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6月5日(水) 炎のサッカー日誌 ワールドカップ篇 その1

 奇跡が起きた。奇跡が起きた。夢のような奇跡が起きた。

 昨日の日記を更新し、家に帰ろうかと思ったが、何だかどうせテレビで見るならどこで見ても一緒だと考え直し、半ばヤケクソ気味に営業をこなしていたのだ。

 夕刻5時、笹塚駅に戻り、会社のテレビが映るのか確認しようと電話を入れたところ、なんと、僕の手元にワールドカップ日本対ベルギーのチケットが舞い降りて来たのだ。それもこれも事務の浜田のおかげ。なんだかまともに聞いていなかったのだが、彼女の友人に急な仕事が飛び込み、どうしても行けなくなってしまったとか。いやはやとんでもない贈り物だ。

 僕が唯一信じている神様、そう浦和レッズのエンブレムに宿るサッカーの神様が最後の最後になって僕に向かって微笑みを投げかけてくれたのだ。
 信じて良かった。信じ続けて良かった。

 枚数は2枚。もちろん手柄を立てた浜田と行くのだ。それなのに僕とまるで違う育て方をされてきた彼女は、電話の向こうで泣き言をいう。
「杉江さん、でも会社は6時までなんです…」
 僕はとっさに吠えていた。
「浜ちゃん、走れ! 会社なんてどうでもいい!!! クビになるなら二人ともクビだ!!!」

 それから二人で駆けに駆けた。多分昨日の稲本以上に走りまくった。浜田は電車のなかで意味もなく先頭に向かって走った。僕の頭のなかの計算ではこれなら前半30分過ぎには辿り着くだろうと答えが出ていた。それでも堪えきれず、走りまくった。

 笹塚、新宿、赤羽、赤羽岩淵、浦和美園。
 埼玉スタジアムは…。
 いやワールドカップはすぐそこだ。


 そして素晴らしい興奮、絶大なる熱狂、心臓停止寸前の絶望、爆裂する歓喜に、僕たちは包み込まれた。耳鳴り、地鳴り、絶叫。すべてが僕らの目の前で起こった。浜田と二人カラカラに乾いた喉から絞り出すように「もう死んでも良いな!」と怒鳴り合い、そして叫んだ。

「ニッポン、ニッポン、ニッポン」

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 試合終了後、余韻に浸りながら、浜田と別れ、僕はひとり歩いて家に帰った。1時間なんてあっという間だった。沿道には日本代表のバスを待つ人々が溢れていた。熱狂はここにもあった。

 ベルギーと引き分け。さあ、これで我らが日本代表のいるH組は、わからなくなった。
 日曜日。いざ、横国出撃だぁ!!!