WEB本の雑誌

2月5日(火)

 午前中、近場の都内を営業し、午後から遠いルートへ移動しようと考えていた。ところがのんきに昼飯を済ませ、駅で切符を購入しようとしたところ、なんと1000円しか財布に入ってないことに気づく。そういえばここ数週間、交通費や交際費の精算をまったくしていなかった。ああ…。もし何も考えずに営業先に向かって780円の切符を購入していたら、そこから帰れなくなってしまうところだった。アブナイ、アブナイ。急遽、1000円でも廻れるルートに変更。

 さて、昨日訪問した新橋のS書店。店長のNさんに挨拶をすると開口一番こんな話をされる。

「今ね、すごい想っていることがあるんだ。それは、もう一度、本屋で働きだしたときのあの気持ちを思い出したいってことなんだ。僕は、就職が決まって、働き出すまで少し時間があったんだけど、その間に書店業界について書かれた本を読みあさって、その後、何軒もの本屋さんを廻って独自に研究してみたりしたんだよね。そのときのその気持ちをもう一度思い出して、がむしゃらに本屋をやっていきたいんだ! 新しいことにもどんどん挑戦して活気のあるお店にしたい。」

 Nさんはすでに50歳を越えたベテラン店長さんである。その人からこんな言葉がでてくるなんて…と僕は思わず涙ぐんでしまった。そして、Nさんに負けないように…とも思った。

 僕は営業マンになって多くの人々と出会うことになった。それまで「大人ななんてバカばっかりだ」と青年期にありがちな思い込みを持っていて、どこか斜めに構えて大人と接していた。ところが、現実に仕事を介してあう大人達はそんなことがなく、僕と同じように、いやそれ以上にもがき苦しみ、そして楽しみ、誇りを持って、日々の生活を送っていた。それこそ、見ならうべきこと、教わるべきことが山のように転がっていた。営業マンになって一番良かったなと思うのは、このNさんのような真摯な言葉を聞けたときである。

 ちなみにこのNさんは、この日記の一番最初に書いた、あの閉店作業をしているところに僕がばったり訪問してしまったB書店のN店長さんと同一人物である。覚えている人がいてくれたら、とてもうれしい。そして、あの時から今までの顛末はいつかまた書きたいと思っている。