第271回:坂崎かおるさん

作家の読書道 第271回:坂崎かおるさん

2020年に短篇「リモート」で第1回かぐやSFコンテスト審査員特別賞を受賞後、数々の公募賞で受賞・入賞。2024年には短篇「ベルを鳴らして」が第77回日本推理作家協会賞短編部門受賞、『海岸通り』で芥川賞ノミネートと、小説のジャンルを越えて高評価され注目される坂崎かおるさん。実に多彩な作品を発表しているこの書き手は、どんな本を読んできたのか? 読書遍歴と執筆遍歴について、お話をおうかがいしました。

その5「2年間の海外生活と就職」 (5/8)

  • 虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-6)
  • 『虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-6)』
    伊藤計劃,redjuice
    早川書房
    792円(税込)
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  • 火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)
  • 『火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)』
    レイ ブラッドベリ,Bradbury,Ray,豊樹, 小笠原
    早川書房
    1,034円(税込)
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  • 華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF フ 16-7)
  • 『華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF フ 16-7)』
    レイ・ブラッドベリ,伊藤典夫
    早川書房
    946円(税込)
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  • 刺青の男〔新装版〕 (ハヤカワ文庫SF)
  • 『刺青の男〔新装版〕 (ハヤカワ文庫SF)』
    レイ ブラッドベリ,Bradbury,Ray,豊樹, 小笠原
    早川書房
    1,188円(税込)
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――卒業後はどうされたのですか。

坂崎:卒業してからは、ボランティアで2年くらいアフリカのほうに行って、ふらふらしていていました。その後就職したんですけれど...。

――それは青年海外協力隊ですか。

坂崎:そうですね。たぶん、本当に、就職したくなくて応募したんだと思います(苦笑)。なにかしないと親がうるさいからと思って応募したら受かったので行った、という感じですね。一発で受かったのではなく、予備枠みたいなところに入ったんです。それで、「ここはどうですか」と言われたのがアフリカだったので、行先は自分で希望したわけではないです。私はその時まで海外に行ったこともなかったですし。そこで子供向けの施設みたいなところで働いていました。

――海外にいる間、日本語の本が恋しくなったりしませんでしたか。

坂崎:そうなんです。でも、先に来て帰国した人たちがドミトリーに本を置いていくので、本棚に日本語の本がたくさんありました。その頃が、たぶん高校時代の次くらいに本を読んでいた時期だと思います。余暇もあったので。
現代作家が多かったですね。真保裕一さんとか、篠田節子さんといったエンタメよりの本が多かった。私は東野圭吾さんとかをずっと読んでいました。

――そして帰国して...。

坂崎:民間の企業でちょっと働いた後に、教育系の仕事に就いて、今も続けています。その間、コロナ禍になるまでは書くことは全然していなかったです。

――読むことはいかがでしたか。

坂崎:帰ってきてからは話題になった本を読むくらいで、あまり読んでいなかったです。やっぱり仕事が忙しかったので。
でも、伊藤計劃さんの『虐殺器官』を読んだことはよく憶えています。これは面白いなと思って他の作品も読もうとしたら、その時はもう亡くなっていたのかな。この先新作が読めないのかと、すごくショックを受けました。

――ようやくSFが出てきました。

坂崎:ああ、挙げていませんでしたね。SFは高校・大学時代にも読んでいたんですよ。結構古いものが好きで、レイ・ブラッドベリとか、ジョージ・オーウェルとか、H・G・ウェルズとか。これぞSFだ、という感じの作品が好きでした。
ブラッドベリの『火星年代記』を読んだ時は、私はあの有名なオチを知らなかったので、「なんてことだ」と思ったし、『華氏451度』も、うわー、なるほどねと思いました。『刺青の男』や『10月はたそがれの国』など、いろいろ読みました。
オーウェルの『1984』は、難しいようでいてすごく面白かった。ウェルズは『タイム・マシン』も面白かったんですけれど、「盲人国」という短篇がよかった。(岩波文庫『タイム・マシン 他九篇』収録)。目が見えない人たちが暮らす国に目が見える青年が行って、楽勝だなと思っていたら、自分のほうが不利になっていくっていう話です。短篇としてすごく出来がいいなと思って何度も読んだ記憶があります。

――海外のエンタメもたくさん読まれていたのですね。

坂崎:あとはスティーヴン・キングですね。最初に読んだのが『スタンド・バイ・ミー』だったのかな。たしか映画を観たのが先です。テレビの「金曜ロードショー」か何かでやっていたんですよね。高校の時にキング好きの友達がいたので、教えてもらったのかもしれません。
『ミザリー』も映画になっていますが、これは小説を先に読んですごく面白かった。『キャリー』とか『シャイニング』も読みました。キングの作品はたくさん映画化されているので映画から入ったものもあったと思います。映画を観て「これは原作を読んでみよう」となることも結構あったので。『2001年宇宙の旅』なんかはまさに、映画がよく分からなかったから小説を読みました。

――映画もお好きですか。

坂崎:好きだと言いたいんですけれど、もっと観ている人がたくさんいるので...。SFにしても、自分はSFが好きだと思いたいんですけれど、「じゃあこれは読んだか」「あれは読んだか」と言われるので、ややハードルが高いです。
昔、NHKのBS2で「衛星映画劇場」というのがあったんですよね。テーマ別にセレクトして放送してくれるんです。「007」のロジャー・ムーア主演の作品だけを放送したり、西部劇縛りとか、監督縛りとか、アカデミー賞縛りとかもありました。ヒッチ・コックの映画はだいたいそれで観ました。「鳥」とか。それが高校生くらいの頃だったのかな。その頃がいちばん映画を観ていたと思います。

  • 10月はたそがれの国【新訳版】 (創元SF文庫)
  • 『10月はたそがれの国【新訳版】 (創元SF文庫)』
    レイ・ブラッドベリ,中村 融
    東京創元社
    1,650円(税込)
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  • 一九八四
  • 『一九八四』
    ジョージ・オーウェル,山形 浩生,つくみず
    講談社
    1,980円(税込)
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  • タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫 赤276-1)
  • 『タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫 赤276-1)』
    H.G. ウエルズ,橋本 槇矩
    岩波書店
    1,155円(税込)
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  • スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)
  • 『スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)』
    スティーヴン・キング,Stephen King,山田 順子
    新潮社
    825円(税込)
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  • ミザリー (文春文庫 キ 2-33)
  • 『ミザリー (文春文庫 キ 2-33)』
    スティーヴン キング,King,Stephen,浩三郎, 矢野
    文藝春秋
    1,089円(税込)
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  • キャリー (新潮文庫)
  • 『キャリー (新潮文庫)』
    スティーヴン キング,King,Stephen,淳, 永井
    新潮社
    781円(税込)
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  • 新装版 シャイニング (上) (文春文庫) (文春文庫 キ 2-31)
  • 『新装版 シャイニング (上) (文春文庫) (文春文庫 キ 2-31)』
    スティーヴン キング,King,Stephen,眞理子, 深町
    文藝春秋
    1,034円(税込)
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  • 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF ク 1-19)
  • 『2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫 SF ク 1-19)』
    アーサー・C. クラーク,Clark,Arthur C.,典夫, 伊藤
    早川書房
    880円(税込)
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