
作家の読書道 第271回:坂崎かおるさん
2020年に短篇「リモート」で第1回かぐやSFコンテスト審査員特別賞を受賞後、数々の公募賞で受賞・入賞。2024年には短篇「ベルを鳴らして」が第77回日本推理作家協会賞短編部門受賞、『海岸通り』で芥川賞ノミネートと、小説のジャンルを越えて高評価され注目される坂崎かおるさん。実に多彩な作品を発表しているこの書き手は、どんな本を読んできたのか? 読書遍歴と執筆遍歴について、お話をおうかがいしました。
その6「創作を再開する」 (6/8)
――また小説を書き始めたのは、コロナ禍に入って少し時間ができたからだそうですね。
坂崎:たまたま、かぐやSFコンテストの募集広告を見かけたんですが、なぜ応募しようとしたか全然憶えていないんです。ただ、応募しやすさはあったと思います。4000字と短いし、原稿をプリントアウトする必要もなく、ネットで応募できたから。
それまで小説は長い間書いていませんでしたが、「これ小説に使えそうだな」ということはいつも考えていたんです。その時に応募した「リモート」(『嘘つき姫』所収)という短篇はロボットの話ですが、あのオチはなんとなくアイデアとして頭の中にありました。それで、かぐやの広告を見た時に書いてみようかなと思ったんじゃないかな...。
――それが2020年に第1回かぐやSFコンテスト審査員特別賞を受賞して。
坂崎:本当になんの気なしに送ったので、最終候補に残るとも思っていなくて、発表があった時にびっくりしました。ここから先には残らないだろうと思いつつ、家族とちょっと話したのを憶えています。
――そこから、いろんな公募の賞に入賞されていきますよね。
坂崎:「リモート」を書いた時は、この先バリバリ応募していこうとは思っていませんでした。でも、それで自分の小説が評価されたということで、今なら書けるかも、とは思いました。次にどこに送ったのかは憶えていないんですけれど、そこから公募の賞などに出し始めたら、意外と残ったりして。もちろん落ちたものもあります。
――応募したのはどれも短篇の賞ですか。
坂崎:そうですね。長いものは書いたことがなかったです。いわゆる五大文学賞は規定枚数がもっと多いですが、自分は長いものを書いたことがないので無理だろうと思っていました。だいたい30枚、50枚で収まる規定枚数の賞を探して応募していくと、結局相性がよいのはウェブ系の公募でした。こんなにウェブ系の公募があるとは全然知らなかったので、私も最初びっくりしたんですけれど。
――その後、出版社からも執筆依頼がくるようになって。
坂崎:依頼が来るようになったのは「電信柱より」(『嘘つき姫』所収)を書いた後くらいかな。
――「電信柱より」は2021年に第3回百合文芸小説コンテストでSFマガジン賞を受賞された短篇ですよね。電信柱に恋をした女性の話です。
坂崎:それもウェブで応募できるし枚数が短かいところがよくて送ったんだと思います。。
これも賞を獲れるとは思っていなかったんですよね。こういうものもある意味評価されるのか、なるほど、と思った記憶があります。