作家の読書道 第284回:石田夏穂さん
2020年に筋トレに励む女性が主人公の『我が友、スミス』で第45回すばる文学賞佳作を受賞しデビューした石田夏穂さん。実はその前は江戸川乱歩賞に応募していたのだとか。そんな石田さんが敬愛する作家は? 読書遍歴も創作についても、意外なお話たっぷりです。
その3「国語の授業が嫌いだった」 (3/8)
――国語の授業は好きでしたか。
石田:好きじゃなかったです。高校の教科書に載っていた作品は全部嫌いでしたね。夏目漱石の『こころ』とか、森鴎外の『舞姫』とか。なにが面白いんだろう、みたいな。
含みを持たせる書き方があんまり好きじゃなくて。授業で、たとえば「Kはなぜお嬢さんを~」とか考察させるじゃないですか。そんなの、夏目漱石がわかりやすく書けばいいことじゃん、と思っちゃうんです。もちろんそういうつもりじゃないのは分かっているんですけれど、わざともったいぶって、「みんな、考えな」みたいな書き方をしているように思えるんですよね。なんでそんなの答えなきゃいけないんだろう、って。ちゃんと明快に書いてある世界観が好きですね。だから新本格的なものが好きなんだと思います。
高校は女子高だったんですけれど、『舞姫』なんてみんな大嫌いで。「なんであれが教科書に載ってるんだろうね」って言い合ってました。教えてる先生もなんか嫌そうで(笑)。なんというか、女の人のほうも悪いのでしょうが、相手を妊娠させたことを変に美談っちゅーか武勇伝みたいにして、悩める超絶エリートの頭いい俺ちゃん可哀想...みたいな。なんなんだよ、読ますなよこんなの、っていう。もちろん今とは時代や価値観が違うのはわかりますが、ここから何を学ぶのかさっぱりわかりませんでした。
――他の近代の作家はどんなふうに読まれたのか気になります。太宰治とか。
石田:『走れメロス』は教科書に載っていましたよね。説教くさい話があんまり好きじゃなかったかもしれません。課題図書の純文学系は本当に嫌いで、谷崎潤一郎の『春琴抄』とかも、なんでこんなムラムラしているおっさんの話を読まなきゃいけないんだって、怒りをおぼえていました。なんかすごく嫌でしたね。下半身の話ばかりしていて。
そう思うと、やっぱり新本格はいいですよね。必ずしもそうじゃないですけれど、結構推理小説の登場人物って、理知的でドロドロしていないというか。ムラムラ、ウジウジ、グジグジしていないところがすごく好きです。
――作文や読書感想文など、文章を書くことは興味なかったですか。
石田:高校の時は全然、興味なかったんですよ。国語は本当に嫌いでした。古文なんか一個もおぼえてないです。なんかいろいろおぼえなきゃいけないじゃないですか。こういうのをおぼえなきゃいけなかったのが嫌だったといま言いたいのに何も出てこないレベルで一個もおぼえていないんですけれど。
――石田さんは東京工業大学に進学されていますが、理数系は好きだったんですか。
石田:そうですね。ちゃんと答えのあるものが好きでした。
――得意でもあったのですか。
石田:そっちのほうが点数がよかったです。国語の点数が悪すぎて。




