作家の読書道 第284回:石田夏穂さん

2020年に筋トレに励む女性が主人公の『我が友、スミス』で第45回すばる文学賞佳作を受賞しデビューした石田夏穂さん。実はその前は江戸川乱歩賞に応募していたのだとか。そんな石田さんが敬愛する作家は? 読書遍歴も創作についても、意外なお話たっぷりです。

その1「最初の記憶は司馬遼太郎」 (1/8)

  • 梟の城 (新潮文庫)
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  • 『新装版 竜馬がゆく (1) (文春文庫) (文春文庫 し 1-67)』
    司馬 遼太郎
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――いつもいちばん古い読書の記憶からおうかがいしております。

石田:なぜか司馬遼太郎の『梟の城』です。たぶん小学3年生くらいの頃ですね。それまで本を読んでなさすぎて、いちばん古い記憶となるとそれかなと思います。

――なぜ手に取ったのでしょうか。

石田:家に司馬遼太郎の本があったんだと思います。『竜馬がゆく』とか『坂の上の雲』といった有名どころがあって、それで図書館で司馬遼太郎のデビュー作だという『梟の城』を借りたんですよね。読んで中身はよく分かっていなかったけれど、「この人が悪いやつなのか...」とか思っていた気がします。

――おうちにはたくさん本があったのですか。

石田:いえ、みんなが買っているような本があったという感じです。兄弟がいるんですが、弟とも本の話をしたことはないです。
その後も、歴史好きでもないのになぜか図書館で司馬遼太郎を借りて読んでいました。『風神の門』とか。いちばん好きなのは『燃えよ剣』で、土方歳三が偉くなる前の、何者でもなく地元でやんちゃしている前半が好きでした。地元でしょうもなく喧嘩とか夜這いばっかしているところです。

――石田さんは埼玉県のご出身ですよね。図書館にはよく通っていたのですか。

石田:はい。生まれたのは所沢で、あとは浦和や川口にいました。わりと図書館は家の近くにあったので通っていました。
あ、思い出しました。小さい頃、『ルドルフとイッパイアッテナ』を読んで泣きました。あれは素晴らしい作品でした。他にぱっと思い浮かんだのは、学校の図書館にあった『はだしのゲン』とか。あとは『ブラック・ジャック』とか...。

――漫画はお好きでしたか。

石田:「週刊少年ジャンプ」をずっと読んでいました。どっちが先に読むかで弟と殴り合いをして流血騒ぎになるほどジャンプっ子でした。世代的に、『ONE PIECE』とか『NARUTO』とか、『アイシールド21』とかが好きでした。

――毎週買って、コミックスでも買って...という感じだったのですか。

石田:あまり大きな声では言えないんですけれど、私の子供の頃って、「ジャンプ」は買わなくても町を歩いていたらあったんですよ。ゴミ箱にきれいなまま捨てられていたり、電車の網棚に置きっぱなしになっていたりして。「ジャンプ」が何百万部と売れていた黄金期だったと思います。なので、そこまで毎週買う、ということはなかったように思います。

――みんな読み捨てていたということですね。漫画のほかに、アニメやテレビ番組などで好きなものはありましたか。

石田:映画は全然見なかったです。あまりテレビっ子じゃなかったんですけれど、父親が大河ドラマを見る人だったので、一緒に見ていました。今では考えられないですけれど、子どもの頃は感受性豊かだったんで「利家とまつ」を見て泣いたりしました。あ、泣いたのは「功名が辻」だったかも。山之内一豊のやつです。
父親の影響で、時代劇はよく見ていました。時代劇チャンネルみたいなので「剣客商売」とか「遠山の金さん」とか「鬼平犯科帳」とか。時代劇を見ながら、同じネタでいくらでも話が作れるんだな、と思いました。

――最後に必ず桜吹雪の刺青を見せる、とか。

石田:そうです。ああいうの、面白いですよね。いつも同じ展開なのに見入ってしまう。

――振り返ってみて、どういう小学生だったと思いますか。大人しかったのか、活発だったのか...。

石田:結構ニヒルだったと思います。小さい頃のお遊戯とかも、すっごくしらけた気分でやってました。でも表面上はいい子ちゃんだったと思います。内弁慶でした。

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