WEB本の雑誌

9月3日(火)

 首都圏をグルグル営業していると、本の売れ方の違いというのを感じる。それはお店の個性というものではなく、もっと大きな意味での都心部と郊外の違いで。

 まず断然に違うのがスピード。新宿や池袋、あるいは渋谷といった山手線圏内では、新刊が並んで1週間くらいである程度の勝負がついてしまうことが多い。新刊を並べるとそのときから売れる本はパーッと売れていき、その後、追加を出すほど売れるのか…というとまたそれは難しい問題だけど、とにかく動くスピードが速い。

 これが郊外の書店さんに行くと1テンポ、ズレる。都心部で動き出して1週間から2週間後に同じ本が動きだす。ある沿線の書店員さんは「いやー、そういう意味でいうと楽だよね、山手線内の書店さんのベストをチェックしながら、先に追加注文ができるからね」と話していた。

 その次に違うのは、売れる本のラインナップ。

 今日訪問した都心から約1時間30分のお店では、担当者が非常に外文好きな方で、一所懸命棚作りをしているのだが、その棚から本が売れることはほとんどないと悔しがっていた。例えば、今ならアーヴィングの新刊『第4の手』(新潮社)。これは都心の書店さんではベストに挙がっていることもある売れている本なのだが、これがもう自分が買った1冊以来ピクリともしないというのだ。

 こういう話は別の書店さん(都心から1時間)でも聞いたことがあって、そのお店の担当者は、かつて都心部の本店でバリバリ売っていた方なのだが、あるとき異動の辞令が降り、郊外のお店の担当になった。しかしそのお店になって思うように数字が伸びず、今までのやり方がまったく通用しないとかなり焦った表情で話されたことがある。

「とにかくパブリシティ。テレビで紹介されたとか、新聞に載ったとかそういう本が強い。いや、そればっかりなんだ。個性のあるちょっとまだ世間に認知されていない本というのが一番売りにくい。それを売って本店では数字を稼いでいたのにね」と。

 また別の書店さんでは、郊外の同一地域でも、新興住宅地はまだ売りやすい方だと聞いたことがある。本を読む習慣のある人が、住んでいるからかなぁとクビを傾げていた。

 ちなみにここで書いている郊外とは何も住宅地にある書店さんのことではなく、その県では大きな商業地でのこと。

 たぶん、都心で本を買っている人の多くが、この郊外に住んでいるんだろうから、この傾向のあまりの違いがどこから出てくるのかよくわからない。都心で本を買う人は地元の本屋で本を買わないのだろうか?

 それにしても首都圏という括りだけでこれだけ違うのだから、全国に話を向けたらきっともっともっと違うのだろう。それを考えると、坪数などで配本部数が決まる現在のパターン配本はやはり限界があるというもの。

 最後につけ加えておくと、郊外のそんな書店員さん達は、売りたい本がなかなか売れない状況で、ある朝出社し、売上スリップ整理をしていて、前日の売上にそんな本たちを発見すると、飛び上がるほど嬉しいらしい。誰が買ってくれたの? なんて思わず考え込みながら、その日は一日中ハッピーな気分で仕事が出来るそうだ。

◆今日売れていた本=『水彩画プロの裏技』奥津国道著(講談社)
小田急線沿線某書店「担当者お休みのためコメントなし」