WEB本の雑誌

4月23日(火)

 昨日銀座のA書店を訪問したら、ちょっと変わった本がベスト10入りしていて、ビックリ。早速担当のOさんに話を伺うと
「ああ、あれね。今、日本語の本が売れているんでそれに絡めてフェアで積んでいるのよ。それが動きが良くてね」と話す。

 それにしても、奥付を確認したら発行は昨年の7月だ。すでに半年以上が過ぎていて、それが今改めてベストに入る勢いで売れるということは、Oさんの目のつけどころが良かったとしか言いようがない。確かにその本、今の流れなら売れる…と思わされる内容なのだ。うーん、ここに既刊書をドーンと持ってくるあたりは、さすがだ。

 そして今日、新宿の紀伊國屋書店南店を訪問したところ、かなりのスペースを使って「75周年記念 書店員が選んだ本」というフェアを行っていた。既刊、新刊、売れ行きに関係なく、「泣ける」「笑える」「戦う」「知る」などカテゴリーを分け、それぞれ担当者が読んで面白かった本を手書きのポップ付きで並べているのだ。これは素晴らしいフェアだと仕事を忘れ、じっくり見入ってしまう。

 最近、営業をしながら感じているのは、これから書店員さんの力がどんどん売場で発揮される時代になるのではないかということ。これだけ本が溢れ、読者が何を読んで良いのかわからないといった状況で、じゃあ、誰が本を推薦するのかと言ったら、一番お客さんと身近に接する書店員さんになるのではないか。

 新聞書評も『本の雑誌』も、それ自体を読まない人には意味がない。結局、何か読みたいけれど何を読もうと思いつつ書店さんを訪れるお客さんにとって、書店員さんの言葉や平台の並べ方は絶大な効果を見せるだろう。

 何だかこの出版不況で、何でも売れる時代から、何を売りたいのか問われる時代となり、だからこそ面白い状況になっていくような気がしてならない。

 そして出版社は、そんな書店員さんのアンテナに引っかかり、読みたい、読んで面白かった、だからこれを売りたいと思わせる本を作っていかなければならないだろうと考えている。

 本屋さんに対して、ある種あきらめを感じている読者の方も多いかもしれない。けれど、みなさんのマイナスな印象を覆すほど、今、現場にいる書店員さん達は、本を愛し、そして売ることに幸せを感じ、今よりもっと良いお店にしよう奮闘している。

 なかなか見えて来ないことだけれど、僕は現実に多くの書店を廻り、書店員さんと話し、そのことを実感している。こんなにやる気のある人達が多い業界は、もしかすると他にないんじゃないかと思うほどだ。僕はその端っこで仕事ができることを誇りにしている。