WEB本の雑誌

4月11日(木)

 横浜のM書店Yさんを訪れたら開口一番「3月末は杉江さんの日記どおり、新刊がすごかったわぁ~」と言われる。そりゃ、あの取次店さんでの仕入窓口の列なら、大変だったことでしょうと笑ったら、とても笑える状況ではなかったらしい。Yさん、朝7時から出社して、夜は11時まで、延々1週間休みなく働き続けたとのこと。それでもすべての仕事を消化することができず、今になってやっと一息ついたと話していた。

「もう絶対、わたしは本に殺される」とキレた頭で考えつつ新刊を並べていたらしい。いやはや、本当にいい加減この悪しき習慣について、出版社は考えた方がいいんじゃないか。たぶんあの3月末、大量に書店さんへ送られた本は、今頃半分近くは返品として出版社へ向かっているのだ。そこには返品率という数字しか出てこないけれど、Yさんのような日本中全書店員さんの大変な手間と輸送コストがかかっているのだ。これはかなりのロスだと思う。

 この業界の不思議なところは、誰も売れると思っていない物が世に出てくるということで、いったいこんな商売は他にあるのだろうか? 原価計算も何もなく、闇雲に本が出版されているような気がしてならない。それが出版文化といわれるものなのだろうか。正直言って、営業の僕にはよくわからない。

 ただ難しいのは、誰も売れると思っていない本が突然売れたりするところにあって、その夢をつい追いかけてしまいどんどん本を出してみるという発想になっているような気がするのだ。まるで宝くじを買うような気持ちで…。しかし現実に宝くじだけで生活している人がいないように、やっぱりそれでは成り立たないものだろう。

 Yさんが最後に付け足した言葉が心に残る。
「本が売れない、売れないって言うけれど、なんかこんなことをやっている出版業界が売れないようにしているような気がするんだけど」

 確かにそんな気が僕もしている。