第1回 博水社に、サワーの秘密を聞きにいく

2.ジンフィズがヒントになった「ハイサワー」

 苦戦を強いられていた1977(昭和52)年当時、田中専一・現会長が跡継ぎとして社長に就任。その頃研究に取り組んでいたのは、ホッピーのような、ビール風の焼酎割り飲料でした。田中会長の回想によると、

「25-6歳のときに親が急死して、やむを得ず私があとを継ぎました。ラムネやカキ氷シロップ、ジュースは、夏しか売れません。そこで年間を通して商いができる、お酒がらみの商品開発として、ホッピーをひとつの目標にしました」。

 よく知られているように、ホッピーはホップを原料とし、途中まではビールと同様の製法で作られています。すなわち、ドイツ産のアロマホップ、ビール醸造用二条大麦、そして同じくドイツの酵母銀行から酵母を調達した、本格的な製品です。

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(左)ハイサワーレモン
(右)ハイサワーライム

 酵母を使ってもろみを作るには、酒税法上の免許が必要ですが、酒造(ビール)会社とのすみ分けにより、清涼飲料メーカーはこの免許を取得することができません。ホッピービバレッジ(旧・コクカ飲料株式会社)はきわめて特別な会社だといえます。

 一方、博水社にあるのはラムネやサイダーのノウハウだけ。酒造免許も発酵設備もなく、ビール風のフレーバー炭酸飲料に賭けることになりました。

「原料のサンプルを集めて、仕事の合間に時間をみつけながら、夜中まで研究したんですが、生ビールを思わせるホップの泡の、満足のいく試作品ができるまで6年もかかりました。その間にホップを仕入れるつもりでいた原料の会社が廃業し、入手できなくなってしまってね。がっかりしました。また一からやり直しか、と。なんでビール風のものだけに夢中になっちゃったんだろう。そこで発想を転換しました。もうビール風はやめちゃえ、と」。

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(左)ハイサワーうめ
(右)ハイサワー青りんご

 逆境がバネになって、チャンスが開けたのです。

「ビールだけがお酒じゃない。そう思ってカクテル、中でもジンフィズに目をつけました。でも、当時はジンが普通の居酒屋にはなかった。焼酎ならある。そこで焼酎で作るカクテルを考えました」。

 ハイサワーの原材料表示を見ると、レモンと水飴が入った炭酸ガス入り飲料と書いてあります。少しの砂糖(もしくはガムシロップ)とレモンジュースとソーダで作るジンフィズのレシピが、ハイサワー開発の基となっているのです。

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