第229回:蛭田亜紗子さん

作家の読書道 第229回:蛭田亜紗子さん

2008年に第7回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞、10年に『自縄自縛の私』(受賞作「自縄自縛の二乗」を改題)を刊行してデビューした蛭田亜紗子さん。現代人の日常を描く一方で、『凜』では大正期、開拓時代の北海道を舞台に過酷な環境を生きる男女を描き、最新作『共謀小説家』では明治期に小説執筆にのめりこんだある夫婦の話を描くなど、幅広い作風で活躍中。では蛭田さんが親しんできた作品とは? リモートでたっぷりおうかがいしました。

その2「自分を出すのが苦手な子供だった」 (2/7)

  • エンディングドレス (ポプラ文庫)
  • 『エンディングドレス (ポプラ文庫)』
    亜紗子, 蛭田
    ポプラ社
    748円(税込)
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――国語の授業は好きでしたか。作文とか。

蛭田:作文の授業は苦手でした。タイトルと自分の名前の後は1、2文字しか書けないままどんどん時計の針が進んでいって、焦って泣き出してしまうような子供でした。

――書くことが浮かばなかった、とか?

蛭田:書くことが恥ずかしかったんです。自分の気持ちを書かされることがすごく嫌でした。頭の中ではいろいろ空想したりはしていましたけれど、それを人に読ませるのが嫌だったんです。

――小学生の頃、「将来の夢」にはどんなことを書いていたのでしょう。

蛭田:作文と同じで、そういうことを書かされるのが本当に嫌で嫌で嫌で。全然思ってもいなかったことを書いたりしていました。

――自分を表に出すことが苦手だったようですね。

蛭田:苦手でした。でも、5年生の時か6年生の時に、詩を書く授業があったんです。その時に、自分のことじゃなければ書けるんだと気づきました。その時書いたのは、昼間の空が夜に変わっていくというような、他愛のない風景についての詩だったんですが、これなら書けるし人に読まれても辛くないと思ったんですよね。

――蛭田さんはTwitterに時々、ご自身が作った洋服の写真を挙げていますよね。ブラウスやコートなどどれもすごく可愛くて。実際に洋裁をモチーフにした『エンディングドレス』という小説も書かれていますし、小さい頃から手を動かすことは好きでしたか。

蛭田:手芸や工作はすごく好きでした。実際に作らなくても、フェルト手芸やキャンドルづくりの本とか、紙粘土の本を眺めながら作ることを想像するのも楽しかったです。

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