作家の読書道 第284回:石田夏穂さん
2020年に筋トレに励む女性が主人公の『我が友、スミス』で第45回すばる文学賞佳作を受賞しデビューした石田夏穂さん。実はその前は江戸川乱歩賞に応募していたのだとか。そんな石田さんが敬愛する作家は? 読書遍歴も創作についても、意外なお話たっぷりです。
その5「髙村薫作品に出合う」 (5/8)
――お母さんもミステリがお好きだったんですか。
石田:母はそんなに読書好きというわけではないんですけれど、それなのに『マークスの山』が家にありました。前に担当者さんにこの話をしたら、「当時はスーパーで白菜を買うようにみんなが『マークスの山』を買っていたんですよ」って言ってました。「もうみんな『マークスの山』だったんですよ」って。
自分も読んで本当に好きになり、髙村さんの作品は全部読みました。『冷血』や『レディ・ジョーカー』や『わが手に拳銃を』とか。いちばん好きなのは『黄金を抱いて翔べ』というデビュー作です。
――『マークスの山』などは合田刑事シリーズで警察小説ともいえますけれど、『黄金を抱いて翔べ』は犯罪小説ですよね。
石田:そうですね。合田シリーズも好きなんですけれど、どちらかというと犯人目線のものが好きです。合田刑事って、なんかいい子ちゃんなんですよ。ちゃんと生きてこられてきた人というか。東大卒でヴァイオリン弾けて、頭が良すぎて考えちゃう、みたいな。
――あの、好きなんですよね?
石田:はい、すごく好きです。『黄金を抱いて翔べ』はもう、名もなきやつらの話で、イライラしててなんか悪いことしたい、みたいな。そういう、よろしくない人のほうが読んでいていいんです。なんかすごく、犯罪者目線の薫が好きです。
髙村薫さんと同時期に、五條瑛さんのスパイものも読みました。たぶん髙村薫さんが好きな人は五條瑛さんも読め、みたいな流れがあった気がします。五條作品も全部好きですけれど、『プラチナ・ビーズ』などの鉱物シリーズが特に好きです。
――ノンフィクションは読みましたか。
石田:科学系のノンフィクションはすごく好きでした。宇宙の起源は何かとか、ビッグバンとは何かといった宇宙系の本とか。あとはフェルマーの最終定理などの数学系が好きでした。でも、ひとつもおぼえていません。分かってないんですけれど、分かった気になるのが好きでした。
――映画はあまり観なかったのですか。
石田:観なかったですね。私、あまり映画が好きじゃないんですよね。美男美女しか出てこないから、現実感がなくて。時代劇を見ている時も、なんで寝起きなのにこんなに化粧ばっちりなのかなって、そこは目を瞑るべきなのに思っちゃうほうでした。
そのへんの嘘くささがないから、文章が好きなのかもしれないですね。と、今話しながら思いました。





