4月10日(水)
『本の雑誌』5月号の搬入日。今月は特大号でページ増のため、通常よりも結束が重い。しかし、道が混んでいたのか、製本所からの到着が遅くなり、そのお陰でいつもは納品後に出社してくる浜本と松村にも手伝わせることが出来た。そうだ、自分で作った本は自分で運ぶべきなのだ。1冊の重みを知ることは編集者にとって大事なことだろうと脇で眺めていたところ、「杉江!手を抜くな!」と怒られる始末。ああ。
受け入れを終え、一息つく間もなく、僕は御茶ノ水・茗渓堂さんへ直納。中央線に揺られながら、出来たばかりの本の雑誌を読む。いちおうゲラの段階で読んでいるのだが、それはほとんど流し読みにして、イチ読者どしてちゃんと製本されてからしっかり読むようにしているのだ。すると「発作的座談会スペシャル 最強のおかずはこれだ!」の稿で、思わず吹き出してしまった。初めはどうにか肩をガクガクする程度で我慢できていたのだが、木村晋介氏が妙に椎名にからむところで、もう我慢の限界と大爆笑。やっぱりこれは電車のなかで読んではいけないものだった。
営業で廻っていてよく聞かれるのがこの発作的座談会のこと。「あれって本当は編集部の方で作っているんでしょ? まさか沢野さんってあんなとぼけたこと言いませんよね?」と言った真実への問い合わせなのだ。あのバカバカしさに思わずそんな疑問を持ってしまわれるその気持ちはよくわかる。僕もかつてはそんな風に考えていたのだ。
ところがところが、僕もこの発作的座談会の収録に立ち会うようになり、正真正銘あのバカバカしさの対談を、目の前で繰り広げられているのを見て唖然としてしまったのだ。まったく「作り」などなく、もし「作り」というならば、あまりにバカバカし過ぎて、世間様の手前4人が本当のバカだと思われるのがかわいそうで、そこをカットするくらいだ。「本当にあんな会話をしているんですよ、困っちゃいますよね」といつもそんな風に答えている。
なぜ困るのか? 読者のみなさんはただ単に著者としてこの4人を見ているであろうが、実は僕にとってはみんな会社の上司であり、取締役や顧問なのである。僕はいつもいつも立ち会いの最初のうち一緒になって笑っているけれど、段々その顔が引きつりだし、最後には不安と絶望のどん底落ち込む。こんな会社にいていいのかと。
みなさんも会社の上司が、例えば仕事の後の一杯で「おかずは何が一番最強か?」や「ストーブとコタツはどっちがエライか?」なんてことを本気で話あっていたら、その会社にいることに不安を持つのではないだろうか? 僕は『沢野字の謎』の収録にはすべて立ち会っていたのだが、「匿名手帳よーし」と「階段のあかりをつけたら妻がいた」で大騒ぎしている4人の陰で、絶対辞表を書こうと考えていた。
しかし、そう言いながらも何かツライことがあったら、『本の雑誌風雲録』か『発作的座談会』を読むようにしているのも事実。結局、同じ穴の狢ということなのだろうか? 何だか本の雑誌社にいるとどんどん自分が壊れていくようで恐い。