5月28日(火)
ただいま社内で筋トレが流行っている。午後3時になるとチャイムが鳴り響き、各自床に散らばった書類などを片づけ、自分のスペースを作り、編集長の号令の元「イチ、ニ、サン…」と腕立て伏せを開始する。
……というのはまったくのウソだけど、各自家で鍛えているのは本当の話。それぞれ昨日やった腕立て、腹筋、スクワットの数を自慢するのが毎朝の日課になっているほどだ。
苦労の多い単行本編集の金子は、ロックバンドを結成していたそのボーカルとしてステージに立つ。ある日、月1で行っている自分のライブをビデオ撮影してみたところ、あまりに貧弱でカッコ悪いことに気づき、それ以来筋トレに目覚めた。「オレのバンドはビジュアル系なんだよ」とのことだが、誰も言われるまでそのことに気づかなかった。
続けて始めていたのは事務の浜田。彼女は日本中の女性の8割が患っていると言われる「今より5キロ痩せたい病」に取り憑かれ、いきなり筋トレにプラスして自転車通勤を始めたほどだ。おまけに三十路を前にして本人曰く「これからは重力との戦いなの、キィーーーー」と腕立て伏せに要点を置いているらしい。
さて僕はというと、もちろん06年ドイツW杯を目指してのこと。僕のプレーで一番不足しているのは、間違いなくフィジカルの強さ。我がチーム「吉田屋レッドアダマス」で、FWをやっているのだが、どうもチビなだけにゴール前のポジション取りで突き飛ばされてしまうことが多いのだ。これを克服せずには絶対代表に呼ばれないだろうと、今まで大嫌いだった筋トレに着手。
毎晩、「ホッヘ、ホッヘ」と情けない声を吐き出しながら、腕立て、腹筋、スクワット、背筋と1時間のトレーニング。その後は外に飛び出し、45分のランニングと20mダッシュ20本をするのが日課になりつつある。さすがに真っ暗なのでボールが蹴れないのは残念無念。仕方なく家の中でテニスボールを蹴飛ばしイメージトレーニングをしているが、これは家庭での評判が非常に悪い。
そりゃ、いきなり僕の頭のなかだけはW杯決勝のゴールシーンになっていて、思いきりテニスボールを壁に蹴りつけりゃあ、怒られに決まってる。おまけに跳ね返ったボールが1歳の娘の頭をかすめたときたら……。いやはや日本代表までの道のりは恐ろしく遠い。
ここまで書いていて気づいたのだが、数十年に渡って筋トレをやり続けている椎名を除けば、我が社で一番最初に筋トレをやり始めたのは発行人浜本だったのだ。確か三角窓口で腹筋が一度も出来なかったことを告白し、通販で売られているタイヤの付いた変なマシーンを買い込んだとか。あれからすでに数ヶ月。
「浜本さん、ところで、腹筋何回できるようになったんですか?」
「……。」
「いや、だからあの何とかマシーンは今使っているんですか?」
「……、もうどこにあるかわかんねぇんだよ」
いやはや情けない三日坊主がいたもんだ。まあ、そもそも僕たちと違って動機が不純だから仕方ないか。