ばかりでない。芸能人の格付けをするテレビ番組で毎回大活躍な GACKTの愛読書が、原田宗典・著『スメル男』だったりするのは意外だ。セレブなキャラとコミカルなタイトルの小説との組み合わせが面白いね、くらいのことしか考えなくてもいいと思うのだが、もちろんブルボンはそこで終わらせない。「ウケて、感動した」というシンプルすぎる感想から、「彼独特の美意識」まで話を膨らませてくれるのだ。

 安達祐実✖️小池真理子・著『狂王の庭』という組み合わせも心に残った。ブルボンによるとこの小説は「妹の婚約者と惹かれあってしまう夫人の、甘やかな苦悩と禁断の逢瀬を丹念に描いた長編」なのだそうだ。恋愛小説を愛読書に挙げる有名人は案外少ないらしく、ブルボンはあえてこの本を挙げる安達祐実に昔の女優っぽい「サービス」を感じるという。いやいや、それは考えすぎでは?と思いつつ読んでいくと、妙に納得。確かに、安達祐実が濃厚な心理描写の不倫小説を好きだと聞くと、古風な色っぽさみたいなものが漂ってドキッとしてしまうのかも。「小説の強さに女優が優雅に拮抗しているという不思議な感想」も抱いたというブルボンの言葉も、子役時代から芸能界を生き抜いてきた彼女の人生が重なり、感慨深い。

 ちなみに私も小池真理子ファンなんだけど......、愛読書を聞かれて同じことを答えても「ははは。あの人、スキャンダルが大好きだしね」みたいに思われるだけなんだろうな。回答は一緒でも、紹介する人によって印象は全然違ってくるということを、思いがけず実感してしまった。

 紹介される本は、いわゆる名著や人気のある小説ばかりではない。自己啓発書やタレントエッセイ、実用書もある。一般的なブックガイドではあり得ない幅の広さと、斜め方向からの紹介を楽しめる一冊である。有名人の名前と愛読書の題名が並んだ目次だけでも興味深いので、書店を訪れたときにはぜひチェックしてみていただきたい。

(高頭佐和子)

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