4月24日(水)
5月20日搬入の新刊『弟の家には本棚がない』吉野朔実著の営業のため、日頃はお伺いしていないコミック売場に顔を出している。初対面のため名刺交換から始まる営業は、僕のような人見知りの営業マンにとってはちょっと緊張させられる瞬間だけれど、そこでしっかり話ができるといつも以上に満足感を得られる。
元を正せば前著『お母さんは「赤毛のアン」が大好き』の営業活動中渋谷のP書店のYさんに言われたことが引き金でコミック売場を廻るようになったのだ。
「杉江くんのところは商売っけがないよね…というか、なさ過ぎるよ。だって吉野さんの作品だったらもちろんこの内容的には文芸書で売れるけど、やっぱりマンガ畑の作家でしょう。だったらコミック売場にも持って行かなきゃ。担当だって全部見られるわけじゃないから、特に本の雑誌社みたいにコミックを出していないところから出てくると抜け落ちちゃうんだよ。お客さんも探すだろうけど、コミック売場になければ帰っていく人もいると思うんだよね。もったいないよ。」
たしかにそうなのだ。本の雑誌社は異様に商売っけがない。たぶんYさんの言葉を目黒や浜本に聞かせたら「えー、コミック売場に置いてくれる?! だってうちの本だよ」なんて根本的に自信のないような言葉を吐かれるのだろう。いや、そもそも同じ本をいろんな売場に置こうという発想自体浮かばない可能性が高い。
その深い意味でのポリシーは、椎名や目黒を見ていて何となく僕にもわかる。しかし営業としては何だか物足りないし、そこまで遠慮しなくても書店さんが置こうと言ってくれるなら置いた方がいいし、それはお客さんにとっても非常に良いことなんじゃないかと思う。
Yさんの言葉を受け止め、今回、時間の許す限りコミックコーナーに足を向けている。寡作な吉野さんの作品は非常に喜ばれるし、何人もの人に「わたし前の2冊買ってますよ」と声をかけられた。こうなると「商売っけを出す」というより、そもそも営業の方向性を間違っていたような気もしてくる。うーん、今まで僕は何をしていたんだ?