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7月8日(月)

 暑い。とにかく暑い。ここまで暑いと、道を歩くときなるべくお店寄りの端っこを選ぶようになる。運良く誰かがそのお店から出てきて、入り口が開いた瞬間、幸せがやってくる。冷気の間借りとでもいうのだろうか。また、駅の券売機の切符が出てくるところも、ちょっとだけ冷たい空気が流れ出ていて、束の間の幸せだ。

 その代わり、横道にそれたときが大変だ。建物の側面に取り付けられた室外機からブルブルと灼熱の風が吹き出ていて、その風に当たってしまったら、もうやる気は消滅。思わず棒でも突っ込んで、中で回っているファンを止めてやろうかと思うほどの怒りも込み上げてくる。駅のベンチもなま暖かくなっているし、自動販売機の周りなんていうのも苦しい場所だ。

 それにしても夏の営業はツライ。体力の衰えか、いわゆるヒートアイランド現象のせいなのか、年々夏の過酷さが増しているような気がする。「営業引退」の文字が現実味を帯びてくっきり浮かぶ。

 社内でクーラーに浸り、一段と引きこもり化をしている他の社員達が恨めしい。おまけに営業している新刊は、ウエちゃんの第2弾『国道の西、夜明けのミナミ』。そのウエちゃんも今頃海遊館の前で客待ちしつつ、クーラーガンガンの車内でアイスでも囓っているのかと思うと、注文を取るのもバカらしくなってしまう。ああ、やっぱりサッカーバカは労働者階級ということか…。

 神保町のS書店さんを訪問。人事異動後の初顔合わせで新文芸担当のYさんと名刺交換。フロアー長として異動してきたSさんとも名刺交換するが、実はSさん、僕が医学書版元にいた頃、担当だった方なのだ。久しぶりの対面に思わず感激。

 出版業界には、いわゆるジャンルわけの名称以外に、一般書と専門書というくくりがある。一般書とは、まあ普通のお客さんが買う文芸書や実用書あるいはビジネス書や児童書のことをさし、専門書はその道の専門家や学生が買うような本を指すのだろう。何となく一般書の担当は「誰でも出来る」といったイメージがあるのだが、本当にそうなんだろうか? これはこれで専門性が必要なのではないかと考える。

 その後、当HP「ほんや横丁」の連載でもお馴染みの東京ランダムウォークの神保町店を尋ねる。実は営業に出る前、助っ人学生のTさんに頼まれたことがあったのだ。

「杉江さん、わたし大学のゼミで、出版業界というのを勉強しているんです。そんで今回、書店の担当になってレポートを書いているんですが、現役の書店員さんにいくつか話を伺いたいんです」

 おお、そうか! そのために僕の机の上にあったイミテーション本棚から『出版大崩壊』小林一博著(イーストプレス)や『コードが変える出版流通』松平直寿著(日本エディタースクール出版部)なんて本を借りていったのか。

「それでですね、わたしスゴイ好きな本屋さんがあって、杉江さん知ってますか? 神保町のランダムウォークって本屋さん」

 思わずずっこけそうになってしまった…。

「あのさ、うちのHP見たことある? 『ほんや横丁』でそのランダムウォーク六本木店の渡辺さんが連載しているんだけど。ほら」
と見せつけると、Tさんはものすごく驚き、突然僕に対して少しだけ尊敬の眼差しを向けてきた。僕は逆に、ランダムウォークを好きになってくれたことがうれしかった。

「お願いです。ランダムウォークの方にインタビューをさせて頂けるよう連絡してもらえないでしょうか?」

 真剣な問いには真摯に答えたい。というわけで早速神保町店を訪問し、Yさんに事の経緯を伝えると快く了承してくれ、数日後そのインタビューが行われることとなった。僕自身も助っ人のTさんがどんな質問をするのか、そしてYさんがどんな風に答えるのか非常に楽しみだ。