WEB本の雑誌

6月10日(月)

 日本代表がW杯で初勝利を挙げ、それから一晩が明けた。

 僕は興奮がまったく醒めず、眠れぬ一夜を過ごした。いや、少しだけウトウトしたときに、夢を見て、その夢は柳沢が僕にラストパスをくれる夢だった。稲本同様足を振り抜けばゴールが奪えるはずなのに、突然重くなってしまった足はびくともせず、ボールが目の前を通り過ぎていってしまった。そこでハッと目が覚めた。その後は何度も見たビデオをまた再生していた。

 どうしてこんな素晴らしい日にも関わらずなぜ仕事があるのだろうか? 国民の休日としても良いくらいだし、それが不可能ならせめて個人の休日にしようかと考える。しかし本日は『本の雑誌』7月号の搬入日で休むどころではないことを思い出す。人生の哀しみを感じつつ、キオスクでスポーツ新聞を購入。埼京線のなかで読み込んでいるうちに、知らず知らずに涙が流れ出してしまった。勝利の実感が胸の奥からジワジワと沸き起こる。

 昨夜、横浜国際競技場からの帰りの京浜東北線は異様な雰囲気だった。一駅一駅停まる度にどこかで集団観戦していたであろう若者達が乗り込んできて、ニッポンコールを絶叫していた。ブルーのユニフォームを着込んだ一団が、ホームに座り込んでいる駅もあったし、上野駅では逆方向の電車を待っているアイルランドサポーターがいて、日本人にハイタッチをくり返していた。

 そんな姿を見ながら僕はあることを夢見ていた。それは我が愛する浦和レッズがJリーグで優勝するシーンだった。きっとその日がやってきたら、浦和の街全体がこのような風景になり、そしてニッポンコールの変わりに、浦和レッズの様々なコールがそこかしこで叫ばれるのであろう。もちろん僕もその輪のなかに加わり、観戦仲間のKさんやOさんと肩を組み、伊勢丹の前を闊歩する。今回のような全国的な騒ぎにはならないが、浦和レッズを愛し苦労してきたサポーターにとって人生最良の一日になるのは間違いない。

 ところが、夢心地で会社に着き、ネットを繋げてビックリ。直情的に怒りが爆発してしまう。
 
 それは昨夜の日本代表戦を我が聖地・駒場スタジアムでパブリック・ビューイングしていたときに起こった出来事だ。そこに集まった人のなかにどうしようもない大バカ者が多数いたらしく、あろうことかグラウンドに飛び降りた輩がいるという。それも聖地のなかで一番神聖なる地、ピッチ内を駆け回り、花火まで持ち出したというではないか。

 その場に居合わせていなかったのでハッキリものを言えないのが悔しいが、記事や各種掲示板を読む限り、いつもレッズ戦に来ているサポーターとはまるで違う人達が大勢駒場にやって来たらしい。いやそんなことは当たり前で、サッカーを愛していれば、あの四角く白線が引かれ青々とした芝が生えそろっている場所がどれだけ大切な場所なのか誰だってわかるだろう。

 日本の勝利がうれしいから?
 いったいどれだけ「本気」でその日を待ち望んでいたの?
 

 整理券の配布では多くの怪我人が出、おまけにスタジアム周辺及びグランド内(!)にゴミが散乱しているという。今日もそのゴミを拾いに行っている真のサポーターがいるが、それはどこのマスコミも報道しない。

 信じられない。こんなことになるなんて信じられない。W杯が始まってからずっとずっとこの狂乱に違和感を感じていた。サッカー本のお薦めをこのHPで発表して欲しいと言われ、そのリストを作りながら、なぜこの企画が、レッズがJ1に昇格したときに依頼されなかったのか不満を感じていた。それでも、お祭りごとで、この機会にサッカーの楽しみを知り、Jリーグに繋がることを考え、盛り上げることだけを書き続けてきた。

 しかし、我が愛する駒場スタジアムを汚されてしまっては、もう堪えきれない。そもそもサッカーなんて日本で、そんな人気があるスポーツじゃなかったはずだ。

 ワールドカップを生で見られて、脳天気に喜んでいた自分があまりに浅はかで悲しい。
 愛する駒場スタジアムが汚されるくらいなら、ワールドカップなんて辞めてくれ!