1月9日(水)
なかなかうまく営業できないお店があった。本はしっかり売ってくれているけれど、担当者とうまく噛み合わないというか、どう話を持っていったら良いのか見当がつかない。いつも部数をもらってそれだけでしずしずと帰路に就いていた。もちろん、ただ無駄話をしたいわけではない。本を作る側と売る側の間で、良好な人間関係を作りたいのだ。そのためなら僕は苦言だろうが、小言だろうがいくらでも素直に聞くし、それを編集部に持ち帰るのも僕の仕事だと考えている。
しかしとある書店さんでそれができず歯がゆい想いをしていた。すでにその書店員さんに出会って数年以上過ぎていて、その方はかなり出来る人なのでノウハウも聞いてみたいし、いろいろと教わりたいことが山のようにあった。
営業マンも書店員も人である。好き嫌いの好みは少なからずあるわけで、きっと僕の何かが嫌いなんだろうと考えていた。そう、やっぱり噛み合わないこともある。でもそんなことであきらめたくないとしつこく毎月訪問し、ものの数分でお店から出てくることの繰り返しだった。
-------------------
何がきっかけだったのか、そのお店を出た後、しばらく考えていたが何も思いつかない。特別変わったことをしたわけでもないし、今日に限って違うところなんて何もない。でも、とにかく今日やっとうまく話せたのだ。かなり長い間会話を交わし、そしていくつも興味深い話を伺えた。
こんな日はどうしたら良いんだろうか、と駅へ向かう道を歩きながら考えていた。ドラマや映画だったらきっと主人公は叫んでいただろうし、時間が時間ならそのままどこかの飲み屋に入ってひとり祝杯を上げていただろう。
しかし現実にそんなことができる状況ではなく、僕はただただ、じっと喜びを噛みしめていた。それでも自然と笑みがこぼれてきて、それだけは止めることができなかった。