9月12日(木)
大型書店さんの新刊平台は、昨日で一気に様変わり。
期待の新刊『海辺のカフカ』村上春樹著(新潮社)が搬入されたため、これでもかと言わんばかりの大展開。売場にそびえ立つカフカ塔やカフカ壁、あるいはカフカ島を眺めなつつ、ライバルにもなれない地味な版元営業は、自社の商品がその影で返品されていないか思わずチェックしてしまう。かなしい…。
まあ、そうはいっても足を引っ張るどころか、全体的に本が売れることを願わずにはいられないほどの出版不況なので、カフカの出足を確認すると、ニンマリ「いいっすよ~」の返事を頂く。こんなに幸せそうな顔の書店員さんを見るのは久しぶりのこと。ただ、その笑顔の後、多くの書店員さんが「この後が難しいんですよねぇ」と思案顔になっていくのが気にかかる。
「今回は新潮社さんの発売前のあおり方がうまかったんで、春樹ファンが飛びつくように買っているんだと思うんです。それだと数がだいたい読めるんですけど、それじゃ困るんですよね。この後どこまで一般の人を巻き込めるか、そこが勝負。でも追加注文の数が難しくて…」と売れれば売れたで難しい問題を抱えているようだ。
しかし裏を返せば、もっと難しいのは出版社の方で、新潮社の営業部もきっと初回分の売れ行きを確認しながら頭を抱えているのではないか。この売れ方がどこまで続くのか、あるいは広告の効果やこれから出るであろう評判の勢いで、どこまで伸びるのか。僕が新潮社の営業だったらきっと「ドラえも~ん」と叫んでいるだろう。
出版営業は、他の業種の営業に比べ楽だと言われることが多いけれど、常に返品を頭に入れつつ、モノ(本)を作るをは非常に難しい。売れ行き良好から一転して、増刷分がすべて在庫になってしまった…なんて恐ろしい話は山のように転がっているのだ。
そうは言っても、のんびり売れ行きを見ているわけにはいかず、初回搬入と同時に納品の少なかった書店さんからは即注文の嵐になっているであろうし、大量納品した書店さんだって、この売れ方なら追加の注文をドーンと出してくるだろう。そうなると、いつまでもデータを覗いているわけにはいかず、なるべく早い段階で決断を下さない限り、一番最悪な「売り逃し」の可能性も出てきてしまう。
書店さんが一番恐れるのは自店での「売り切れ」で、出版社が一番恐れるのは「売れ残り」。返品可能である限り、このズレは一生変わらないと思う。
まあ、こんなことをチビ出版社の営業が考えても仕方ないんだけど、せめてこれくらいしっかりした小説は消費物にならず、末永く売れて欲しいと願わずにはいられない。
◆今日売れていた本 もちろん!『海辺のカフカ(上)(下)』 村上春樹著(新潮社)
「久しぶりの長篇で、それも人気のある『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』と似た雰囲気であれば、ファンは飛びつきますよ」