WEB本の雑誌

6月11日(火)

 書店と一口で言っても、その立地によって苦労は相当違うようで、本日お伺いしたデパート内の書店さんもまた一種独特な苦労があるそうなのだ。

 その書店さんはある老舗デパートに入っているのだが、デパートならではの服装や言葉遣いなど接客への注意はもちろん、売場の効率化や商品構成にも口を出されることもあるとか。

 男性社員が腕まくりをしていた、Yシャツのボタンの一番上が開いていたなど、お客さんが事細かに見つけ、それを本人に指摘するのではなく、お客様相談室に持ち込まれてしまったり、また、デパート側の販売部が自分の好きな本を多面に展開してみてはと忠告をしてきたりと。思わずその話を聞きながら、自分の首元を確かめると、いつも通りボタンを外していた。とても僕には勤められない職場だと理解する。

 それ以外でも、いわゆる外商関係の超お得意様というのがいて、この方々の顔と名前をしっかり覚えておかなければならないとか、クレームでへそを曲げられ、玄関先で土下座したことがあるとか、大口の図書券購入の個別袋詰めなど、その苦労はちょっと普通の書店では考えられないもの。

 そういえば、いつだか訪問した別のデパート店でも苦労話を聞いたことがある。何だかそのデパートはポイントカードだか優待チケットがあって、僕にはまったく仕組みが理解できなかったのだが、何だか月末に図書券を購入し、ポイントをつけ、その図書券はチケットショップに売りに行くと、いくらかの利益が出るとかで、その日は延々そんなお客さんの相手をしていると嘆いていた。

 「お客様は神様」思想の最たるものがこのデパートという器なのであろうが、何だか話を聞いているだけでこちらがやりきれなくなってしまう。所詮、売り手も買い手も人であり、お互い気持ちよく一日を過ごせればいいはずなのに…。前に一度書いたことがあるかもしれないが、全国民に一日書店員(接客業)を体験する機会というのを設けてみても良いのではないか。

 僕は書店で働いていたとき、接客業のつらさを嫌というほど知った。そこはビジネス街にある書店だったのでお客さんの多くがいわゆるサラリーマンで、ストレスを溜め込んだ人が多いのか、そのはけ口として女性店員にあたる人がたくさんいた。

 僕はそんな情けない人達を見て反面教師として考えるようにし、物を買うときに「ありがとうございました」と逆に声をかけるようにしている。

 本を買ってくれて、ありがとう。本を売ってくれて、ありがとう。そんな言葉が聞かれるようになったら書店員さんの表情ももっともっと明るくなるだろう。