作家の読書道 第284回:石田夏穂さん
2020年に筋トレに励む女性が主人公の『我が友、スミス』で第45回すばる文学賞佳作を受賞しデビューした石田夏穂さん。実はその前は江戸川乱歩賞に応募していたのだとか。そんな石田さんが敬愛する作家は? 読書遍歴も創作についても、意外なお話たっぷりです。
その4「バイトと海外ミステリ」 (4/8)
――大学の進学先はどのように決めたのですか。
石田:嘘でもなにか理由を言えよって感じなんですけれど、本当にやりたいことも勉強したいこともなくて、行けそうなところにしました。
入ったのは工学部で、建築学科でした。建築学科っていうとおしゃれな感じがしますが、全然そんなことなくて。ずっとコンクリートを作って壊して、それで終わりました。なんかほんと、地味な大学生でした。
――なにかサークルには入らなかったのですか。
石田:ずっとバイトしてました。家庭教師とか、塾の先生とか。コーヒー屋のバイトでは、朝型なので朝番を頑張ってました。ティッシュ配りもやりましたし、郵便局でも働いたし、レジ打ちもやりました。なんか節操ないですね。これだけやってたってことは、ひとつひとつが長く続かなかったということかもしれません。ほんとしょうがないですね。
――家庭教師や塾の先生の時、教えるのは上手でしたか。
石田:ド下手でした。生徒さんが「分からない」と言っても、「え、なんで分からないの?」みたいな...。完全に寄り添えない型の先生でした。
――バイトのないお休みの日は何をしていたのでしょう。
石田:本当につまらない人間なんですけれど、暇があったら働きたかったですね。なんか、お金を稼げるのが楽しくて。私の頃は時給900円とかだったんですけれど、「1時間働いたら900円ももらえるの?(嬉)」みたいな感じでした。貯めたお金でなにをしたんだろう...。たまに旅行をしていたかもしれないです。
――どのあたりを?
石田:当時は若くて、海外が好きでした。といっても、台湾とか香港とか。
――読書生活はいかがでしたか。
石田:大学進学前後に、海外の推理小説を読むようになりました。ベタなんですけれど、エラリー・クイーンの『Xの悲劇』とか。あとこれもベタですけれど、アガサ・クリスティーとか。全部は読んでいなくて、有名なところだけです。『ナイルに死す』とか『アクロイド殺し』とか。ヴァン・ダインとかも読みました。
――海外ミステリを読むようになったきっかけって何かあったのですか。
石田:有栖川有栖さんはたぶん、エラリー・クイーンがすごくお好きですよね。クイーンの国名シリーズにちなんだシリーズを書かれていますよね。たぶん、その流れで読み始めたんだと思います。
すごく好きになったのはルース・レンデルで、いちばん好きなのはパトリシア・ハイスミスです。パトリシア・ハイスミスは『太陽がいっぱい』が有名だし、ミステリの巨匠みたいに言われていたので読んだんだと思います。図書館にあったのかな。当時は海外の推理小説を読んでいる自分チョー格好いいぜ、と思いながら読んでいました。
――それぞれ好きな作品を教えてください。
石田:ルース・レンデルはたぶんいちばん有名な『ロウフィールド館の惨劇』、あれがすごく好きでした。ゾクゾクしました。パトリシア・ハイスミスはみんなそうだと思いますが、『見知らぬ乗客』とリプリーシリーズ。やっぱり『太陽がいっぱい』がいいなと思いました。でも、全部好きです。自分は悪いやつが好きだなと思いました。現実世界では嫌なんですけれど、小説の世界では、道徳的じゃない人が、なんかいいんですよね。嘘くさくないというか。
あ、あと、サラ・ウォーターズもすごく好きです。
――『半身』とか?
石田:『半身』もすごく好きですし、『荊の城』がザ・推理小説という感じのドーンとくる話で、すごく好きです。
それと、大学生の時、家に母が買った髙村薫さんの『マークスの山』があったんですよね。それを読んで好きになりました。







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